安積朋子 | 注目のデザイナー | デザイン情報サイト[JDN]

第122回安積朋子（家具、プロダクト＆空間デザイナー）

［桐山登士樹の推薦文］

ミラノサローネのフィエラ会場で目に留まるデスク「AT-AT」（Röthlisberger社　スイス）があった。築15年のマンションを最近リノベーションし、これまでのカルテルのデスクから新たな机を探していた。ほどよい大きさ、コンピュータ等のコードの収納など、細やかな配慮があちらこちらに見られる。あまり真剣に見ていたせいか近づいてきた人がいた。安積朋子さんである。安積さんとは、伸さんとのユニット時代からの長いつき合いになる。05年からはソロで活動を開始し、持ち味を生かした精力的な活動を行っている。ついつい幾らで買えるかとストレートな交渉をしてしまったが、今日現在まだ迷っている。高価であるが100年を単位とした家具として捉えれば安い。さらに安積さんには、今年の富山プロダクトコンペテションの審査委員もお願いしてしまった。機能性を持ちつつチャーミングなデザインを実践している安積朋子さんには、今後もいろいろ協力をお願いしたい。よろしく!!

Little Woods

2008: for Maxray (Japan)

Twiggy Lamp

2008: for Maxray (Japan)

AT-AT

2007: for Röthlisberger (Switzerland)

Ro-Ro rocking chair

2007: for Zilio A&C (Italy)

Spin Recharge Table

2008: for MARK (UK)

Transport Lamp

2008: for Wood by TEN (UK)

Spa Bed

2008: for Luke Hughes & Co. (UK)

ムシキャパ

2007: for ピエージュ(Japan)

安積朋子 / Tomoko Azumi

家具、プロダクト＆空間デザイナー

1966年広島生まれ
1989年京都市立芸術大学環境デザイン科卒業
1995年Royal College of Art、MA（修士）Furniture科卒業
1995年パートナーシップAZUMI開始
2005年ソロでのデザイン事務所 t.n.a. Design Studio設立
2005年よりRoyal College of Art講師、London Metropolitan University客員研究員
2007年よりグッドデザインアワードの選考委員

t.n.a. Design Studio
Unit 7, Haybridge House
15 Mount Pleasant Hill
London E5 9NB, U.K.
http://www.tnadesignstudio.co.uk
mail@tnadesignstudio.co.uk
photo：David Vintiner

ABOUT 注目のデザイナーについて

デザインディレクター桐山登士樹が、旬のデザイナーをセレクトする「桐山登士樹が選ぶ注目のデザイナー」。近年の作品や代表作品などをご紹介。

桐山登士樹

株式会社TRUNK代表
デザインディレクター

デザインプロデュース会社・株式会社TRUNK代表取締役、富山県総合デザインセンターデザインディレクター、富山県近代美術館副館長

●桐山登士樹 Twitter　@kiriyama_trunk
●TRUNK LTD.　http://www.trunk-design.jp/

これまでに紹介した注目のデザイナー

Little Woods / for Maxray (Japan), 2008

シェードには竹尾の特殊紙「パチカ」を用い、熱プレスによって半透明になる性質を照明器具に使いました。できるだけコンパクトな箱に収まるデザインにして価格もおさえ、ショップから持ち帰ってすぐに組み立てられる卓上の照明として開発しました。

サイズ：W 260 / D 140 / H 250 mm
マックスレイ：http://www.maxray.co.jp
Ray：http://www.ray-light.com
竹尾：http://www.takeo.co.jp/cgi-bin/site/index.php
photo：maxray

Twiggy Lamp / for Maxray (Japan), 2008

「木漏れ日の射す冬の森を歩いた印象を照明器具に留めて家に持ち帰り、身近に使いたい。」という思いを商品にしたものです。シェードには竹尾の「ピーチコート」を使い、3重に巻かれた外側のレイヤーに電球の光が小枝の影を落とします。壁や天井などにも、枝を通って届いた光のパターンを映し出します。

サイズ：スタンド型／D 240 / H 470 mm
マックスレイ：http://www.maxray.co.jp
Ray：http://www.ray-light.com
竹尾：http://www.takeo.co.jp/cgi-bin/site/index.php
photo：maxray

AT-AT / for Röthlisberger (Switzerland), 2007

現代の生活に合った機能を持つライティング・ビューローです。ラップトップコンピューターや携帯電話、デジタルカメラなどを充電するアダプターをデスクの下に内蔵でき、ホームオフィスとして使えるのはもちろん、デスクを閉じるとすべての電気製品が視界から消えてすっきりした居間に戻ります。2009年 iFデザイン賞（ドイツ）受賞。

