画家・近藤恵介と小説家・古川日出男による2人展が、4年ぶりに開催される。2011年の「絵東方恐怖譚（え・とうほうきょうふたん）」 そしてその再解釈として2012年に開催された「覆東方恐怖譚（ふく・とうほうきょうふたん）」に続く3度目の展覧会となる。

本展のタイトル「ダンダンダン。タンタンタン。」は2人による即興的な制作セッションから生まれた。事前の打ち合わせなく紙を挟んで向かい合い、近藤が線を引き、それに呼応した古川が文字を描き込むというスリリングなやりとりを繰り返す中で、“物語”を意味する「譚」 の文字は「淡」を経て「談」へと変化。最後には漢字の持つ意味からも離れ「ダン」「タン」とリズムを刻むように重なっていった。

この音の重なりは展示内容とも密接にリンクするものだ。本展の会場であるLOKO GALLERYの建設現場を下見に訪れた2人は、高い天井を持った真新しい展示空間から触発され、絵画 / 文字を柱のように積み重ねていくというアイディアに至った。「ダンダンダン。」は 工事現場の作業音、ギャラリーが立ち上がっていく音であるとともに、作品が積層する音でもある。

会場には複数の物語のレイヤーが 絵画となって積み上がり、“説話集”のような展覧会が生成されるだろう。そしてそれらは観る者の視線によって結ばれ、真の完成に至る。「タンタンタン。」という音節には、会場に響く鑑賞者の足音や階段を登るリズムといった要素も秘められている。加えて今回の展覧会には、近藤と古川の恊働の原点ともいうべき「絵東方恐怖譚」の出品作も登場。2人の共鳴の歴史が多角的に浮かび上がる。

これまでの文字と絵画による試みを引き継ぎつつ、まったく新しい段階へと踏み出す3度目の展覧会に期待していただきたい。