XXXX house

トヨタカローラ一台分の価格で建てられた陶芸家のアトリエ。低予算を前提として、セルフビルド（自力建設）で組み立てられるよう、構法まで含めてデザインされた。構造的に合理的な形態を追求する事で素材量を最小化し、軽量化、低コスト化に成功している。構造・構法・デザインが同時に解決された木質系モノコック建築。SD review鹿島賞（グランプリ）、American Wood Design Award 2004（アメリカ）Honor Award受賞作品。

M3 / Kg

都内の映画プロデューサー夫妻の為の住宅兼スタジオ。
L字型のコンクリートのパートとロの字型のエンジニアウッドのパートの組み合わせで構成された建築。コンクリート部分にはプライバシーや安全性の要求される寝室やフィルム保管庫を、エンジニアウッドの部分には開放感が重要な大きなリビングとスタジオを配置している。

建築の「大きさ」には、自由さや機能性に関わる「空間の大きさ：M3」と、安心感や親密さの感覚に関わる「質量の大きさ：Kg」の2種類があり、本来はそれぞれに重要である。その両方の「大きさの質」が同時に獲得された住宅である。2008年、日本建築学会デザイン発表会「デザインにおける構造の論理性と感性」テーマ部門賞受賞作品。

SAKURA

都心部に建築された住居兼オフィス。
伝統的な江戸小紋の“桜”文様でパンチングされた半透明のステンレス製の帯を用意し、これで敷地全体を緩く囲い込む事で、都心部にも関わらず、静かで落ち着いた住環境を生み出す事に成功している。この柔らな帯の効果によって、プライバシーが確保されるので、内部の生活環境は極めて開放的な空間として実現された。森の中の「野点」のような建築。2007年The Barbara Cappochin Prize for Architecture（イタリア）にて Best international worksを受賞。

Rainy / Sunny

東京都内の小説家夫妻の執筆および居住の為の建築。コンクリートの量塊である建築を敷地に対して斜めに配置する事で、公的なエリアと私的なエリアへと外部環境を明瞭に分割している。こうする事で、通過交通が多く住宅の密集する地域であるにも関わらず静かで明るい外部環境が生み出され、おおらかで開放的な暮らしの質が獲得された。

建築外壁面にはコンクリート型枠を工夫する事でギザギザの水切りを設け、雨水をコンクリート表面からすばやく離す事で、内部への含侵を防ぎ、建築の長寿命化を図った。晴天時には光線の方向によって変化のある陰影が生まれ、雨天時には水切りによって水滴のレースをまとう建築。現代建築では無視されてきた天候の恵みを積極的に享受する建築である。2008年、Architectural Review Awards for Emerging Architecture（イギリス）Honourable Mentions。

PLUS

熱海伊豆山の中腹に計画された別荘、あるいはプチ・ホテル。
敷地は、南方に太平洋が見下ろせる景観の良い斜面地であり、それ以外の方位も森林公園に囲まれていて、自然環境には大変恵まれていた。しかし、敷地南北を尾根筋が縦断する自然地形で、建設に適した平地は殆ど見当たらず、建築の敷地としては不適格とも言える状況にあった。通常であれば造成し、大きな平場を作るのであるが、それでは豊かな自然環境を失う事になる。逆に、自然地形に合わせて建築を歪めてしまっては元も子もない。

自然を痛めずに、なおかつ建築としても純粋に自律したあり方を求めて、このPLUSの形式を採用した。下の立方体は斜面の比較的緩やかな位置にそっと置かれ、その上と既存の尾根上に、下の立方体を固定するようにもう一つの立方体を載せ、構造的に安定させている。自然の状況を深く観察することで見いだされた抽象形式は、「抽象」ではあっても自然と対立せず、むしろその存在を高めてくれる事になった。2010年LEAF AWARDS（イギリス）個人住宅部門最優秀賞受賞。

Tree house

東京北部郊外の編集者夫妻のための住居。通常、建築で用いられる直交座標系の幾何学に代えて、極座標系の幾何学を建築の基準線として採用している。それは、周囲を隣家に囲まれている旗竿型の敷地特性に対応するために、周辺とのデリケートな間合いの制御が可能な事から決定されたが、同時に空間の中心に大きな大黒柱を生み出すことにもなった。日本の伝統的な民家のように、存在感のある象徴的な大黒柱が、頼りがいのある生活の「場」を生み出しながら、機能的にも空間を分節している。伝統的な空間構成と現代の素材や構法が融和した、懐かしくも新しい住宅が実現した。また、螺旋形状の屋根面は丘のような屋上庭園として、生活に高さ方向への広がりを与えている。RECORD HOUSES 2010（アメリカ）世界の住宅7選、受賞作品。

ART SITE

メキシコシティーを敷地に催されたコンテンポラリー・ミュージアムの招待設計競技案。地盤面を掘削し、そこにコンクリートを流し込み硬化した後にクレーン アップして建築の構造体とする。残された穴は半独立の展示室として機能する。コンクリート型枠を必要としないグリーンな構法によるエコロジカルな建築であり、現地の土の付着した構造体はメキシコならではのサイトスペシフィックな空間性を美術館に付与する事になる。構造体とその抜き型である空間は完全に形態が一致する事になり、それまでは建築の歴史の中で対立的に語られてきた「空間 / 構造」が、新しく親密な関係として捉え直される事になるだろう。

YOTSUBAKO

横浜の郊外に建設中の地上8階地下1階の商業建築。
それぞれ2フロアを内包する4つのハコを、90度ずつズラしながら積み重ね、透明なガラススキンでラッピングした構成。通常のビル建築では内部と外部の関係は、「内 / 外」だけに単純化されてしまうが、構成上の工夫によって建築と外部の関係を「内部 / ハコ内」「内部 / ハコ外」「外部 / ハコ内」「外部 / ハコ外」へと多様化した。こうする事で、通常のビル建築特有の内部空間の閉塞性や単調な外観の問題を解決するだけでなく、周辺外部環境の取り込みや、上下階での空間の連続性や天井高の変化によって様々な場所のキャラクターを発生させ、来館者による主体的な空間経験を可能にしている。延べ床面積は約7500平方メートル。