革新的なオープンプラットフォームで、提供できること
── Xperiaは、オープンなプラットフォームだから実現できた、全く新しいGUIアプリケーションが特徴だ。特に、携帯電話に保存した写真・動画・音楽と関連するweb上での情報をシームレスに表示し、アクセスできるMediascapeや、発着信やメールからTwitterやmixiといったSNSまで一括アクセスを可能にするTimescapeは、画期的なオリジナル機能となっている。
メイン画面は、透明感ある表情豊かな青色で、「Flow(フロー)」というテーマ名がつけられた。リッチ感あるGUIはビジュアル検討の結果、商品として最も映える色であり、3次元曲線で構成された外観デザインとも相性が良いと考えられた。
画面の中で青いラインがゆっくりと漂うように動く波形や、Timescape起動時にデータの並びが大きなS字を描く動きは、Human Curvatureの考え方とも同調する。
浜氏 「初めてのAndroidプラットフォームでしたが、グローバルな展開として、何をユーザーに提供していけるのか、というところからスタートしています。また、何でもできる環境なので、この自由さの中で何をやればよいのか、やるべきなのか、といったことは大切に考えました。
GUIはどうしてもプロダクトとは隔ててデザインされがちなのですが、それは本来あってはならない状況です。今回は画面も大きい分、デザイン要素への意識は重要で、その点はソフト設計者とも共有できていたと思っています。
コンセプトは数カ月で集中して考え、あとはGUIとしてひたすらブラッシュアップしていきました。アプリケーションの画面遷移まで、ユーザー・エクスペリエンスとしてデザインから提供します。単に表面的なビジュアルだけをデザインするのではなく、プロダクトとGUIを連携づけてデザインすることで、ユーザー・エクスペリエンスを高めています」
── Timescapeは、人を軸につくられているアプリケーションという点で、ソニー・エリクソンが掲げるHuman Centric Designのビジュアライズにほかならない。
さらに日本展開モデルでは、文字入力時の独自の予測変換機能や、次に使用する可能性のあるキーボードを大きく表示するなど、使い勝手向上の工夫をしている。
浜氏 「我々が使用して自然だと感じること、さらにそれがユーザーも自然だと受け入れるかどうか、ということを視点に開発を進めました。ケータイとしてのGUIの歴史は長くないので、培ってきた経験をもとにやっと成熟してきたのではないでしょうか」
鈴木氏 「もちろん我々の経験則もあります。しかし、新しいものを提案していこうとするときに、提案側の押し売りになってしまいがちなところを一歩踏みとどまって、ユーザー目線で見直すとか、そこの揺り戻しがどれだけできるか、というところがポイントかと。
TimescapeやMediascapeは非常に特徴的ですが、もしユーザーの方が使いたくなければ使わなくても構わない設計になっています。いかに強要しないかというのはむずかしい点ですね。ただ、それらの機能を使うと楽しめる幅が広がるよ、というコミュニケーションの入り口としての提案で、エモーショナルな側面から見ても斬新で、自信を持ってオススメできるものに仕上がっていると思うので、ぜひ使ってほしいという気持ちです」
浜氏 「押し売りにならないように踏みとどまるためには、少数派を軽視しないことだと思います。社内で少数だからといって市場でも少数派とは限りませんし、グローバルなチームで開発にあたるのでさまざまな視点や意見で考えられます。つまり、思ってもいなかった意見が吸い上げられる環境にあるのは、ソニー・エリクソンのメリットだと思うので、グローバルの最大公約数的な部分を見つける気持ちで取り組んでいました。
見た目や使い勝手については、心地良さを最優先に求めました。Timescape自体は、実は、あらゆるコミュニケーションを一軸でならべるというシンプルな発想です。Mediascapeも同様に、シームレスなコンテンツ移動を重視することで心地良さを追求しています」
── TimescapeやMediascapeには、「Infinite(インフィニット)」というボタンがある。音楽や電話帳を立ち上げている時にタッチすると、関連する情報をシームレスに集約して楽しめる機能だ。これも、「Flow」が表現する新しいデザインコンセプトと呼応するものだという。
鈴木氏 「実は、Infiniteも最初の頃にでていたキーワードのひとつです。コンテンツ間の移動も含めてあらゆる操作の垣根をなくす考え方で、たとえばリゾートで体験できるような、Infinity Edge Pool(インフィニティ・エッジ・プール/海と一体化したように見えるプール)の海へとひとつながりになっている際限のない感覚をイメージしました。それを感じてもらいたい。そこに愛着をもって癖になる心地良さを覚えてもらえれば嬉しいですね」
浜氏 「GUIでのInfiniteは、情報は止まることなく、常に新しい情報の流れの中にあるというコンセプト。それは海にも空にも見えながら広がる画面の青色にも、表現できたのではないでしょうか。青が何の青なのか、明確には決めてないけれど、抽象的な感覚として響くと思っています」