素材：ムクの梨材
サイズ：W 880 / D 460 / H 920 mm
Röthlisberger（スイス）：http://www.roethlisberger.ch
photo：Alain Bucher

Ro-Ro rocking chair / for Zilio A&C (Italy), 2007

スチーム曲げ木の技術を使うことで木に自然な曲線を定着させ、安定した構造と心地よいロッキングを可能にしました。Zilio A&Cはイタリアの有名メーカーの下請けを70年以上続けているウーディネ近郊の木工場ですが、近年メーカーが製造を旧東欧諸国や中国などに移しているため、閉鎖に追い込まれる下請け工場が続出し、椅子の製造で成り立っていた地域の経済が衰退しはじめています。その事態をどうにかしようと3代目の社長がレーベルを起こし、デザイナーと組んでオリジナルの家具を作り始めたのが2005年。「Ro-Ro」ロッキングチェアはその試みのひとつとして、かつてオーストリアの一部でもあったこの地域の伝統であるスチーム曲げ木の工場と組み、この技術を継承しようと開発したデザインです。

素材：ムクのブナ材、座面はブナ化粧成型合板、ステンレススティール
サイズ：W 560 / D 620 / H 660 mm
Zilio A&C：http://www.zilioaldo.it/products_roro.html
photo：左／Matevz Paternoster、右／tna Design Studio

Spin Recharge Table / for MARK (UK), 2008

携帯電話やMP3プレーヤー、デジタルカメラなどのアダプターを延長コードに差した状態でまとめてテーブルの下に収納し、帰宅した時にすぐ充電できるようにしたリチャージ・ステーション。小さなテーブルとしても使えます。テーブルから出ているコードが1本なので、それを抜いてテーブルごと持ち運ぶこともできます。イギリスの南西端のコーンウォール地方の産業を活性化させ、持続可能な地域社会を作るために動き出した「MARK」というプロジェクトのためにデザインした商品で、搬送時の環境負荷を減らすため、使用者が簡単に組み立てできるデザインを考えフラットパックを可能にしました。

素材：ムクのオーク材、パウダー塗装の鉄板押し出し＆曲げ加工
サイズ：D 450 / H 480 mm
MARK：http://www.markproduct.com
photo：MARK

Transport Lamp / for Wood by TEN (UK), 2008

2006年の100% Design展のためにロンドン在住の10人のデザイナーが結成した「TEN」というグループで、サステナブル（持続可能性）とデザインの関係を考える展示を毎年行っています。このランプはその3年目の企画の「サステナブルを実践する商品」としてデザインしたもので、ヨーロッパで生産されるブナ材とパーツを使い、出来る限りコンパクトな包装を目指した照明器具です。ロンドンのメーカー兼ショップtwentytwentyoneと組んで商品としての開発が進んでいて、今年（2009年）9月の100% Design Londonにて発売される予定です。

素材：ムクのブナ材、塗装鉄板曲げ加工、照明ソケット、不燃紙（タイベック）
サイズ：W 300 / D 240 / H 580 mm
TENプロジェクト・ブログ：http://tenproject.wordpress.com
twentytwentyone：http://www.twentytwentyone.com

Spa Bed / for Luke Hughes & Co. (UK), 2008

アイルランドにオープンしたホテルのスパのためにデザインしたディ・ベッド。手元のコントローラーでベッドの角度を変えられます。プライバシーを護るための緩やかな間仕切りと、手元明かりを反射させるシェルターの役割を持たせたルーバーのスクリーンによってリラックスできる空間を作り出しています。小ロットでの受注が可能です。

素材：ウォルナット化粧合板、ウォルナット化粧MDF、油圧モーター他
サイズ：W 2,000 / D 960 / H 1,400 mm
Luke Hughes & Co.：http://www.lukehughes.co.uk
photo：Luke Hughes & Co

ムシキャパ / for ピエージュ(Japan), 2007

「光学式誘引捕虫器」と呼ばれるハエ捕り器です。虫の好む光で昆虫を呼びよせ、粘着式の捕虫リボンで捕獲します。不快なにおいや音がなく、リボンは触れても害のない素材で作られています。製造元のベンハー芙蓉株式会社は1970年代に捕虫器を開発し、以来、ホテルや食品工場などで使われる器具を製造してきました。この技術を活かし、家庭やカフェで日常的に使える器具としてムシキャパが生まれました。虫の集まりやすい形で点灯と捕虫をくりかえし試しながら、キッチンや居間、カフェや食堂の片隅で静かに活躍する捕虫器の「たたずまい」について考えたデザインです。ムシキャパという商品名は高速で飛び空中で昆虫を捕まえる鳥「Fly Catcher」のラテン名に由来します。2008年グッドデザイン賞（日本）受賞。