ASIA AWARDS 若手クリエイターへ問う、「MY AVANT-GARDE」

ASIA AWARDS
若手クリエイターへ問う、「MY AVANT-GARDE」

2014/07/16 UPDATE

Vol.2無我夢中で自分を全開にする

藤本
藤本:卒業後はどうしたらいいのかわからず、半ばドロップアウト気味だったんです。でも、建築の仕事は向いてるな、と感じていました

藤本氏は大学卒業後、就職するわけでも、建築事務所に所属するわけでもなく、コンペへの応募を繰り返す日々を続けていたという。学生時代はそこそこ評価を得ることが多くそれなりに自信はあったそうだが、現実世界はそうそう優しくはなく、なかなかコンペで勝つことができない。アイディアはどんどん溜まっていくが、それを実現することのできる環境がなかなか整わなかった。注目されるようになったのは、10年ほど挑み続けたころ。毎年応募しているコンペで伊東豊雄氏が藤本氏の存在に着目し、建築誌で紹介したのだ。するとだんだん講演会やレクチャーなどに呼ばれる機会が増え、ようやく周囲から「建築で面白いことをやっているやつがいる」というふうに注目されるようになる。そこからは駆け足で今の状況になったと振り返る。

佐藤氏は、大貫卓也氏に憧れて博報堂に入社するも、大貫氏のようなトップクラスの仕事ができるのは、社内でもごくごく限られた人間だけだという事実に直面。最初にもらった仕事は家電メーカーの新聞広告で、憧れと現実の差に驚愕したという。

佐藤
佐藤:意見が割れるようなものが、本当は一番いいのかもしれないですね

現実にひとり焦った佐藤氏は、自分の求める魅力的な表現を実現させるべく、社内で積極的にアピールをし、入社一年後ながらアートディレクターの仕事を任される。今でこそマックやイラストレーターはデザイナーの必須アイテムだが、当時それらに関心のある人が周囲になく、佐藤氏は英語版の説明書を読み込み、独学で技術を習得していった。フロッピーディスクでのデータ入稿を導入したのも佐藤氏が初めてだったようで、まわりの人間は目を点にしていたという。

自分の理想図と、置かれている現状は誰しも少なからず違う。その隙間を埋めるべく、自らの表現を徹底して続けること。時間も手間もかかるが、それこそが唯一無二の表現で世界を驚かせることのできるクリエイターの正攻法なのかもしれない。

たゆまぬ表現への希求により、各々のフィールドで活躍している審査員の方々が「ASIA AWARDS」応募作に求めることとはなんなのだろうか。

各氏から共通して挙がったのは、「とにかく人を驚かせるような、誰も想像しなかった表現」を期待している、ということだった。30歳以下という年齢制限が設けられたコンペティションに応募するからには、「若さ」を活かした表現をしてほしいという思いがあるのだ。自分を全開にして、無我夢中で己を突き通した表現をすることが求められるようだ。ただ、社会を意識し過ぎた問題解決型の作品や、あまりにも自己完結している作品は遠慮するとのこと。
またアート部門ではなく、なぜデザイン部門に挑戦するのか、アートとデザイン境界線を自分の中できちんと意識することも大切だという。
もし、選ばれるための邪な戦略を立てたとして、それは今回の審査委員にはたやすく見抜かれてしまうだろう。

座談会で「MY AVANT-GARDE」というテーマについて直接語られることはなく、解釈は応募者本人に委ねられることとなった。
これからの時代を築く気概を持ち、一人のクリエイターとして、「表現することってなんだろう?」と自分自身を問い直すことが、答えの糸口になるのかもしれない。審査員の面々がそろって時代を先導する表現者であるからこそ、「表現すること」に対する目は厳しく、応募作品に求めるクオリティーの水準が高いのは間違いない。各氏からは、一人のクリエイターとして、責任をもって次世代をつくる若手を見出す覚悟と期待がひしひしと感じられた。

今年はどんな作品が審査員の目に留まり、輝かしいグランプリの座を獲得するのだろうか。未来の時代を築いていくような若手が輩出されるのか、非常に注目されるところだ。もちろん、30歳以下の読者にとっては新たなチャンスであることは言うまでもない。

ASIA AWARDS デザイン部門 審査委員

佐藤可士和(アートディレクター/クリエイティブディレクター)【審査委員長】

博報堂を経て「SAMURAI」設立。 主な仕事に国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロのブランドクリエイティブディレクションなど。慶應義塾大学特別招聘教授。著書「佐藤可士和の超整理術」ほか。

田川欣哉(takram design engineering 代表)

デザイン・エンジニアリングという新しい手法で、ソフトウェアからハードウェアまで幅広い製品のデザインと設計を手掛ける。 主なプロジェクトに、トヨタ自動車「NS4」 、NTTドコモ「ドコモメール」、無印良品「MUJI NOTEBOOK」などのUI設計・デザインなどがある。グッドデザインアワード、コクヨデザインアワード、 ダイソンデザインアワードなどの審査員を歴任。2007年Microsoft Innovation Award 最優秀賞、独red dot award: product design 2009など受賞多数。障害者のための日本語入力キーボード「tagtype」は ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵作品に選定された。 1999年東京大学工学部卒業。2001年英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アー ト修士課程修了。

中村勇吾(ウェブデザイナー/インターフェースデザイナー/映像ディレクター)

ウェブデザイナー/インターフェースデザイナー/映像ディレクター。ウェブサイトや映像のアートディレクション/デザイン/プログラミングの分野で横断/縦断的に活動を続けている。

藤本壮介(建築家)

1971年北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。2000年藤本壮介建築設計事務所を設立。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞受賞。2013年ロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオンを設計。主な作品は、House N(2008年)、武蔵野美術大学図書館(2010年)、House NA(2011年)他。

森田恭通(GLAMOROUS co., ltd/デザイナー)

1967年大阪生まれ。国内外へ活躍の場を広げ、インテリアに限らずグラフィックやプロダクトといった幅広い創作活動を行なう。2013年に物件集「GLAMOROUS PHILOSOPHY NO.1」がパルコ出版より発売。

TOKYO DESIGNERS WEEK 2014 ヤングクリエイター部門

TOKYO DESIGNERS WEEK 2014
ASIA AWARDS ヤングクリエイター部門

エントリー締切:7月31日(木)
対象:30歳までのクリエイターまたは学生
出展費:無料

http://www.tdwa.com/2014/join/asia_awards.html

TOKYO DESIGNERS WEEK 2014 ASIA AWARDS

INDEX

受け継がれるニーシングセッティング技術

VOL.1

自らの表現で新しいジャンルを開拓する

無我夢中で自分を全開にする

VOL.2

無我夢中で自分を全開にする

お問い合わせ

デザインアソシエーションNPO

http://tdwa.com/