Sequence Design
首都高シークエンスデザイン　2006-08 / 首都高速道路株式会社

首都高シークエンスデザイン
現状の首都高速道路においては、都市内交通の高いニーズを担うが故に、きびしい走行空間（急カーブ・急勾配・狭い道路幅員・分岐合流の複雑さ）の大幅な改修が物理的に不可能な状況下にある。その与条件の中で、利用者の視点に立った快適性・安全性の向上を図り、誰もが安心して走行できる高速道路空間のリ・モデル（新価値創造）の提示を目指すプロジェクトが「首都高シークエンスデザイン」である。シークエンス［sequence］：継時的連続。 ここでのシークエンスとは、走行にともなって連続的に展開する道路の視環境を指す。 走行中の道路環境と、ドライバーの知覚・心理との関係に着目して時間軸のシークエンスをデザインすることで、記号言語以外の視覚情報による走行支援を実現する。交通上の難所を軽減して走りやすくし、高速道路全体の質的向上を目指す。

オプティカル ドット
スムースな走行を妨げることなく、自然にドライバーに走行上注意すべき区間を感じさせる路面のグラフィックデザイン。道路線形（上り坂・下り坂やサグ、カーブ）の変化を道路に仮想の面的グリッド上の交点：ドットで明示することで可視化し、いち早く視覚的に変化の度合いを感知させ、ドライバーに適切な行動を促す。
大幅な速度超過傾向のあった埼玉大宮線の現場では、オプティカル ドット実施後、持続的に速度抑制効果が上がっている。この実績から今後も首都高内の課題のある区間について展開が検討されている。

• location：埼玉県さいたま市
• site：首都高速道路 埼玉大宮線（下り）美女木ジャンクション付近
• subject：高速道路の走行空間シークエンスデザイン
• length：延べ900m
• client：首都高速道路株式会社
• year：2006～08年

Sequence Design
小鳥トンネル　2002-04 / 国土交通省 高山国道事務所

グッドデザイン賞 特別賞（インタラクションデザイン賞）

シークエンスデザインとは
トンネル走行時特有の心理的ネガティブ要素（知覚機能の低下、狭窄感、眠気…）に対して、走行空間を時間軸で展開する一続きの空間と捉え、ドライバー自身が主役として享受できるよう、流れゆく視環境をデザインする。

道路の中でもトンネルはその閉塞感や均質さから特異な空間で、心理的圧迫感を与える。そんな非人間的なトンネル空間を、ドライバーが速度を伴って体験するひと続きの視界の展開としてとらえ、時間軸でデザインする。ここでは時速70km走行で通過に約224秒、この時間の流れに沿って、トンネル内シークエンスが外部環境と連続しながら「起・承・転・結」のストーリー性をもって緩やかに変化するよう、入口から出口までトンネルの両壁面に平行に走る帯状のパターンで表現している。また、ギャップの大きい出入口部ゾーンを緩衝域として強い違和感の軽減を図った。このシークエンスによって単調さからくる意識低下を防ぐだけでなく観光地高山への期待感を高めたり、一方の白川郷や名古屋へは、次の展開への序章の役割を果たしたり、「道程」本来の意味合いの復権を図っている。現状のトンネル走行が、ネガティブで暗いイメージで、緊張と忍耐によって止まった時間を費やすだけなのに対して、長い道のりを速度感をもって変化を体感しながら生き生きと快適に過ごすことができる。

• location：岐阜県高山市
• site：高山清見道路 小鳥トンネル
• subject：トンネルの走行空間シークエンスデザイン
• length：4,346m
• client：国土交通省 高山国道事務所
• year：2002～04年

Sequence Design
東京湾アクアライン　1993-97 / 日本道路公団（現NEXCO東日本）

川崎と木更津を結ぶアクアラインは10キロの海底トンネルと続く5キロの海上の橋から成る。人工地盤の浮島アプローチは川崎側の出入口である。川崎の灰色のコンビナート群を貫き、真っ直ぐ海へ向かう高架のハイウェイは緩やかに高度を下げ、丁度路面の高さが地面レベルに重なったところから、道は地を二つに割り、海深く延びる海底への直線的滑走路に姿を変える。地上から海面そして海底へと車が高度レベルを下げて進む道の左右に現れた擁壁は徐々に高さを増してゆく。擁壁のやさしいカラーコンクリートのテクスチャは、水平に異なる色と質感が幾重にもかさなる地層を形作り、最先端土木技術によって実現された完全な人工空間である海底トンネルとの対比で母なる大地の断面を想起させる。

