ジャパンデザインネットのトップページ
レポート
12カ月のパリ
 ジャパンデザインネット
 レポート
 12カ月のパリ
 


第13回 (2)
EXD VOYAGER-03 〜旅をするデザインコンテナー〜




■ 2003年9月17日

いよいよ、リスボンEXDのオープニングを迎えた。
「3都市3000キロメートル」の遠征から帰還したVOYAGER-03は、リスボン市内のメイン広場 Praca do Comercio に到着していた。
17日〜22日は、オープニングウィークであり、世界各国からのメディア関係者が取材に訪れた。ポルトガル文部大臣、リスボン市長もご出席され、華やかな夕刻を迎え、日没後も、多くの観衆たちがつめかけた。


■ ポルトガル デザイン ロードショー

先述の工業製品、グラフィック、サウンド、インテリア、建築といった分野から約40名のクリエーターが参加したVOYAGER-03の中から、いくつかの作品について見てみる。
既に、読者の方々もご存知のブランドAtlantis Crystal (クリスタルメーカー)とVista Alegre(セラミックメーカー)が共同出資したブランド Vista Alegre / Atlantis は国際的な評価を得ている。花瓶、ワイングラスといった商品を若手デザイナーに依頼して伝統的な素材を現代の表現で紹介した。

写真26
designwise(dw)の商品Juicy Boobs(素材はセラミック)

又、プロダクト部門では、Designwiseブランドは新しいポジションをとる。これは、ポルトガルデザイナーによるプロダクトを商品化するエディターでもあり、ブランドだ。特定の分野に限定せず、一種のユーモアやストーリー性を持ったことが要求される。
4月のミラノサローネでも、ESTGAD * 1 の生徒として出展したNaulila Luisは、フェルトペンの芯素材を再利用し、マルチカラーバッグJust Begとした。日常用品の用途を変えることで、異なる商品が生まれることを表現している。
デザイナーであり、ESTGADで教鞭をとるFernando Brizioは、空間の湿度を測定するInvisible Landscapeより、目に見えない現象を湿度量に応じて色が変化するタブローにした。
ユーモアといえば、やはりDaseinのJuicy Boobsであろう。誰でも家庭に1個はあるオレンジジューサーを1つの器に2個組合わせた。女性の胸を連想させるエッチな表現だが、ユーモアと機能が一致した商品といえる。
DaseinはTiago da Fonseca、Vasco Ferraz、Samuel Abecassis、Hugo Leaoの4名で構成されている。大学時代からの友人で、新鋭デザイナーとして今後の活動に注目していきたい。4人は、いつも街の馴染みのカフェでアイディアを討論するという。VOYAGER-03で出会った時も、わいわいと賑やかで、まだ若いことも理由であろうが、エリート的なプロフィールを拒否する姿勢が新鮮であった。「デザインは、色んな考えから生まれるので、たわいも無い話ばかりをしているんですよ。僕たち、散歩や登山大好きで、時間があればどこかに出かける。デザインは、山登りみたいなもの。だから、登山が好きなのか、デザインのために登山をしているのか。えっ?お前たちはどうなんだよ〜」と、こんな様子でデザインをしているDaseinは眩しい。

写真27
Juicy BoobsのデザイナーDasein(ダーザイン) 左から時計周りに、Tiago da Fonseca, Vasco Ferraz, Samuel Abecassis, Hugo Leão
写真28
VOYAGER-03でインタビューに応じてくれた時の様子

建築分野は、やはり模型という表現に限られてしまう。
昨今の重要な課題「リスボンの政治と都市計画」を取り上げて、街の中心に提案する駐車場ビルについて考えていた。

サウンドは文章で伝えにくい。作曲家Toze Ferreiraは、ポルトガルのエレクトロミュージックの先駆者でもあり、今回は1988年にヒットした作品を編曲している。視覚伝達サインや心理とアクスティックサウンドを研究していたバックグラウンドもあるため、聴覚と視覚の関係を掘り下げている。本プロジェクトのために結成したHouselabは、彫刻家、テキスタイルデザイナー、マルチメディアアーティストのメンバーで構成されている。トラック内には、体感キャビンが設けられた。

[*1] ESTGAD (Higher School of Technology,Management,Art and Design)
リスボンの北部約100キロメートルCaldas da Rainhaにある学校


最近、「デザイン」という名のもとに開催されるイベントが妙に目立つ。結局、デザインに無知な観衆も、この言葉に魅了されてしまうのであろう。われわれの生活を取り巻く大半のモノはデザインされたものだ。それとは対照的に、生活とかけ離れたユートピアの世界を想像させるのもデザインの領域である。無意識のうちに誰もがデザインと共存している。

EXDは、11月まで開催されるが、3000キロメートルの走行を果たしたVOYAGER-03が、デザインを社会と交信させるための道具である以上、今後の役割は大きく、その任務は終わっていないと思われる。


EXD公式サイト
http://www.experimentadesign.pt









コメルシオ広場に設置され、オープニングを迎えるVOYAGER-03

閣僚たちも真剣に鑑賞されていた

フェルトペンの芯を再利用したバッグ Just Beg デザイン Naulila Luis 提供ESTGAD

Silo Automóvel デザイン Patricia Chorão_Ramalho João Miranda

日没後も多くの観衆を魅了していた



B A C K 
  1  
  2  
  3  
 N E X T


JDNとは広告掲載について求人広告掲載お問合せ個人情報保護基本方針サイト利用規約サイトマップ
デザインのお仕事コンテスト情報 登竜門展覧会情報

Copyright(c)1997 JDN
このwebサイトの全ての内容について、一切の転載・改変を禁じます。