谷口典央は、本来は木版画の版として使われる版木に、古代の遺跡や壁画からのインスピレーションや自身の空想をもとに彫った作品で、第13回グラフィック「1_WALL」のグランプリを獲得した。受賞作品は「テレビゲームのRPGを想起させ、一歩間違えると時代遅れになるテーマだが、これは今の時代に合う作品だ」と高く評価された。

谷口は、現在「自分だけが知る、人々に忘れ去られた物語」をテーマに制作している。世界各地の民俗や儀式から着想を得ている古今東西のモチーフが混じり合う絵には、ノスタルジーと今までに見たことがない新しい風景が共生している。一本一本の線の構成により描かれている豹や蛇、天使などは、それぞれ明確な関係性を示されておらず、多様な解釈の余地を残し、見る人の想像力をかき立てる。

「自分らしい作品が出来れば、画材や支持体は関係ない」と語る谷口は、油彩、水彩、ドローイング、版画など、その時々のイメージに合う手法をとっている。どの作品にも共通する、伸びやかで凛とした線の表現からは、異なる手法を楽しみながら使いこなす谷口の姿勢を見てとることができる。本展では新作の版木の作品に加え、油画やドローイングをあわせて展示する。受賞から約1年後の個展を、ぜひご覧いただきたい。

【関連イベント】
●オープニングパーティー
日時：6月28日（火）　19:00～20:30

●トークイベント
大原大次郎（グラフィックデザイナー）×谷口典央
日時：7月9日（土）　16:00～17:30
※参加無料、要予約