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太宰府天満宮×フィンランドテキスタイルアート
太宰府天満宮で繰り広げられたフィンランドテキスタイルによるインスタレーション
2013/05/22
レポーター:浜野百合子
福岡・太宰府天満宮宝物殿で2012年12月1日から2013年3月10日まで開催された展覧会『フィンランドテキスタイルアート 季節が織りなす光と影』。期間中は太宰府天満宮境内の様々な場所でフィンランドテキスタイルによるインスタレーションが行われた。
日本建築とマリメッコのテキスタイル
御祭神・菅原道真公が「学問の神様」「文芸・芸能・芸術の神様」として崇められ、古来よりアートと深い関係にある福岡・太宰府天満宮。その宝物殿でフィンランド・テキスタイルアートの展覧会が開催されるというので、東京よりはるばる福岡を訪れた。
太宰府の駅をでて、太宰府までの参道を歩くと、フィンランドを代表するテキスタイルブランド・マリメッコを象徴するモチーフ「Unikko(ウニッコ)」のバナーがはためいて来訪者を誘導していた。
フィンランドデザインアートの中でも自然との関わり色濃く感じることができるテキスタイルを中心に展示される今回の展覧会。日本の伝統的な神社という空間で、フィンランドデザインがどのような調和を見せてくれるのかどうしても見てみたかった。
お目当ては、2月9日から24日までの期間限定で公開された太宰府天満宮文書館での展示。菅原道真公の「御神忌千年大祭」の記念事業の一環として1901年に建てられた木造建築で、普段は入ることのできない貴重な建築物だ。
床の間には、Maija & Kristina Isora(マイヤ&クリスティーナ・イソラ)デザインによるマリメッコのテキスタイル「Joonas(ヨーナス)」「Lokki(カモメ)」が飾られ、文書館の裏庭には石本藤雄氏の「Selanne(地平線)」を見ることができる。
畳やふすま、障子、床の間など日本建築ならではの空間におさめられたフィンランドのテキスタイルデザインは不思議と調和していて、フィンランドと日本、自然とデザインの密接な関係を感じることができた。しばしこの貴重なコラボレーション空間で畳に座り込み、ぼーっと過ごす贅沢を味わってきた。
Unikko柄をまとった麒麟像
もうひとつ見たかったのが、浮殿におさめられたマリメッコ柄のテキスタイルをまとった麒麟像だ。太宰府天満宮の境内には一体の麒麟像が現存しているが、実はかつては二体あり、太平洋戦争の折、金属として供出させられ一体のみが残ったというエピソードがある。
今回境内でのインスタレーションを担当したインテリアデザイナーima(小林恭と小林マナ)は、この麒麟像を復活させることで、太宰府の歴史に触れる体験をと考え、「Unikko(ウニッコ)」柄の布で覆った麒麟像を完成させた。ウニッコで覆うというアイデアは、資料の中に残されていた麒麟像の写真の胴体に、花のような模様が描かれているのを発見したことに由来する。こうして、歴史とテキスタイルを融合させたインスタレーションが実現した。
秋の大祭でお神輿が休む場所である浮殿は、普段は閉じられているため、木の格子越しに覗くように見なければならないが、想像上の聖獣である麒麟だけに非日常感が増し、なかなか良い雰囲気の展示だった。
Dora Jung(ドラ・ユング)、Maija Isora(マイヤ・イソラ)、石本藤雄らフィンランドテキスタイルの巨匠による作品を紹介した宝物殿では、寒いフィンランドの冬をイメージした暗く重いトーンの作品を中心に展示。境内ではポップで明るいイメージの作品を紹介し、光の屋外と影の屋内という対比から、フィンランドデザインがもつ二面性や季節が織りなす豊かな世界観を表現した今回の展覧会。日本人がもつ自然観とも共通する自然と調和した暮らし方を、テキスタイルを通して感じることができた。
取材協力:太宰府天満宮
フィンランドテキスタイルアート 季節が織りなす光と影
http://www.dazaifutenmangu.or.jp/finlandtextileart/