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桐山登士樹が選ぶ 注目のデザイナー

第150回永山祐子（建築家）

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  • 丘のある家
  • URBANPREM南青山
  • アンテプリマ六本木店
  • カヤバ珈琲
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［桐山登士樹の推薦文］

子供の頃、生物に興味を持っていたという永山祐子さん、当時の想いはミクロな世界の遊泳であった。突然進路を変更して対極的なスケールである建築家を志した。改めて、永山建築を見てみると空間に漂う上質な空気感が、人間の身体系にフィットしている。精神的に開放された居心地の良さを感じる。これまでの四角四面の箱ではない、かといって成り立たない空間ではない、ほど好いバランス感覚。建築を人間との対話の対象としてトライアルしているようだ。故にここからいろいろな物語が始まる。経年優化というキーワードが相応しい。人間は生活の中で発見し、思考し、実行して行く。そんな物語の機会を建築という手法で創出している人だと思った。来春には新たな創出があるらしい

WORKS & PROFILE 作品一覧 ※画像をクリック～詳細をご覧いただけます

Afloat-f

Afloat-f

2002
CAST

CAST

2003
Louis Vuitton

Louis Vuitton

2004
丘のある家

丘のある家

2006
URBANPREM南青山

URBANPREM南青山

2008
アンテプリマ六本木店

アンテプリマ六本木店

2008
カヤバ珈琲

カヤバ珈琲

2009
Sisiiショールームオフィス

Sisiiショールームオフィス

2010
永山祐子

永山祐子 / Yuko Nagayama

経歴

1975年 東京生まれ
1998年 昭和女子大学　生活美学科　卒業
1998-2002年 青木淳建築計画事務所　勤務
2002年 永山祐子建築設計　設立

代表作品

2002年美容室「afloat-f」内装
2003年タレントスクール「原宿CAST」内装
2004年「ルイ・ヴィトン京都大丸店」外装
2006年「丘のある家」住宅
2008年「ANTEPRIMA WIREBAG六本木ヒルズ店」内装
2008年「URBAN PREM MINAMI AOYAMA」商業ビル
2009年「ANTEPRIMA　シンガポール店」内装
2009年「Ylang Ylang丸の内店」内装
2009年「カヤバ珈琲」内装
2010年「ANTEPRIMA　北京店」内装
2010年「SISII」内装
2010年「ANTEPRIMA　ローマ店」内装

展覧会

2005年「永山祐子展」個展,プリズミックギャラリー,東京
2005年「DIC COLOR OF 10」展覧会, DIC COLOR SQUARE, 東京
2006年「光と影」個展, SferaExhibition, 京都
2006年「Archilab 2006 Japon」 展覧会, オルレアン, フランス
2007年「DEROLL Commissions Series 1: box」展覧会, 東京
2007年「PROTOTYPE」 展覧会, 東京
2008年「届かない場所」個展, 東京
2009年「A House is not A Home展覧会, SCAI THE BATH HOUSE 東京
2010年「建築家の色と形展」展覧会 , TURNER GALLERY,東京
2011年「堂島リバービエンナーレ2011」展覧会
杉本博司氏との共作「NO LINE ON THE HORIZON」

賞歴

2004年中之島新線駅企画デザインコンペ優秀賞
2005年ロレアル賞「色の科学と芸術賞」奨励賞
2005年つくば田園都市コンセプト住宅実施設計競技ニ等
2005年JCD Design Award「ルイ・ヴィトン京都大丸店」奨励賞
2006年「a hill on a house / 丘のある家」AR Awards　優秀賞
（The Architectural Review主催 イギリス）
2010年田屋リニューアル2010 実施設計コンペ　佳作
2010年共愛学園前橋国際大学４号館設計プロポーザル　佳作

職歴

2005年東京理科大学非常勤講師
2008年京都精華大学非常勤講師
2009年昭和女子大学非常勤講師
2010年お茶の水女子大非常勤講師
2010年現在は、お茶の水女子大非常勤講師、お茶の水女子大、名古屋工業大学、非常勤講師

