W-window House

うなぎの寝床状の敷地いっぱいに建つ小さな住宅。細長い平面の点対象となる2ヶ所にくさび型の空地をもうけ、縦一列に並べた窓から光と風を集中的に取り込む。道路側が2層、奥側が3層のスキップフロアとし、ひとつの窓に照らされた部屋と、もうひとつの窓に照らされた奥の部屋が、くさび形にくいこむ壁によって、見え隠れしながらつながることで建坪9坪とは思えない広がりが感じられる。また高低差7mの窓が煙突効果による空気の循環をうながし、夏は熱を排気し、冬には壁体内のシャフトを利用した熱循環が行われている。
立体的な窓であり、階段室であり、そして換気装置でもある、シンプルな操作でさまざまなアクティビティーを受け入れる性能の良いシェルターを考えた。

• Photo by Kei Sugino

Hall House 1

ビリヤードとホームシアターのためのホールのある住宅。変形かつ高低差のある敷地にあわせて平面・断面ともに不定形な多角形、同時に6メートルスパンの無柱空間を実現するためモノコックなRC壁構造を採用した。強度を確保し、天井高さを調整するため屋根を折り曲げたが、これは雨水を流すのにも適した形となり、外部は浸透性の防水材を塗布してパラペットや樋・水切りなしで水を地面まで届けている。
コンテクスト、プログラムの効率的なレイアウト、無駄のない構造、工法といったものを同列において方程式を解き、シンプルでありながら多様なシーンの得られる内部空間について考えた。

• Photo by Kei Sugino

House Twisted

木造家屋が密集する古くからの商業地域に建つ住宅。細長いヴォリュームを敷地にそって2箇所おりまげ、前庭と中庭を形づくると同時に、おりまげた部分の屋根の段差を利用してハイサイドライトをもうけた。少ない面積で効率的な採光ができる高所の窓に、通風用の窓を組み合わせて、自然光がたっぷり入りながら、温度変化の少ない、快適な室内空間を実現している。光と風の大きなヴォリュームの中に、高さ2mの3ヶ所の出入口と造りつけ家具・ブースが点在し、人の動きに応じて光や風にゆらぎがおこる。ハイサイドライトの下にある2箇所の土間も外部空間の開放感を内部空間に持ち込むのに一役かっている。

• Photo by Kei Sugino

New Kyoto Town House

二条城に近い京都の中心市街地。周辺の町屋の外観を模すだけでなく、街路に囲まれた一区画が集団となって形づくる中央の空地の継承が大事だと考え、駐車場を建物内に入れ、街路側に建物をよせる配置を採用した。内部では3フロアにわたる諸室をずらしながら積み重ね、通常は水平垂直方向のみに広がる間仕切壁に、3次元方向の自由度を与えることで、抑揚をもって分節されていながら連続する、高密度でありながら広がりのある空間を目指した。多面体の間仕切壁はシナベニアで仕上られ、南北から入る自然光を多様な角度でやわらかく反射して建物中心部まで届ける。天井や床ととけあい、遊具のように、くぐったり触れたりする楽しみをうみだしている。

• Photo by Kei Sugino, K Takeguchi

Roof on the Hill

大阪市街をはるかにのぞむ、斜面に建つ住宅。強固な地盤に大きな造成工事をほどこさず、地形に沿った段状の床に3mx3mの小さなグリッドで軽快な鉄骨の骨組をのせた。山並みのようにうねる屋根は南を向く45度の軸線をもち、水はけとハイサイドライトと適度な天井高さを室内に与える。地形に沿って異なる床高さ、直交方向に繋がる諸室、斜めに走る天井と、それぞれに合理的なルールを重ねあわせ、その結果としてこの場所にふさわしい変化に富んだ空間が生まれた。

• Photo by Kai Nakamura

House Folded

大阪の郊外住宅地に建つ。敷地の東西に庭を設け、庭に開くよう中央の壁で住宅全体をふたつに分割したが、1階では駐車のため対角線状に、3階では水まわり・寝室を機能的に納めるために平行に平面を割っている。この1階と3階で角度の異なる分割線を成立させるため、分割壁全体を3次元上の対角線でおりまげたことで、1階から3階へ平面的かつ断面的に連続して変化する空間がうまれた。2ヶ所の庭に面したスリット状の開口は室内に直接光をもたらし、folded wallを介したその隣室には間接光をもたらす。多彩な光のグラデーションが、室内にとどまるとき、壁を通って移動するときにさまざまな空間的距離感をもたらす。いくつもの建物が外部を介してつながりあう、人間－建物－自然がゆるやかな関係をもったイタリアの山岳都市のような。

• Photo by Kai Nakamura

Dig in the Sky

大阪都心の住宅。ふたつの中庭をもつ3つの棟からなり、各棟ともワンフロアにひとつの部屋があり、2つあるいは3つのフロアからなっている。部屋と部屋はそれぞれ中庭を横断するチューブ状の廊下あるいは階段室でつながる。通過頻度の高い部屋にはたくさんのチューブがつながり、住宅内には幾重にもループを描く動線が実現する。部屋と部屋の関係は一義的には決まらず、動き方によって、関係も空間の様相も変化する。また空に穴をうがつチューブは、内部空間同士をわけながらつなぐだけでなく、建てこんだ周辺の環境をさえぎりながら、かいまみせる。

立体的な公園の試案

都市は近年ますます乾いた暑い二酸化炭素の多い場所となり、これを緩和するために屋上や壁面の緑化がすすめられるが、表層への取り組みにとどまっている。そこで、緑をより建物に編みこむような取り入れ方について考えた。ここにあげたのは立体化された公園の試案であり、緑化されたスロープと階段とが2重螺旋状に相互に支えあっている。緑化スロープが庭であり、階段が人間が休息したりご飯を食べたりする機能部分であると考えると、このモデルはさまざまなプログラムに適応することができる。公園のある公共施設、庭のある美術館、戸外のランチスペースをもつレストランなどなど。日本の都市で、人間と建物と自然の関係を豊かに変化させる可能性について考えたいと思っている。