西村:まず、ランドスケープデザインという仕事について改めてお聞きしたいんですが。
長谷川:ランドスケープという言葉やその役割自体がとても新しいものなんですが、ランドスケープアーキテクチャーと、ランドスケープ的な考え方というのは、完全にイコールではないな、と思うところがあります。
西村:完全にイコールではないというのは?
長谷川:ランドスケープ的な考え方というのは、関係性を扱っているんです。人も虫も木も人間も、あとは雨や風や、動いている全てのものを含めた世界があって、その中にいる人間が、その関係を使って何かをしようとしている。たとえば建築を作る場合に、建築そのものの形や、建築の中のプランニングに興味があるという人もいるけれど、その建築が置かれることによって、全体がどうなるか、というところに興味がある人もいると思うんです。
西村:造形ではなくて。
長谷川:ええ。それが建つことによって、その場で体験することに影響を与えてしまう。住宅なら、人がそこに住んだことによって、その場所に、それまでになかった体験をもたらす「きっかけ」を期待して建築がデザインされる。それはランドスケープ的かなと思うんです。僕らの中では、一つの建築も一本の桜の木も並列な存在なんですよね。たまたまその場に出くわすことになったいろいろな物たち、という意味で。
一方で、ランドスケープアーキテクチャーというのは形を作りこんでいく、土木や建築や地理、植物と言った知識を集めた専門であり、教育の一つであると思うんです。もちろん、ランドスケープ的な考え方を持った建築家はいるし、建築的なランドスケープもあるとは思うんですけどね。
西村:建築的というのは、割と造形志向が強いということですね。
長谷川:そうですね。動いている世界の中でどうするというよりは、そこに何か自分の見たいものを強烈にコントロールして作り込んでいくという感じ。
西村:そうか。今、動いている世界とおっしゃいましたね。ランドスケープ的な考え方では、関係性というのは生きて動いていくという前提なんですね。
長谷川:何かプロジェクトをやるとなった時、その対象となる場所には、もともと木が生えていて、川が流れていて、地形ができあがっている。それぞれが自立してキャラクターを持っている物たちが、群像劇を織りなしているというか。ランドスケープ的な考え方って、こうした既にある状況の中に参加するという感じなんです。
西村:新しい物が入ってくれば、関係性が動きだしますね。
長谷川:ええ。参加することによって、それぞれの関係がちょっと動く。僕は、その動く関係に興味があるんです。そういった関係性が、ランドスケープ的な考え方につながると思っているんですね。
西村:その関係は生きていて、動いていくという前提なんですか。
長谷川:そうですね。ランドスケープを二極化すると、大きな極には地球規模の、小さな極には坪庭や盆栽くらいのスケールがあります。盆栽の松は日々伸びてくる。毎日の手入れで、人はそれをコントロールし続けます。手入れをする人と松の関係がなければ、盆栽は作れない。でも松は、人が関わらなければ、もっと巨大になっている。そのせめぎ合いの結果が、あらゆる風景を作っているんです。
僕が言っている建築的というのは、どちらかというと、そのコントロールする方にものすごくウエイトを置いている。しかし、その規模が大きくなったとき、自分ではコントロールできないものが多くあります。その時、どう駒を進めるか。どう関係性を作るか、が重要です。
西村:それを考えるのが、ランドスケープデザイナーですね。
長谷川:そうです。たとえば、私たちが今いる立正大学熊谷キャンパスの40ヘクタールという規模を、坪庭や盆栽みたいに造り込むことはあり得ません。今そこにある状況に立って、どういうふうに参加していくのが、既にある物たちと一番良い関係が作れるかということを考えます。
また、クライアントとしては、何か新しいことをしたいという希望があるわけですよね。今までにできていなかった何事かをしたいから、我々に声がかかる。もちろん、既にある物たちがまだ存在しているので、新しい状況との関係をいかに調和させるのか。つまり、既にある物たちの魅力を、どこまでうまく使えるかが鍵となります。
1965年、米国デュポン社の研究・開発によって生まれたデュポン™ コーリアン®は、それまで木や金属、タイル、天然石などに限られていた、建築・インテリア分野の新しい素材として世界中で大きな反響を集めました。それから約40年、今では全世界130カ国の人々に愛され、なくてはならない素材として高い信頼をいただいています。
http://www.dupont-corian.net/
“CORIAN”、「コーリアン」は、米国デュポン社の登録商標です。