• location：神奈川県川崎市
• site：東京湾アクアライン / 東京湾横断道路（全長15km：海底トンネル10km＋海上橋5km）
• subject：トンネル抗口進入路擁壁（川崎側）のシークエンスデザイン
• wall size：長さ300m / 高さ0～15m
• client：日本道路公団（現NEXCO東日本）
• year：1993～97年

Construction Sights Design
新宿サザンビートプロジェクト　2005-07 / 国土交通省東京国道事務所

2005年度グッドデザイン賞受賞

「新宿」という場所が、世代を超えて多くの人々の記憶の中で、青春時代と重ねられる街として、再認識されることを図った。また、未来の南口をつくる工事への関心を抱いてもらい、事業への理解を得ることを目指した。全長約320mの「仮囲い」を活用し、2005～07年に渡って新宿の過去・現在・未来をテーマに、新しいメディアと歩行者とのコミュニケーションのための窓としてデザインを展開。
このプロジェクトは回を重ねるにつれ、インターネット上の個人ブログサイトやNHK、各種新聞、雑誌等の様々なメディアで話題となり、新宿という街の中の出来事のひとつになった。

• location：東京都新宿区
• site：JR新宿駅南口地区基盤備事業の国道20号線甲州街道跨線橋架け替え工事
• subject：跨線橋架け替え工事現場での一連のデザイン計画、クリエイティブ・ディレクション
• length：仮囲い全長320m
• year：2005～07年
• client：国土交通省東京国道事務所
• 専用ウェブサイト：Shinjuku Southern Beat　2007

• 写真左から
• 2005
• AD：Naoyuki Suzuki／illustration：Kiyoshi Kuroda／lighting plan：Kyota Takahashi
• 2005
• 2006 新宿ID
• AD：Naoyuki Suzuki
• lighting plan：Studio Han Design
• illustration：Takahumi Kato
• lighting plan：Kyota Takahashi

Construction Sights Design
日本橋 Muromachi in Progress / 国土交通省東京国道事務所

2005年度グッドデザイン賞受賞

工事期間中に限った仮設歩道といっても、実際は片側だけで3年間以上設置される。日本橋は歴史ある商業地で老舗が軒を連ね、何より街並み景観・文化的イメージへの配慮が伝統となっている地域柄であり、現地では三越新館・日本橋三井タワーがオープンを控えていた。そこで周辺景観への配慮にとどまらず格式と伝統ある室町の景観の一部としてふさわしい魅力的なデザインを目指した。従来の地下工事の覆工板設置では歩車道の境界が曖昧で、工事用コーンやフェンス等が煩雑で歩行者を不安にし戸惑わせていた。ここでは歩行者の安全性を確保するため、歩道と車道を明確に分離する境界部の車止めも同時にデザインし、道路機能にも十分配慮した。

• location：東京都中央区日本橋室町
• site：地下鉄三越前駅前後の地下通路拡幅整備工事
• subject：中央通り歩道部の覆工板（夜間工事で開閉する仮設床板）と歩車道境界部のデザイン
• length：3m²×600pieces
• year：第一期（三越側）実施2004、現在（2010）第二期工事で反対側に移設設置されている
• client：国土交通省東京国道事務所

