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■ 奇妙なオブジェ“針と糸と結び目”

ここのところ、体を優しく包み込む日差しに変わってきたミラノからのレポートです。
冬のミラノは空の色もグレーで全体的に重い感じで寒く、建物なども石造のせいか、街全体が重々しい雰囲気なのですが、ある日突然のように空が青くなり、木の芽が息吹き花が咲く、春がやってきます。
そんなミラノに数年前に建てられたモニュメントがあります。ミラノに来た方で見た人もいるでしょう、カドルナ広場(Piazza Cadorna)のモニュメントです。
このモニュメントのあるカドルナ広場という所は、通勤通学などの交通機関が重なり合っていて、地下鉄が2本、私鉄の駅、トラムにバスと、主要交通機関が集中する要所です。またここの私鉄は、マルペンサ空港からの直通列車も到着し、ミラノの玄関口にもなっています。
そんな、ミラノの中でも多くの人の目にふれる所に、高さは19メートルのこの奇妙なアートはあります。
このアートは、スウェーデン人のアーティスト、Oldenburg氏とその妻、Van bruggen氏の作品で、2000年の1月に建てられました。作品名は“The needle the thread and the knot”、イタリア語で“Ago tilo e nodo”といい、直訳すると“針と糸と結び目”という意味です。
Oldenburg氏とVan bruggen氏は現在アメリカに在住していて、1970年代よりPOPアート界で活躍していた作家です。この“針と糸と結び目”は、巨大な鋼の針が地面からアスファルトを突き破り地上に現れてきたようにも見える、創造性豊かな作品です。
彼らは、このモニュメントのイメージは“同時代性とアンティークを結びつけること”と言っており、また、“これはミラノの新しい象徴だ”とも話しています。これは、ミラノという街が新しいものと古いものの両面をもち、さらに、いつも時代の流れの中心にいることを物語っています。
同時に、針は剣をイメージし、糸はビスコンティー家の紋をを表しており、この両者を足すことは、ミラノの紋章にたとえられる、とも話しています。ちなみにミラノの紋章は、自動車メーカーのアルファロメオのマークの絵柄を左右逆にしたものです(アルファロメオはミラノが発祥の地です)。
さらに言えば、“針と糸”というモチーフは、ファッションの街ミラノも例えているとも言えるでしょう。
このミラノの新しい象徴については、建てられた2000年当時には、私の耳に賛否両論が入ってきました。「あまりにも奇抜なためミラノのイメージを崩す」「ミラノを良く知らなければ意味が分からない」「カラフルで新しくて良い」など、様々でした。
しかし現在、建てられてから2年経ち、このモニュメントは多くの人にその姿をアピールし続けています。ちなみに、2001年末にはミラノの中央駅前に新しいモニュメントが完成したのですが、不評のため別の場所に移されることになり、早々に移動工事が始まってしまった、という例もありました。
何はともあれ、この不思議なモニュメント、春の心地よい光の中で通勤通学の人々を見守っています。
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カドルナ広場横の通り。美しい緑の先にモニュメントがあります。
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広場にある屋根付き通路。
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駅の出口から広場の方を見るとこのような感じ。
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これがモニュメント、“結び目”の部分です。
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結び目と針。このアングルからだと針だとよく分かります。

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