この連載もようやく最後です。
イントロとして前回に続き、東京のデザインウィークを考えてみましょう。
世界的に見れば、家具を中心としたインテリアや空間、そしてデザインを切り口としたブランディングの場としては、やはりミラノが中心ということになるのでしょう。4月のミラノ国際家具見本市(ミラノサローネ)の時期には、ミラノ市内で実に様々な、そしてものすごい数のデザインイベント、展示が開催され、世界中からバイヤー、ジャーナリスト、デザイナー、業界関係者が集まります。あの集中具合や熱気が、今の東京のデザインウィークにあるかと言えば、ありません。
今回、来日していた海外のデザイナーは、ジャスパー・モリソンさん、コンスタンチン・グルチッチさん、パオラ・ナヴォーネさん、ビッグゲームの3人、トム・ディクソンさん等。ジャーナリストではdesignboom編集長のバーギット・ローマンさん、サローネ・サテリテの創始者でありキュレーターであるマルヴァ・グリフィン・ウィルシャーさんともお会いできました。
こうして名前をあげますと、様々なキーマンがいらっしゃていたことが分かるのですが、その規模はミラノとは比較になりません。また、東京のデザインウィークには産業見本市がなく、BtoBの受注を直接に目指しているイベントは一部だと思いますので、個人的な印象の域を出ないのですけれども、バイヤーは、特に海外からのバイヤーの来日は少ないのではないかと推測します。

ショップTom Dixonにて、デザインウィークに来日し英国大使館でトークを行うなど飛び回っていたトム・ディクソンさん
東京は東京のあり方がありますので、別にミラノみたいになる必要もないと思います。ただ、東京が目指すもの、東京のあり方、さらには日本がクリエイティブやデザインを活用してどうなっていこうと考えているのか、といった根本が希薄な気はします。成熟した経済においては、特別にデザインを活性化のエンジンに据える必要もないのかもしれませんが、その割には普通の経済活動にデザインが組み込まれている割合が、日本はまだまだ低いのではないでしょうか。
そんな思いを心に、以下を回りました〜。
・SHOWCASE“stands”
・how studio 2015/清水久和氏(S&O DESIGN)
・SOMEWHERE TOKYO Objects come from the earth – 大地からのオブジェ
・Tom Dixon
SHOWCASE“stands”
会期:11月3日まで
会場:表参道ヒルズ スペース オー
3回目となるSHOWCASE。毎回、見事にその姿を変えます。今回は、個性豊かな12組の日本人の作家とデザイナーによる展示を見せました。1回目の会場は渋谷の並木橋、2回目は代官山。今回は今までで一番メジャーな会場なのですが、もしかするとコンテンツは一番実験的だったのでは、と思います。

SHOWCASE“stands”にて、熊谷幸治さんの「八百万」

SHOWCASE“stands”にて、福井利佐さんの「LIFE-SIZED」

SHOWCASE“stands”にて、長岡勉さんの「Scale 1:1-100,Up Down Left Right」

SHOWCASE“stands”にて、増田敏也さんの「Low pixel CG」

SHOWCASE“stands”にて、青田真也さんの「untitled」
how studio 2015/清水久和氏(S&O DESIGN)
会期:11月3日まで
会場:S&O DESIGN
代官山T-SITEの角田陽太さんに始まり、この日でhow studio参加の5事務所をコンプリート。同時期にAXISで「愛のコンティニュアスデザイン展」も開催中の清水さんの事務所です。よくぞ集めましたね、という「愛のバッドデザイン」の数々が整然と並んでいます。愛のバッドデザインとは、普段の暮らしの中にあって特別に注目されることもグッドデザインと呼ばれることもないけれど、愛おしいものたちのことで、清水さんの命名です。

how studio 2015/S&O DESIGNにて

how studio 2015/S&O DESIGNにて
Objects come from the earth – 大地からのオブジェ
会期:11月8日まで
会場:SOMEWHERE TOKYO
昨年は様々な照明を集めた展示でしたが、今年は自然物にフォーカスをあてた作品を集めていました。デザイン界のトレンドの一つである自然志向、クラフト志向に対しての、ギャラリーSOMEWHERE TOKYOとしての考え方の表明とのこと。

SOMEWHERE TOKYOにて、藁作家ARKO(アーコ)による、藁を用いたウォールデコレーション「Untitled」

SOMEWHERE TOKYOにて、彫刻家・西村浩幸さんによる、間伐や道路造成などにより伐採された木だけを使い削りだして作られた、使える彫刻

SOMEWHERE TOKYOにて、映画や映像のカメラマンとしてキャリアを始めた井上隆夫さんによるアクリル作品

SOMEWHERE TOKYOにて、デザイナー寺山紀彦さんによる木の枝をもちいたモビール
最終回はちょっとマニアックだったかも知れませんね。きれい、かっこいい、面白い、かわいい、心が落ち着く、衝撃を受ける等、見る人の気持ちを変えることも機能の一つであり、デザインが持つ大きな力の一つなんだろうと思います。この凝縮された期間に様々な展示を見て、経済的な価値やニュース的な価値といった見方と共に、自分が何に魅力を感じているのか、何を面白いと思うのかという根源を見直すことができました。皆さんはいかがでしたでしょうか?
以上、2015年のデザインウィークでした!