連絡先

有限会社　永山祐子建築設計
〒167-0043　東京都杉並区上荻2-19-18-5F
Tel : 03-3392-5428 / Fax : 03-3392-5429
http://www.yukonagayama.co.jp/

ABOUT 注目のデザイナーについて

デザインディレクター桐山登士樹が、旬のデザイナーをセレクトする「桐山登士樹が選ぶ 注目のデザイナー」。近年の作品や代表作品などをご紹介。

桐山登士樹

桐山登士樹

株式会社TRUNK代表
デザインディレクター

デザインプロデュース会社・株式会社TRUNK代表取締役、富山県総合デザインセンターデザインディレクター、富山県近代美術館副館長

これまでに紹介した注目のデザイナー
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JDN
Afloat-f 1
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Afloat-f　2002

表参道裏手にある美容室。所々吹き抜けのある1～2層の高さを持つ空間に直径2.4メートル、22個のパラボラアンテナが、天井の高さにかかわらず、床から一定の高さに吊るされている。このパラボラアンテナは電波の受信位置に置かれた点光源からの光を受け、床にムラのない平行光を落とす。つまり、直径2.4メートルの光の円が床に描かれる。セット用の大きな鏡、2層分の高さを持つ巨大な鏡、ハーフミラー等によってこの空間は増幅される。制限のある空間は光や鏡像によって歪められ、新しいスケールと質がうまれている。

  • Photo by Daici Ano
CAST 1
CAST 2
CAST 3
  • CAST 1
  • CAST 2
  • CAST 3

CAST　2003

竹下通りにあるコンビニエンスストアだった店舗の内外装を変え、タレントスクールにつくりなおした。竹下通り沿いの店舗は大抵店先に大量の商品が置かれ、お店の奥に意識の向かない店が多い。ここでは奥に意識を向けるため、奥を明るく奥行きの分からない白い霧モヤのような空間とした。手前には異常に拡大された模様の壁紙に被われたパースの効いたトンネル状のイベントスペース、その奥にニュートラルな霧モヤ空間が並ぶ。このまったく異質な2つの空間の間で、一方の空間からもう片方の空間を眺める、という変化ある2つの視点がうまれる。そうすることで空間の物理的な奥行きとは違う、意識の中に新しい奥行き感がうまれる。

  • Photo by Daici Ano
Louis Vuitton 1
Louis Vuitton 2
  • Louis Vuitton 1
  • Louis Vuitton 2

Louis Vuitton　2004

京都の代表的な情景である“縦格子”を、京都四条通りの新しくオープンしたルイ・ヴィトンのファサードに再構築した。ストライプはルイ・ヴィトンが昔トランクに使用していた“トワイエ・レイエ”というモチーフでもある。ここに現れている黒い縦格子は実際には存在しない、光学フィルムである偏光板によって造り出された幻影だ。現前しているこの格子には厚さも、質感もない。それらは“在る”わけではなく、“見えている”。通りを行き交う人の動きに合わせ、格子は回転したり、消えたり、軽やかに表情を変え、京都の町並みの中に新しい情景をつくる。“物質”としてではなく、人とのインタラクティブな関係をうみ出す“事”としてのファサードとなっている。

  • Photo by Daici Ano
丘のある家 1
丘のある家 2
丘のある家 3
  • 丘のある家 1
  • 丘のある家 2
  • 丘のある家 3

丘のある家　2006

渋谷に建つ東側の狭い接道面以外の3面を高い建物に囲まれた都市型住宅だ。周りからの視線を遮りつつ住宅内部にどう光を入れるか、この閉ざされた世界をどう外部に開き、どんな情景を造るかを考えた。この家には中庭に面して白く光る“丘”がある。南側に傾斜した“丘”で光を受け、内部に光を誘い込む。どの部屋からも感じるが、誰の手にも届かないその“丘”は、意識の中で共有されるが、誰のものでもない場所である。物理的に制限され、触れる事のできないその場所に人は思いを馳せる。その時、精神は自由に空間を行き来することができる。

