音楽や映画には、作品の中で推移する時間が明快に表されているが、美術作品にもさまざまな時間が内包されている。言うまでもなく、制作や構想にアーティストが費やす時間や、作品の前で鑑賞者が費やす時間はその端的なものだ。同時にアーティストたちは、「ある瞬間」を表現することで自らの作品の上にそれを留めようと試みたり、「経過する時間」を可視化するために、ときの移ろいのなかで物質が姿を変えて行く過程やその現象を切り取ったり、運動や反復の表現を通して、「不可逆な時間」に目を向けたりしてきた。

本展では、原美術館のコレクションを「時間（とき）を視る」という観点から見て行く。本来、視覚芸術は、目に見えない世界や概念を目に見える形に表現しようとするアーティストたちの挑戦の痕跡とも呼べるもの。平面、立体、写真、映像と、さまざまな様式で表現された＜時間＞をあなたの時間に重ねてご堪能いただきたい。