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スマホ時代の新しい写真体験を創る、オープンプラットフォームカメラ「OLYMPUS AIR」

スマホ時代の新しい写真体験を創る、
オープンプラットフォームカメラ「OLYMPUS AIR」

2015/09/02

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今年3月にオリンパスから発売された「OLYMPUS AIR」は、一見するとレンズ単体かと思ってしまうような、ファインダーのないレンズ交換式ミラーレスカメラだ。左手でも右手でも扱えるシンメトリックデザインを採用し、カメラ単体での撮影はもちろん、スマホやタブレットとWi-Fi接続して、さまざまなアプリを使った撮影やエフェクトができるなど、そのユニークさが評判を呼び注目を集めている。

しかし、「OLYMPUS AIR」の本当のユニークさは、精密機器であるカメラでは考えられなかった「オープンプラットフォームカメラ」をコンセプトにしていることだ。オリンパスの技術をオープンにして、デベロッパー、クリエーター、ユーザーと共に新しい写真体験を開拓するプロジェクト「OPC Hack & Make Project」で活用する「OLYMPUS AIR」は、カメラをコントロールするSDK(Software Development Kit=ソフトウェア開発キット)や、ボディの3Dデータを公開している。つまり、「OLYMPUS AIR」の新しい写真体験や遊び方を提案するアプリの開発や、より自分好みのボディにアクセサリをつくることができるのだ。

「OLYMPUS AIR」
「OLYMPUS AIR」

この製品の面白さは一部の高感度な人たちためだけのモノではない、そう感じさせられたのは、「OLYMPUS AIR」の活用方法を提案するWEBサイト「PLAY AIR」で公開された、ロンドンを拠点に活動するサウンドアーティスト・プロダクトデザイナーのスズキユウリ氏による「DIY CAMERA KIT for OLYMPUS AIR」のプロモーション動画を見てからだ。ここではデジタルデバイスを使いながらも、単純でシンプルなおもしろさが詰まっている。

「DIY CAMERA KIT for OLYMPUS AIR」からはじまる、「OLYMPUS AIR」が目指す新しい写真体験について、スズキユウリ氏とオリンパス株式会社の石井謙介氏にお話をうかがった。

コンセプトはオープンプラットフォーム、「OLYMPUS AIR」で新しい写真体験を共創する

オリンパス株式会社 石井謙介氏
オリンパス株式会社 石井謙介氏

石井謙介氏(以下、石井):これまでのように完成品をメーカーとして出すのではなく、ユーザーとの共創を可能とする、できるだけシンプルなものをつくろうと考えていました。その第1弾として発売されたのが、オープンプラットフォームをコンセプトにした「OLYMPUS AIR」です。

これが発売されたのは今年の3月ですが、プロジェクト自体がはじまったのは2012年5月からです。MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボとのワークショップからコンセプトが生まれました。「OLYMPUS AIR」はできるだけ要素を最小限にして、プログラミングできるSDKや、アクセサリをつくる3Dデータなどを公開したりしながら、アプリなどが充実していくように、デベロッパーコミュニティを形成していこうと考えています。

「OLYMPUS AIR」の発売のちょうど半年前、いまから約1年前にスズキユウリさんにプロジェクトに関わっていただきました。こういう新しい商品を世に出すときに、やはりその魅力を伝えるために世界観を浸透させていく必要がありました。オープンプラットフォームというと、どうしてもプログラマーとかデベロッパー、3Dプリンタなどを使いこなせる、一部のギークな人たちが中心となってしまいます。そういった層だけでなく、一般の人たちにも理解していただけるような世界観を演出するために、スズキさんにプロジェクトを一緒にやっていただけませんか?と相談しました。

スズキユウリ氏
スズキユウリ氏

スズキユウリ氏(以下、スズキ):やっぱりプロダクトをつくったときは、メーカーさんがインターフェースからなにからすべてつくっているんですけど、「OLYMPUS AIR」は隙間があるというか、ハードウェアに自分のデザインを入れ込めるエレメントが多くて新鮮でした。可能性がすごくたくさんあるカメラだなと思って、なによりカメラとして楽しいことができる。あとはユーザーとともに成長していけるような、そういうニュアンスや思想も入っていたので、そういう意味ではかなり惹かれるプロダクトでしたね。

僕はふだん写真をあまり撮らないんですけど、iPhoneは常に持ち歩いていて、そういうスタイルで「OLYMPUS AIR」楽しめる。やっぱりカメラって構えて撮影するものですが、コレは上着のポケットに入れて気軽に持ち運べるので、スケッチ的な感覚で高画質の撮影ができるのが良いですよね。

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