篠山紀信の写真力 美術館を舞台にした新たな挑戦

篠山紀信の写真力
美術館を舞台にした新たな挑戦

2012/09/26 UPDATE

Vol.2選りすぐりの120点からにじみ出る「写真愛」

時代の映し鏡として注目されてきた篠山氏が、さまざまな手法、さまざまテーマをもって撮影した選りすぐりの120点。ここには写真力に秀でた作品、なかでも篠山氏が「写真の神様が舞い降りてくれた」と認めるものだけが勢揃いする。よって、さながら氏の全容を俯瞰できる回顧展とも捉えられそうだが、恐らくそれは見当違いになるだろうとアートディレクターの中島英樹氏は語る。

「これら120点はすべて篠山さんの断片に過ぎないし、回顧展ではないでしょう。とかく観る側は、作家を安易に解釈したがるものですが、篠山さんはこの点数にまで絞ることで、解釈されることを拒んでいるかのようにも映ります。」

三島由紀夫(1970年)
三島由紀夫(1970年)

とはいえ、篠山氏独自の撮影手法「シノラマ」(複数のカメラで同時にまたは時間差でシャッターを切るジョイント写真)はもとより、新しい撮影技術に前向きであった様子は、ここでも健在。

モノクロからカラーへ、手巻きからモータードライブへ、フィルムからデジタルへ。写真の技術は、進化のたびに批判と抵抗にさらされてきたが、篠山氏はこれら新たな波を正面から受け入れてきた。近年の例なら、デジタルカメラの一早い導入。巷ではフィルムで培ってきた経験値を生かせなくなる恐れから、デジタル化に抵抗する動きもあったが、氏の目は、常に未来へと向けられてきた。「篠山さんの場合は、保身よりも新しいものへの興味のほうが、何倍も勝っている。今回の展示でも大体10年単位くらいで、変化する様子がわかるはずです」

前進を宿命づけられたかのような活動ぶりは、新しいものに常にオープンな姿勢、そして写真を応援する気持ちがあってこそ。確固たる地位を築いた現在でも、そこに変わりはない。その根底にあるものは「写真に対する愛」だ。

「篠山さんは“写真愛の人”。すごく写真を愛している。“写真は芸術よりも大きなもの”と公言するのも、そのあらわれでしょう。写真を否定する言葉は、絶対に口にしませんしね」とここまで言葉を重ねても、なお「篠山さんを解釈し切ることはできない」と中島氏に結論づけさせる大きな存在。それが写真家、篠山紀信。この展覧会で、その底なしの魅力の一端に触れることができるだろう。

「篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE by KISHIN」で印刷物等のアートディレクターを務めた中島英樹氏
「篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE by KISHIN」で印刷物等のアートディレクターを務めた中島英樹氏

東京オペラシティ アートギャラリー

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巨大ポートレイトが放つ圧倒的なパワー

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巨大ポートレイトが放つ圧倒的なパワー

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写真力 VS 空間力

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