第140回間宮吉彦(空間デザイナー)
[桐山登士樹の推薦文]
数社の大手企業のデザイン教育プログラムを請け負っているが、12月にお越しいただいたのは以前からお会いしたかった間宮吉彦さんである。間宮氏の秘書を以前から良く知っていたので直ぐに調整していただいた。
ご紹介いただいた作品の中でも最も興味を引いたのは、上海万博日本産業館料亭「紫」である。文中にも記されているが『侘び寂び、儚さ、未完の美学、といった日本文化の精神が表現された「庭」をつくりたい』、『「形のない庭」と「モノ性」という相矛盾する要件を、どう満たすか』など、意識しなくてはならないキーワードが次々と語られる。
インテリアデザインの魅力は、建築でもなく、プロダクトでもない曖昧な領域をデザインしている点である。常に身を置く空間は身近な日常であり、選択によって非日常に移動する。こうした人間の行動と心理に身近に接するインテリアは実に深い領域である。茶室であろうと大空間であろうと、その密度を掘り下げる間宮氏の意欲的な取り組みと美意識に触れた楽しい機会であった。次はご一緒できるプロジェクトを模索したい。

間宮吉彦 / Yoshihiko Mamiya
1958年 大阪生まれ。1989年(株)インフィクス設立。
全国で飲食、物販などの商業施設の空間デザインをはじめ、あらゆるジャンルのインテリアから建築まで空間をトータルに手がける。特定の様式や主義にとらわれることなく、時代の欲するムードを表現し、その中に潜む普遍性を追求する。2003年上海事務所を設立、ワールドワイドに活躍を広げている。
- 大阪芸術大学デザイン学科教授
- 九州大学芸術工学部講師
- JCD正会員「おおさか優良緑化賞」選考委員
主な著書
- 「STYLE INFIX」(商店建築社:2003)
- 「SPACES & PROJECTS X 100」(文藝春秋社:2004)