ジャパンデザインネットのトップページ
レポート
ミラノサローネ特集 2009
 ジャパンデザインネット
 レポート
 ミラノサローネ特集2009

ミラノサローネ特集2009 トップページ > 室井淳司 レポート 出展者一覧 / バックナンバー

室井淳司 レポーター

室井淳司

Atsushi muroi
1975年広島県生まれ。東京理科大学理工学部建築学科卒業後、株式会社博報堂入社。空間デザイン部門にてCI/VI構築、空間のデザインマネジメント業務に従事後、ブランドエクスペリエンスの構築/デザインを行う社内組織を発足。現在同組織にて、企業ブランドのデザインコンサルティング、プロダクト/空間のデザインマネジメント、広告クリエイティブ全般のディレクションを行っている。

著書:「リアルヂカラ」 弘文堂より

室井淳司 ミラノサローネレポート



1 / 1
FIAM SHINTO
私は職業柄、ブランドのデザイン規定、デザインコンサルティング等を行っている為、このミラノサローネというイベントから見えるデザインとブランドの関係性について書いてみようと思う。

そもそもブランドにとってデザインは非常に重要な役割を持っている。それは、プロダクトメーカーに限らず、ホテルやエアラインと言ったサービス系のブランドも同様である。ブランドが持つデザインのトーン&マナーは、そのブランドのイメージを大きく左右するが、ブランドのイメージと言うのはデザインだけで成立している訳では無い。時には安心感や大胆さと言った、目に見えない情緒的イメージもブランドを構成する重要な要素だ。特に日系企業で大きくなればなるほど、ブランドイメージに「安心感」が重要な要素になってくるのは、そのブランドの主たるターゲットが日本人を相手にしているからである。日本人は何よりも安心である事を購入時の第一条件としている。それは今も昔も変わらないが、戦後の大量生産、大量消費の時代を終えて、今の日本人は、デザインを優先事項として持ってくる人も少なくない。日本で外国車が大きなシェアを誇っているのは、かつてはそれが豊かさの象徴であったからだったが、今ではそのデザイン性の高さを評価し購入に繋がるケースがそれを上回るケースも出て来ている。しかし、日本の消費者のデザインに対する意識は、世界のレベルとはまだ開きがある。今回のミラノサローネで見て取れる、日本人トップデザイナー達のレベルの高さにも関わらずである。

一方、イタリアは世界有数のデザイン先進国である。お洒落な国ランキングでも、フランスに次いで二位をキープしている。この二国、両方共お洒落イメージは強いが、デザインに関して言えば、私はイタリアが勝っていると思っている。フランスのブランドは、伝統に裏付けされた確かな技術と、その歴史が持つ華やかさにある。一方イタリアのブランドは、伝統的であるよりも革新的であり、情熱的である。つまり、時代にフィットしたデザインを常に生み出しているはイタリアでは無いかと思っている。それに裏付けされる様に、イタリア人は、デザインに対する関心が高く、デザインはイタリア人のDNAに深く入り込んでいる。それが、今回のミラノサローネでも見て取れる。
FORNASARIG SWA CELL outdoor habitat、Lounge Chair, Puff, Coffee table
前置きが長くなったが、ミラノサローネはミラノコレクション同様、ミラノ=デザイン先進都市というイメージを発信する為の重要な役割を担っている。またその役割の土台となっているのが、デザイナーでも世界中から集まるデザイン系プレスでもなく、ミラノ市民である。

ミラノサローネは、巨大な展示会場と市内の随所で行われるが、そこを埋め尽くすのは、デザイン関係者だけではなく、ミラノ市民だ。この期間、ミラノは一大お祭りムードになる。外国人が浮き足立っているのは当然だが、ミラノ市民も浮き足立っている。おじいちゃんも小さな子供も、様々な会場を訪れてデザインの話をしている。とにかく市民がデザインを愛していて、そして世界中のデザインが集まってくるミラノを愛し、誇りに思っている。強いブランドには条件がある。それは、社員が自らのブランドを愛しているかどうかだ。社員が自らのブランドを愛している会社は、そのブランドのアイデンティティが隅々まで行き渡り、それが消費者にも明確に伝わり、ブランドを魅了する。これと同様に、ミラノのブランドを作り上げているのは、何よりもミラノ市民の、ミラノを、デザインを愛する気持ちであり、消費者とも言える我々外国人は、それを肌で感じる事ができる。

これは、イベントで(コトで)、地域ブランディングを成功させている最も象徴的な例と言えるだろう。

1 / 1
PAGETOP



トップ ・ レポート | 出展者一覧 | バックナンバー |  お問い合わせ