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ミラノサローネ特集 2009
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ミラノサローネ特集2009 トップページ > TOKYO FIBER09 SENSEWARE レポート 出展者一覧 / バックナンバー

日本産業デザイン振興会 秋元淳 レポーター

日本産業デザイン振興会
秋元淳
期間:2009年4月22日(水)〜27日(月)
会場:トリエンナーレ美術館
Triennale di Milano Viale Alemagna,6
20121-Milano
展覧会ディレクター:原研哉

http://tokyofiber.com/

TOKYO FIBER09 SENSEWARE レポート



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2007年に東京で開催されて大きな反響を呼んだSENSEWARE展が、新たな趣向とともに今年のミラノ・サローネで展示を行った。今回出展された17種の作品も、それぞれ工業用途に使われることが多い「人工繊維」を素材としている。この繊維は通常の衣服やテキスタイル製品のそれと違い、工業的な機能を担うために化学的に組成されたものだ。私たちにとってそれらの繊維とは、素材自体が特別に意識されることが目的ではない。あくまでも素材として活用された最終的な製品を通じてのみ目に触れ、手に触れることが多い、生活の中では黒子の役割を担っている繊維ばかりである。
だが、実際に今日の生活のさまざまな場面を支えているこの黒子たちは、ひとたびその可能性に正面から向き合うと限りなくクリエイティブな一面を顕してくる。

WATER LOGO '09(アトリエオモヤ+日本デザインセンター 原デザイン研究所)
WATER LOGO '09(アトリエオモヤ+日本デザインセンター 原デザイン研究所)
FIBER BEING(鈴木康広)
FIBER BEING(鈴木康広)
CARBON FIBER CHAIR(坂 茂)
CARBON FIBER CHAIR(坂 茂)
SEED OF LOVE(ロス・ラブグローブ)
SEED OF LOVE(ロス・ラブグローブ) 
TO BE SOMEONE(ミントデザインズ)
TO BE SOMEONE(ミントデザインズ)
BLOWN-FABRIC(nendo)
BLOWN-FABRIC(nendo)
CON / FIBER(隈 研吾)
CON / FIBER(隈 研吾)
SMILING VEHICLE(日産自動車+日本デザインセンター 原デザイン研究所)
SMILING VEHICLE(日産自動車+日本デザインセンター 原デザイン研究所)
TIME OF MOSS(東 信)
TIME OF MOSS(東 信)
会場風景
会場風景


17の作品を手がけたのは、いずれもデザインや建築の最前線で活躍するクリエイターたちだ。時代の空気や社会の向かうベクトルに敏感な彼らは、各人のもっとも得意とする領域を起点に、それぞれに繊維の可能性を広げてみせた。彼らは人工の繊維を縦横無尽に編み、よじり、織る。

たとえそれがケミカルな成り立ちの人造物であっても、繊維であるがゆえに共通しているのは “軽さ”である。会場には、物質的・視覚的な重量感が少ないという繊維素材の持ち味を活かした展示作品が数多く見られた。クリエイターにとっては、「軽やかでありながら確固たる機能性を秘める」という人工繊維のある種アンビバレンツな特性が大いに魅力なのだろう。一見するとはかないほどのボリューム感しかないロス・ラブグローブによるバックパックなどに、そうした特徴がよく表れていた。その一方で、坂茂の椅子と青木淳の照明を仕込んだシェードという、いずれもカーボンファイバーを用いた2人の建築家による作品は硬質な印象で質量を感じさせる。浮遊感に包まれたような会場の中で、これら2作品は意外なまでに現実的に映った。

静的に向き合うだけでなく、来場者が思わず身を乗り出してしまうような動きを伴った作品が多かったことも効果的だった。東京での初回開催時に比べてよりスケールが拡大され、見る者の目を見開かせる新たな仕掛けが加えられた「WATER LOGO '09」が真っ先に来場者を迎え、そこから場内に足を踏み入れれば、あるものは繊細に、あるものはユーモラスに、作品と向き合う者のリアクションを自然に誘う。まるで自らの心臓の鼓動を目にしているかのような鈴木康広の「FIBER BEING」など、人為的に生み出された繊維がヒトの自然な動きをなぞるように脈打つさまは、深い部分で鑑賞者との会話を成立させるかのようで味わいぶかい。会場のそこかしこに驚きの表情や歓声が満ちていたのが印象的だった。

日本のもつ卓越した能力が、人工繊維という存在を媒介して洗練されたスタイルで伝えられる。 それだけでなく、SENSEWAREにはテクノロジー、エコロジー、ファンタジー・・・人びとが求め、いまの社会が必要としているあらゆる要素が確かに備わっていた。



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