カシオ計算機開発本部デザインセンター
第四デザイン室長
井戸透記氏
カシオデザインを貫く4つのキーワード

カシオ計算機開発本部デザインセンター
第四デザイン室室長
井戸透記氏
── 井戸透記氏はデジタルカメラのデザイナー職を経て、カシオが携帯電話事業に参入した2000年から同デザインを担当、2001年同デザイン室室長に就任。メーカーとしては市場に加わったのが遅かったため、他との差別化を図るためにも必要だった存在意義をデザインに求め、指針となるキーワードを掲げている。
「当初からトレンドを意識した携帯電話をつくろうとは思っていませんでした。ライバルは多すぎるし(笑)、後発の我々が同じモノを作ってもしょうがない。
いくつかの機種を出すにつれて、カシオのファンも増え、その人たちが何を求めているのか? それに応えられるデザインとは何か? を考えました。そして指針として決めたのが次の4点です。
- オリジナリティ
独創性、独自性。これはまずデザインに不可欠な要素ですね。 - エモーショナル
携帯は人の身近にあるもので、冷たい存在のものではなく、情感を込めたものであるべきです。 - コンセプチュアル
何らかの企画なり、メーカーとして伝えたいメッセージを込めなければ意味がありません。 - エッセンシャル
本質的であること。携帯は道具ですから、使い勝手や機能的な面がおろそかになってはいけない。デザインは油断すると格好優先になりがちですが、意識すべきポイントです。

このキーワードがすべての機種に、それぞれバランスを変えながら、共通しています。リサーチをしてものをつくるという考え方もありますが、私たちはそうしていません。カシオ側で何を打ち出すかすべて決めてしまって、100人に1人が良いと言ってくれれば良いと思っているんです。この1%というのは携帯電話の市場では決して少なくない数。たった一人でも“これは絶対オレが買う”って求めてくれるものをつくろうと。最初は売れなくてもしょうがないという感覚もありましたね。幸いにして(笑)初号機から話題になって売れましたけれど」
CASIOのDNAを持った携帯電話として時代の脚光をあびた「G’z Oneシリーズ」は今も記憶に残るデザインだろう。そして「EXILIMケータイ」も現在なお進化を続けるシリーズだ。
「2005年7月に発売した「G’z One TYPE-R」は耐水、耐衝撃性が特徴で、男性をターゲットとした端末です。当初、事業計画にはなかったモデルでしたが、先行開発を続けた結果、デザインセンターの強い信念が形となりました。そういった面で思い出深い機種ですね。
2007年8月発売のカメラ付携帯電話「EXILIMシリーズ」はその名の通り、カシオのデジタルカメラEXILIMのデザインを受け継ぐモデルで、コンセプトは「ウェアラブル」「スタイリッシュ」。私がEXILIMの初期デザインをコンセプトから手がけていたこともあり、携帯電話への展開もスムーズに進んだデザインです。両シリーズ共に、CASIOのDNAを求めているコアなファンに受け入れられたことを、顧客満足度の高さが物語っていると自負しています。
G’z OneだったりEXILIMだったり、端末によって少しずつ違いますが、デザイナー同士が話し合ってそれぞれのイメージをかためています。目的は満足度の高いものをつくること、そしてできればユーザーが機種変更するときにまた同じ機種を選んでもらえるような、ロイヤルカスタマーを増やしたいという思いですね。満足度を高めた部分が予想以上に評価を得て、結果的に数につながるのは嬉しいことです」