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日本では韓国ブームが続いているようだが、此処イタリアでは日本ブームがまだ静かに続いている。一過性のものでない根強い魅力が日本文化にはあり、それがイタリア人を魅了しているようだ。今回紹介するSURIMONO(スリモノ)というお店は、ミラノ市の中心にあるサンバビラ広場から続くCorso Monforte(モンフォルソ大通り)沿いに位置する。近くには高級ショッピングストリートであるモンテナポレオーネ通り、スピーガ通りなどがあり、同じ通りにはFlos(フロス)やAremide(アルテミデ)などの照明メーカーのショールームも並ぶ、整然とした街並みの地区である。
お店の中に足を踏み入れて目に入ってくるものは、南部鉄瓶、漆器、お香、書道の筆、着物に足袋など、馴染みのある日本のものばかりである。その他に中国の家具、ヴェトナム漆器、インドや中国のアクセサリーがセンスよく店内に並べられている。このお店のオーナーであるChiara (キアラ)さんは、小柄なセンスの良い女性。彼女の身に付けているものからは、いつも東洋の香りが感じられる。先日も彼女に会った際に身に付けていたものは、日本の男性の羽織を彼女がアレンジしたもの。袖の部分を少し細くして、ジャケット代わりに羽織っていた。彼女は大の日本びいき。日本の文化や美に興味があるだけではなく、彼女の審美眼もしっかりしている。ミラノにも幾つか日本の物を扱うお店があるが、日本もどきの製品を置くお店が多い中、彼女の選ぶものにはしっかりと筋が通っている。もちろん、そこに彼女のセンスが伺えるのである。
キアラさんが最初にこのお店を始めたのは、イタリアのフィレンツェ。彼女のお姑さんと一緒にお店を始めたそうだ。その後ミラノへと移店し、現在ギャラリーとして使用している場所に新しく店を構えた。段々と手狭に成ってきた為、ギャラリー近くのこの場所を見つけ、1999年に現在のお店へと移る。元お店のあった場所は、現在いろいろなデザイナーの作品を展示するギャラリーとして活用されている。
先日このギャラリーで、ローマ在住の日本人テキスタイルクリエーターKawai Mamiさんの展示会があり、ふと中を覗かせてもらった。日本デザインの魅力は日本にいるとあまり意識しないが、離れてみると改めてその凛としたデザインや日本の色の美しさに気づかされる。糸を染める段階から全て手作業で行っているという彼女の作品の中に、小ぶりのバックがあった。表生地はうぐいす色と玉虫色の落ち着いた配色。ひとたび口を開けると中から覗かせるのは、はっとするようなコントラストの生地。着物とその裏地のような洒落た生地の組み合わせである。使うほどに色の味わいが生まれるというその生地からは、日本の色を愛する彼女の愛情が感じられた。オーナーのキアラさんもとても気に入ったというそのバッグは、翌週行われた展示にも飾られていた。
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