Structural-scape Design
豊田ジャンクション＆ジャンクションパーク　1996-2002 / 日本道路公団（現NEXCO中日本）、豊田市

21世紀のハイモビリティー社会の実現を目的とした第二東名高速道路。一方現地では、延々つづく高架橋の巨大な構造物群が、慣れ親しんだ故郷の自然景観やスカイラインを一変させ、人工的な第二の自然風景を生成し、都市化の一途をたどることになる。その引き返せない事実に対し、事業者／作る側、地域／受け取る側、双方がその変化過程を意識化できるよう、自ら地域環境を見直す機会としてこの景観計画を位置づけた。そこで、周囲の自然景観の特色を尊重し、四季折々の変化が反映されるよう、林立する構造物を森の樹木と捉え、エリア内の全ての橋脚本体を周囲の自然の色が映ったような6色のカラーコンクリートによるグラデーション（道路交差の中心から外に向かって同心円状に変化）のデザインを提案した。このナチュラルグラデーションのトーンと、やわらかなカラーコンクリートの質感によって、威圧的な土木のコンクリート構造物のヴォリューム・重量感を一転、快活なハーモニーへと変換してゆく。
また、このジャンクションは、見通しのある広大な田園地帯に位置するので、空地を地域へ還元する趣旨で地元行政への移管による公園化が計画された。そこで21世紀に相応しいコンセプトによって総合的視点からデザインを考えた。豊田は、現代日本のモビリティー社会の基地であり、地域社会の活力を生かし「高速道路＠豊田」ならではの新しい公園モデルを創造できる場所であることから、環境循環型 ─ 自律型公園の実現を目指しつつ、「現代モビリティーについてのライブ・ミュージアム」として豊田ジャンクションパークのデザイン提案も行った。
～道路公団民営化に伴う事業者の方針転換によって、このジャンクションパークの提案は計画案にとどまった。

• ─ 豊田ジャンクション
• location：愛知県豊田市
• site：第二東名高速道路 豊田ジャンクション
• subject：高速道路ジャンクションの全体景観デザイン（交差部を中心に直径約1,000mエリア）、高架橋の橋脚・橋桁・落下物防止柵などが対象
• client：日本道路公団（現NEXCO中日本）
• year：1996～2002年

• ─ 豊田ジャンクションパーク（計画案）
• site：同上、第二東名高速道路豊田ジャンクション敷地、地上部
• subject：同上ジャンクションの敷地エリアの公園化計画、ランドスケープデザイン
• client：豊田市
• year：2002年

Bridge Design
踊場誇道橋　1999-2002 / 日本道路公団（現NEXCO西日本）

既存の高速道路のオーバーブリッジは、本線を走るドライバーの視界に、コンクリート製の壁高欄と一体のヴォリュームとして見えてきて、通過する度に頭上に重くのしかかる印象があった。橋の構造は変えない条件で、ここでは、橋本体を圧迫感の少ない形態にすることと、壁高欄を支柱と横ビームのミニマムな高欄に換えることで軽快な印象に転換させた。そのために、橋本体のシルエット、プロポーション、素材や面、ヴォリューム、陰影の違い、奥行き感などをデザイン要素として考え、最終的に左右断面を変形させ線的なアシンメトリーにすることで、走行ドライバーの視界のシークエンスにおいて、形態や奥行きの「見え」の変化の操作によってシャープなデザインになった。

• location：鹿児島県曽於市
• site：東九州自動車道（大分-宮崎-鹿児島）
• subject：高速道路上に架かる跨道橋のデザイン
• length：40m
• client：日本道路公団（現NEXCO西日本）
• year：1999～2002年

Product Design
はらぺこくん

Design Tide 2005出品

「はじめてのソファ」‘First Sofa’
お母さんの柔らかな腕を離れ、初めて独りで「座る」。未だ二足歩行する前の人間。
未だ家具以前の進化中の椅子。
あかちゃんは、生後
4カ月、横たえたままの身体を左右にねじって寝返りする。
5カ月、四つ這い姿勢で移動のためのエネルギーを蓄える。
6カ月、上半身を起きあがらせ、おぼつかない重心で初めて座る。
9カ月、二足で直立歩行する人類として、つかまりながらも立ち上がる。
12カ月、最初の一歩を踏み出す。

生まれてから1年の間にあかちゃんは様々なことを経験・学習し、段階的に運動能力を身につけていく。はらぺこくんは、発育過程にあるあかちゃんの、重心の不安定な腰や背中を優しく包み込み支え、新しい動作への好奇心を受け止める。はらぺこくんの円弧型アームの形態は、成長にともなってあかちゃんの身体に寄り添い、次のステップへと使い方が徐々に変化していく仕組み。はらぺこくんはまた、柔らかい質感と安定感、姿勢や使い方を規制しない自由さから、床置きやベッド、ソファの上で使う大人のためのリラクゼーションクッションにもぴったり。

• はらぺこくん専用ウェブサイト：http://www.studio-han-design.com/harapeko/