Niessing日本上陸30周年記念 スペシャルインタビュー ニーシングジュエリーをめぐる 4組のクリエイティブなストーリー

Niessing日本上陸30周年記念 スペシャルインタビュー
ニーシングジュエリーをめぐる
4組のクリエイティブなストーリー

2014/07/02 UPDATE

バウハウスのフィロソフィーに基づき、Niessingが生み出してきたプロダクトデザインの傑作達。建築家やグラフィックデザイナーなど、他分野で活躍するクリエイター達の目に、Niessingのジュエリーはどう映っているのだろうか。今回、4組のクリエイティブに携わる方々にNiessingへの想いを聞いた。

Vol.1建築家・中山英之 × Graffiti

インスタレーション「グラフィティリング by 建築家・中山英之」
Niessing青山店リニューアル(移転)イベントとして、2013年秋のデザインウィーク期間に開催されたインスタレーション「グラフィティリング by 建築家・中山英之」

リングの表面に絵や文字を施すことができるNiessingのジュエリー「Graffiti(グラフィティ)」。昨年、建築家・中山英之氏による2種類のスケッチが描かれたコラボレーションリングがお披露目され、多くの人々の興味を引いた。手書きのスケッチから建築を作る中山氏が、リングの中にスケッチで広がる世界を表現した、建築とジュエリーの異色プロジェクト。その経緯やコンセプトを伺いながら改めて中山氏のマインドに迫ってみたい。

― コラボレーション以前は、Niessingに対してどんな印象を持っていましたか

中山:出会いは20年ほど遡った大学時代です。当時の僕はジュエリーにまったく興味を持っていなかったのですが、ある日妹が、Niessingが掲載されている雑誌か何かを持ってきて見せてくれたんです。「このリングって、構造力学を用いて作られているらしいよ」という言葉を聞いた途端、俄然興味が湧いてきました。ドイツ生まれと知ったらなおさらですね。バウハウスでは、建築はあらゆるデザインが集約されるものとして位置づけられています。Niessingとの出会いによって、ジュエリーもそこに繋がるんだという発見ができました。

― コラボレーションリングには、どんなコンセプトが込められているのでしょうか

建築家・中山英之氏
初めてジュエリーデザインに取り組んだ、建築家・中山英之氏

中山:Niessingといえば、テンションだけでダイヤモンドをセットする構造の特異性に惹かれていたので、その延長でイメージを膨らませていたんです。だから表面に絵を描くグラフィティリングを題材に打診されたとき、対極的過ぎて一瞬戸惑いました。建築家としての興味は、リングの構造そのものにありましたから。確かに僕は設計の過程で、ラフな手書きのスケッチを大量に描くのですが、それはあくまでコミュニケーションの手段でした。表現そのものであるとは思っていなかったんです。

― その葛藤を、どう解消されていったのですか

中山:このお話を頂いた後、Niessingのチーフデザイナーをしているティモ・クシュラーさんとお会いする機会があったんです。それまで、Niessingはラボで白衣を着た研究者のような人達が設計しているイメージがあったんですが、ティモさんのお話を聞いていると、とてもアットホームな環境で、常に人と人とのつながりが密接な中で作られているのがわかりました。それまで相反すると思っていたものが繋がっていたんですよね。そんな時、思い出したのがパウル・クレーです。バウハウスでも教鞭を執っていた彼の作品は、一見感覚的に見えて実は綿密な構成理論が含まれています。彼の理論を思い出した時、同じようにはじめは相反すると思っていたグラフィティリングと建築にも、繋がりがみえてくるような気がしました。

森と水を連想させるふたつのリング
グラフィティリング
中山氏がスケッチを施した二つのグラフィティリング
左)Rings on Rings 右)Tree on Metal

― 具体的には、どんな所にその理論を見ることができるのでしょうか

中山:一見、大きさの異なる円を気まぐれに描いただけのようにも見える「Rings on Rings」は、指の上でくるくる回すと、泡がはじけているような風景があらわれるように、密度や大きさを計算しています。「Tree on Metal」でも、今度はただの直線が間隔を変えて描かれているだけなのですが、やはり回すと森の中をさまよい歩くような感覚になります。どちらも、全体をいっぺんに見ることのできないリングと、それ自体に意味を持たない円や直線の関係についてじっくり考えて、一瞬で描きました。

― コラボレーションリングのお披露目イベントでは、建築模型を用いたインスタレーションも展開されていましたね

中山:ふだん作っている模型にリングの置かれた風景を、ぜひ見てみたいなと思ったんです。何かを作り出す時には、ある程度形が見えてきた時点で一度違う角度から再考察してみることは重要なことです。そんな時、僕たちはよくスケール感を疑ってみることをします。例えば、マイクロバスとリムジンって、実際のサイズではマイクロバスの方が大きいのに、リムジンの方が圧倒感を感じますよね。実数値ではなく社会化された意味によって、イメージは変わってくるんです。模型の中にスケール感が異なるものを置いてみると、大きさの感覚が揺さぶられて、今までと違う側面が見えてきます。そんなことを考えながら、ショップの皆さんと一緒にリングを選ぶのは、とても楽しかったです。

インスタレーション
建築模型「小さすぎるビル」と、The Niessing Ringを組み合わせたインスタレーション
「草原の大きな扉」の建築模型
スケール感の違いを感じさせる「草原の大きな扉」の建築模型をニーシングジュエリーとともに展示

― 最後に、今回のコラボレーションを経ての感想をお願いします

中山:ものづくりの面でもフィロソフィーの面でも、Niessingに対してとてもシンパシーを感じることが多かったと思います。コラボレーションが決まった時に妹から冗談ぽく「運命かもね」と言われましたが、結果、僕自身もそう思っているほどですから(笑)。

中山英之 氏

中山英之/Nakayama Hideyuki

1972年福岡生まれ。東京芸術大学建築学科大学院修了後、伊藤豊雄建築設計事務所を経て中山英之建築設計事務所を設立。独立年に手掛けた住宅「2004」で、SDレビュー2004鹿島賞、第23回吉岡賞を受賞。今、世界が注目する日本の若手建築家のひとり。

NIESSING

INDEX

建築家・中山英之 × Graffiti

VOL.1

建築家・中山英之 × Graffiti

グラフィックデザイナー・おおうち おさむ × Fontana

VOL.2

グラフィックデザイナー・おおうち おさむ × Fontana

プロダクトデザイナー・森澤有人×Aura

VOL.3

プロダクトデザイナー・森澤有人×Aura

デザイナー グエナエル・ニコラ&宮元玲子×The Niessing Ring

VOL.4

デザイナー グエナエル・ニコラ&宮元玲子×The Niessing Ring