  • Photo by Daici Ano
URBANPREM南青山 1
URBANPREM南青山 2
  • URBANPREM南青山 1
  • URBANPREM南青山 2

URBANPREM南青山　2008

青山通りには高いビルが立ち並ぶが一本裏手に入ると、そこは住宅スケールの町並みが広がる。そんな裏手通りに位置するテナントビルである。都市の中にたまにうまれるスケールのギャップのある敷地であった。そこで、どちらのスケールにも属さない、スケールが一瞬では計り得ない佇まいのビルにしようと考えた。全面道路は道路拡張され4mとなる。その道の端から見上げてもビルの稜線が見えないよう、建物前面を湾曲させた。そうする事で道路斜線もクリアできる。また窓のパターンはスケールを表現しないようなパターンとした。とても東京らしい都市のギャップの中に、このビルはどのスケールにも属さずに建っている。

  • Photo by Daici Ano
アンテプリマ六本木店 1
アンテプリマ六本木店 2
  • アンテプリマ六本木店 1
  • アンテプリマ六本木店 2

アンテプリマ六本木店　2008

アンテプリマのワイヤーバッグの為のお店。100色以上の豊富なカラーバリエーションがあり、光を受けてキラキラと輝く特徴的なバッグだ。商品の並べ方の疎密をコントロールする事で空間をつくりたいと考えた。そこで壁面には密にバッグを並べ、並んだ姿総体が印象的なカラーバーに見えるようにし、中央は上部が鏡となった什器の上にバッグを吊り、360度周りからみえるステージのような空間とした。壁面、天井を黒から奥にむかって白くグラデーション塗装とする事で、お店に入った瞬間から奥に進むにつれてだんだんと明度が変化し、周りが明るくなっていくように感じる。それはお店に入った時の高揚感とも重なる。天井にはステンレスメッシュを吊るし、空間全体がまるでワイヤーバッグに入っているような印象の空間となっている。

  • Photo by Daici Ano
カヤバ珈琲 1
カヤバ珈琲 2
  • カヤバ珈琲 1
  • カヤバ珈琲 2

カヤバ珈琲　2009

大正5年築の木造建築であり、昭和13年の創業の「カヤバ珈琲」のリノベーション。すでに長年熟成された空間を現代的な目線から見直す新しい“視点”の設計ができないかと考えた。この空間で一番印象に残ったのは室内と窓の明暗のコントラストであった。この空間の光のイメージを増幅させていった。一旦古い天井を落とし、そこに黒いスモークガラスを全面に張った。水面のように頭上を覆う黒いガラスに、日中はコントラストの強い店内空間、窓外の風景が晴れた日にはカラフルに、曇りの日はモノクロに映り込む。夜になると天井裏の照明により、大正時代の面影を残す天井裏のスペースがガラス越に透けて見える。既にそこにあった空間イメージと、新しく息づく現代の風景が重なる。

  • Photo by Nacasa&Partners Inc.
Sisiiショールームオフィス 1
Sisiiショールームオフィス 2
  • Sisiiショールームオフィス 1
  • Sisiiショールームオフィス 2

Sisiiショールームオフィス　2010

神戸元町の地元発祥ブランドのショールーム兼オフィス。服を見に来る人、ミーティングをする人、働く人、という大きく3つの行動が入り交じる場所となる。その場を、分け隔てるのではなく高さの差などでゆるやかに領域をつくりたいと考えた。床からデスクの高さまで浮かした鉄板には穴があけられ、ショールーム、オフィスをつなぐ場となって広がる。この鉄板の下には六甲の自然が広がる。所々あいた穴からは樹木がはえ、自然が顔を出す。剥がされた鉄板は一部が立ち上がり、ミーティングスペースに、オフィスでは大きなデスクとなる。場所によって様々に役割を変えながら広がる1枚の板は、そのままニュートラルなプラットフォームとなり、共生している樹木の生命力に支えられた活き活きとした情報交換の場となっている。

  • Photo by Daici Ano