第58回阿部雅世(工業デザイナー)
[桐山登士樹の推薦文]
96年7月、OZONEで開催した「ニューヨーク近代美術館巡回展ミュータントマテリアルズinコンテンポラリーデザイン」は、初めてマテリアルに焦点を当てた展覧会であった。この展覧会準備のため、何度となくNYへ足を運んだが、この展示物の中に何人かの日本人デザイナーの作品が含まれていた。その一人が今回紹介する阿部雅世さんである。ミラノに通う機会の多い筆者だが、一度もお会いすることなく時は流れた。10月初旬ミラノの滞在ホテルに現れた阿部さんは、生き生きしていた。先週ローマでワークショップを開催し、これからパリに向かい一泊し、そしてマルセイユで行われるワークショップへ出かけると話してくれた。すでに参加デザイナーではなく、教える立場にいる阿部さんはプロフィールからもお分かりのように公的立場にもある。短い時間であったがデザインの可能性をピュアに話す姿勢には、すがすがしい思いがした。今回紹介するデザインに共通するのは、さわやかさである。存在感を確実に高めつつある阿部さんには、是非とも日本でのワークショップの機会を作りたいと思っている。そして、もっとゆっくり話してみたい。

阿部雅世 / Masayo Ave
[略歴]
1962 | 東京生まれ |
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1986 | 法政大学工学部建築学科卒 |
1986-89 | 海老原一郎建築設計事務所勤務 |
1990 | イタリア・ドムスアカデミー工業デザイン科マスター修了 |
1992 | デザイン事務所Ave design corporationを設立 |
1996-97 | ドイツ・アカデミーシュロスソリテュード芸術院招聘 |
2000 | デザインブランド MasayoAve creationを設立 |
2003 | ADIデザイン協会国際部のコミッショナーに就任 |
建築、テキスタイル、デザインなど広い分野で、国際デザイン賞受賞多数。2000年に、モデュラーソファーBLOCKとクッションCOOLで、ICFF2000エディターズアワードを受賞。
ミラノを拠点に、工業デザイナーとして、インダストエッレ社、デュポン社、など企業のメインデザイナーを務める傍ら、個人ブランドMasayoAve creationで、独自の実験的なデザインのコレクションをプロデュースしている。
近年は、フランス・シャモン国際現代庭園、オランダ工業地区景観改善プロジェクトなどのランドスケープデザインコンペティションに入賞。現代工芸のためのデザインの開発と制作にも、力を入れている。
また、2001年にフランスのサンテティエンヌ市立美術学校へ、2003年にはローマ・サピエンツア国立大学へ、客員教授として招聘され、「サウンド・オブ・マテリアル」というタイトルの感性と技術を融合するデザインワークショップを開催。実験的なデザイン体験を若い世代と分かち合う独自のワークショップを通して、デザイン教育活動にも力を入れている。2004-05には、フランス・ヴァラウリス陶芸美術館、ドイツ・カールスルーヘ芸術学校、カナダ・モントリオール大学、などからワークショップの開催を要請されており、今後20年の計で世界の各地でワークショップを開いてゆく予定である。
[連絡先]
MasayoAve creation | Ave design corporation
e-mail : info@macreation.org
URL : http://www.macreation.org