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デザインのチカラ

デジタルスケープ

株式会社NTTドコモ プロダクト部 ユーザーインターフェース企画
デザインマネジメント担当課長 堀田峰布子氏/担当課長 笹原優子氏

ドコモの考える"Good Design"

堀田氏と笹原氏
堀田峰布子氏(左)と笹原優子氏(右)

── NTTドコモ(以下ドコモ)は2010年夏モデルとして20機種を開発、とりわけ「docomo STYLE seriese」新10機種についてはコラボレーションによるデザインが話題を呼んでいる。ターゲットを絞り込んだデザインはドコモのコンセプトを取り込みつつも各端末の世界観を際立たせている。各端末供給メーカーと恊働し、シリーズ全体を通してインターフェースにドコモらしさを追求、統括しているのがプロダクト部ユーザーインターフェース企画担当の堀田峰布子氏と笹原優子氏だ。

 笹原氏 「基本的なデザインポリシーは『Good Design』です。さらにインターフェースの面では『おもてなし』をキーワードに掲げ、ドコモユーザーのお一人お一人にとって良いデザインを提供するために、付加価値を追求するのではなく“前提条件としての良いデザインとは何であるか”を追求するスタンスで臨んでいます」

「docomo STYLE seriese」2010年夏モデルラインアップ
「docomo STYLE seriese」2010年夏モデル

── 5500万人いるドコモユーザーにおいては、そのリテラシーも様々だ。たとえば「機種変更したときに使い方が変わってしまう」といった不満を取り上げ、2008年冬モデルから導入した文字入力方法の統一を皮切りに、小さな機能の統一にも着手している。

 笹原氏 「濁点ひとつ入力するのにストレスを感じられてしまうこともありますから…。異なる機種でも、同じインターフェースやアイコンモチーフを採用の導入を進めています。考え方としては当たり前ですが、メーカーを横断して統一というのは、実はハードルが高いことなのです。そこを、ちょっとずつ使いやすくドコモの世界として『おもてなし』していこう、と。
 また、海外で使用する際の設定はこれまで奥の階層に押し込まれていましたが、最近ではよく使われるようになったので、上の階層に設計し直すなど、時代の流れに応じた修正を施すことで、より直感的に使って頂けるようになってきていると思います。

── 2010年モデルからは、メインメニューだけでなく二階層目にもアイコンをつけるなど、これまで以上に直感的操作を自然に促すインターフェースの導入が始まった。見づらい文字の羅列を避け、ちょっとした工夫でストレスなく操作できるような工夫だ。
 キーボタンを長押しして操作する機能もいくつかあり、わかりづらい、知らないといった声も聞かれたため、より便利に利用できるよう、長押しを示すアイコンを付加し、黒字に白抜きの文字で表現するなど印字でも工夫している。

 笹原氏 「複数回の調査を重ねユーザーの方々に実際に使ってもらい、どこが使いやすく、どこがそうではないか研究し製品に反映させる手法も取り入れました。たとえば、ショートカットなどのカスタマイズ機能は変えず、むしろ基本的な操作のアイコンや階層を共通化することで、使いにくいと思った場合には基本へ立ち返り、安心して使っていただくための努力を重ねています」

笹原優子氏
笹原優子氏

 「端末供給メーカー側との協力は不可欠です。統一することによって、メーカーの流儀を変えて頂く結果となることもあります。「同じメーカーの機種を選んだのに操作が変わってしまった」という声などを頂き、100%良いという判断はあり得ないかもしれませんが、改良する際には地道な調整を重ねて、理解を求めるのが私たちの役目です。
 手探り状態からのスタートで、2008年冬モデルからの統一では瞬間的に使いづらいという意見も耳にしましたが、その後は大きな問題に発展することなく、不満なく使っていただけていると確信しています」

── ツールや言葉は様々だが、デザイナーとしての感覚を共有していることが、メーカーとの共同で有利に働く場合も多いという。一方で、デザインオリエンテッドに走り過ぎないよう、リアルな市場とのバランス感覚への自覚も強い。

 堀田氏 「デザインスキルやものづくりスキルを上げるために、我々主催でいろいろな勉強会もおこなっています。わかりやすい例でいうと、『109に行こう』とか『竹下通りを歩こう』とか。たとえば中高生をターゲットに想定している場合は、実際に彼女たちにアテンドしてもらい、『109をどう歩くの?』『何を食べてどういうお金の使い方をするの?』といった勉強会を、リアルトレンド体験ツアーと称して開いています。そのアウトプットの一例が『Seventeen』誌との「ピンクピンクピンク」(docomo STYLE series SH-05B)。感覚的に新しいインプットがなければアウトプットはできないと思うし、ターゲットにとってその端末のアウトプットが適正かどうかを見極める重要性を感じる仕事です」

docomo STYLE series SH-05B
docomo STYLE series SH-05B

 笹原氏 「お客様の手に触れるものはすべてユーザーインターフェースだと捉え、端末だけでなく、取り扱い説明書も一緒に扱っています。加えて、ショップで直接お客様と対面してご説明する体験もしますし、日々、周囲の人々から正直な感想をていねいに把握するようにしていると、ユーザーインターフェースという言葉以前に、操作性に対して心の障壁が生まれてしまうことを実感することも少なくありません。
 先進性について知識を深める一方で、実際の使われ方に注目したり、聞いた言葉をそのまま書き留めたりすることで、その裏にある心理の障壁を含めて考えますね。UIには幅広い視野が必要だと思っています」

「docomo PRIME seriese」2010年夏モデル
「docomo PRIME seriese」2010年夏モデル
「docomo SMART seriese」2010年夏モデル
「docomo SMART seriese」2010年夏モデル
「docomo PRO seriese」2010年夏モデル
「docomo PRO seriese」2010年夏モデル

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