新旧桑沢デザイン研究所生鼎談
浅葉克己氏×高田唯氏×後藤圭介氏
2015/03/25 UPDATE
1954年の設立以来、多くのデザイナーやクリエイター、アーティストを輩出している桑沢デザイン研究所。ドイツのデザイン学校「バウハウス」のカリキュラムを軸に、他とは一線を画すデザインの教育を行ってきた。今回はその研究所を率いるデザイナーの浅葉克己所長を中心に、学校案内書のデザインを手がけた、高田唯氏(株式会社 ALL RIGHT)と後藤圭介氏(Helvetica Design co.,ltd)との新旧桑沢生対談を行っていただいた。
Vol.3デザイナーをめざす若い人たちへ
― デザイナーに必要な能力、また、学生時代に習得すべきことを教えてください。
浅葉 : やっぱり書くことが大事じゃない?日記を書くとかさ。浅葉ゼミでは日記は必須科目です。食事と風呂以外は三日三晩書き続ける書道合宿も継続して行っていますよ。
高田 : 継続することはとても大事だと思います。そして、面倒くさいと思うことをやることだと僕は思います。身体でデザインを覚えるというか。幸いにも桑沢は、浅葉先生の時代から変わらずに課題がみっちりあるので鍛えられると思います(笑)。今、僕は目に見えない部分をどうデザインするかに取り組んでいます。ポスターや広告など目に見える物も大事ですが、今後は情報を編集する力などが重要になる気がするんです。もちろん発見力や観察力も持っていることが前提。言葉や形や色、間など些細な点にも敏感に反応できる人でないとデザイナーになるのは難しいと思います。だから、好き嫌いは別にして、思考に柔軟さを持ってほしい。いろんな場所に身を置いて、たくさんのものを見て、あの人はこう言っていたけど私はどうかと考えられる視点も身につけて。流されること、思い込むことがデザイナーにとって最も怖いことですから、そうしたことに正面から対峙していくタフさも大事だと思います。
浅葉 : 人間は、情報量が最も多いから、面白い人にたくさん会うといいよね。文化活動の一環として、僕も参加している「エンジン01」などのオープンカレッジもそんな考えからやっていることだし。
後藤 : 僕はおふたりと違う視点でお話しますね。アルバイト時代もアシスタント時代も、仕事の始まりはトイレ掃除からでした。デザインはおしゃれさやカッコよさが注目されがちだけど、本来は日常に根ざしたものです。資料を見せる時に相手に向けて渡す動作もひとつのデザイン。どうすれば相手に伝わるか考えた上で行動するか?この意識で捉えれば、人はみんなデザイナーなんです。そう考えると、デザインはもっと面白くなるはずです。表層的な部分だけで続けるのは厳しい世界ですが、日常にあるデザインの面白さを積みあげていける人なら頑張っていけると思いますよ。デザイナーという職業から離れたとしても、生活を楽しめる手法としてデザインは生きているはずですしね。
高田 : デザイナーになりたい人が皆なれるといいんですけどね。でも考えてみれば、どんな人も生活をよくするためにデザインをしています。この単語は便利だから別の意味にされがちですが、実は特殊なことではないんですよね。生活全体がデザインだという着地点を学んだ若い世代が、今後それらをどう解釈していくかが楽しみですね。
浅葉 : そうそう、デザインって楽しいもんだからね。いろんな意味で「出てこい天才!」て感じかな。