インタビュー 編集部が注目するデザイナー・クリエイターのアイデアと実践に迫る

スマホ時代の新しい写真体験を創る、オープンプラットフォームカメラ「OLYMPUS AIR」(3)

スマホ時代の新しい写真体験を創る、
オープンプラットフォームカメラ「OLYMPUS AIR」

2015/09/02

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みんなに親しみやすいカメラ、みんなで創る写真体験を目指して

ここからは、去る8月4日に六本木ヒルズで行われた、テクノロジー体験型の子どものためのワークショップイベント「MIRAI SUMMER CAMP」の一環として開催された、OPC Hack & Make Projectによる「自分だけのカメラを作ろう!」と題したワークショップのレポートを交えてお伝えしたい。

2時間のワークショップに参加したのは小学4~6年生の29名、前半は「DIY CAMERA KIT for OLYMPUS AIR」の組み立て(CANVAS STYLEかINSTANT CAMERA STYLE)、シールやテープを貼ってデコレーションをして、ポスカで塗ったり、自由にデザイン。後半は森美術館の展示「ディン・Q・レ展:明日への記憶」や展望台で、自分がつくったカメラで撮影をした。

最初は組み立てやデザインに苦戦する子どももいたが、全面をテープで装飾したり、細かい模様を一生懸命描いたり、それぞれ思い思いのカメラがデザインされた。

「自分だけのカメラを作ろう!」ワークショップの様子 (2)
「自分だけのカメラを作ろう!」ワークショップの様子 (3)

撮影時間になると子どもたちが自由度を発揮する、当日森美術館で開催されていた「ディン・Q・レ展:明日への記憶」はポリティカルなメッセージが込められた展示だが、純粋にきれいだと思う色や、おもしろいと思う形に反応して撮影をしていた。そして、ふだんのスマホとは異なる角度でファインダーをのぞきこむことができるため、より身体に密接したというか、身体を使って被写体にアプローチしているような印象を受けた。自分だけのカメラで多くの子どもが撮影を楽しんでいると感じた。

ワークショップ終了後、今回の「自分だけのカメラを作ろう!」を開催した狙いと感想について伺った。

スズキ:お子さんとワークショップをするときの秘訣は、構造を最低限にしておくことですね。そのうえでカスタマイズ、自分がつくったといえる感覚を持てることが必要だと思っています。このワークショップでは、段ボールの展開図から自分だけのカメラをつくるので十分楽しいものになったと思います。カメラってすごく精密なもので、お子さんはなかなか持たせてもらえないないじゃないですか。自分でデザインしたカメラで、写真を撮れるというのはおもしろいことだと思いますね。

「自分だけのカメラを作ろう!」ワークショップの様子 (4)

お子さんがすごい興味を持ってくれたのでそれは良かったなと。やっぱりこういうワークショップは、手を動かすと集中しはじめますよね。最初はあくびしてるお子さんもいましたけど(笑)。限られた範囲だからアイデアが出てくるんですよね、最初のプロジェクトのアイデアとしては、もっと使い方を考えるようなものを考えていたんですけど、それはまたちょっと高度なので、将来的にそんなことができたら良いなと。

プリミティブなものに触れると、それだけ試しようがあると思います。いつもそういう風に考えてデザインしています。ほかにも色々とプロポーザーがあったんですけど、この無骨で大きい感じが良いですよね。この感じが「いま」良い。これまでのスマホでの撮影では体験したことがなかった大きさというか。なにかで構造をつくって、それをデジタルで動かすというのは、要素としておもしろいし、色々な広がりがあると思います。

「自分だけのカメラを作ろう!」ワークショップの様子 (6)

石井:不慣れな部分もあったけれど、子どもたちの笑顔を見て成功したかなと感じています。子どもたちが考えて写真を撮っているのがすごい伝わってきました。自分でつくったりする楽しさや、カメラで写真を撮る楽しさが、きょう体験してもらって伝わればなと思いました。ただ、ちょっと時間が短かったかなと思います。本当は「OTOTO」にも繋いで、サイエンス的な実験とかもやりたかったんですけど、そこまでは2時間では難しいので、きっかけづくりという感じですね。

現在、「OLYMPUS AIR」は家電量販店などでは販売されておらず、オリンパスのオンラインショップでのみ購入できる。石井氏は「まだまだ一般には認知されていない、これから知名度広げていくところ」としながらも、インターネット上でのユーザーからの反響は概ね上々だという。今後、「OLYMPUS AIR」が何を目指していくのか、そしてどのように成長していくのだろうか?

「OLYMPUS AIR」

石井:このカメラ自体コマーシャルも打っていないですし、家電量販店にも置いていません。いまはとにかくこのカメラをもっと知っていただく、そのためにアイデアソンであったり、子どものためのワークショップであったり、そういったイベントをしかけています。そのなかで、こんなアプリケーションができたらいいとか、こんなアクセサリがあったら欲しいとか、アイデアはいっぱいいただくので、それをどのように第二弾第三弾と展開していくかだと思っています。

最近はカメラを買わない、スマホしか持たないという人たちが多い。スマホでしか写真を撮らない人たちに、スマホ+「OLYMPUS AIR」を持ち歩いてもらって、ちゃんと高画質で撮った写真の良さも知ってもらいたい。あと、やはりオープンにすることで、本当に事業価値が生まれるのかどうか?というところまでやり切りたい。収益がきちんと成り立つのか、そういったところを検証していきたいと思っています。それをしないと、せっかくデベロッパーの人がファンになって、新しいアプリをつくってくれても、すぐに一過性のお祭りで終わってしまいますので。

企業が自社製品の技術やサービスをオープンにし、エンジニアやユーザーのアイデアで共創するというのは今後も増える傾向にあるだろう。それは単なる大衆迎合ではなく、本当に必要なものや、新しい体験を生むものであれば、大いに歓迎すべき傾向だと思う。今後、「OLYMPUS AIR」がどのような発展をしていくか期待したいし、自分でも何か新しいアプリを開発したいと思う人にとっては興味深い“素材”になるのではないだろうか。

撮影:真鍋奈央