WEBマガジン「BRUSH-STROKE」スペシャルコラボ企画 渡邉良重、植原亮輔(KIGIキギ/アートディレクター)

WEBマガジン「BRUSH-STROKE」スペシャルコラボ企画
渡邉良重、植原亮輔(KIGIキギ/アートディレクター)

2012/11/29 UPDATE

Vol.2人の力を借りれば、悩みはなくなる

タイプが違う二人だからこそ生み出せる作品がある

渡邉:当初は植原とは別々に独立するとか、仕事場だけシェアする、といった話もあったんです。だけど、一緒にやってきた仕事も多いし、やっぱりお互いに意見を聞きあえる人がそばにいたほうが楽だし、そのほうが仕事は速い。

植原:そうそう。僕にとって渡邉は、しっかりと僕を映し出してくれるクリアな鏡。迷ったときに何かを尋ねると、常に安定した答えを返してくれる。しかも渡邉は感情の波が少ないから、忙しいときでも尋ねやすい。

「常に課題を見つけて解決し続けたい欲求があります」
「常に課題を見つけて解決し続けたい欲求があります」

渡邉:私もよく宮田さんに相談相手になってもらっていたけれど、忙しい宮田さんの代わりとなってくれたのが植原。そんな存在を必要としているものの、私たちってタイプは結構違うんですよね。

植原:僕の場合は、デザインする上でのアイデアやストーリー作り、骨格作りに貢献できた時点でまずひとつの満足がある。代わりに、表現自体にはあまり執着がない。これを「木」に例えると、アイデアや骨格は「幹」。対する表現は「枝」の先になる果実。「幹」から3つに「枝」分かれした先に、リンゴ、バナナ、ミカンがなっていても、そのいずれかの範囲に収まれば僕の場合はOK。まあ、現実にはそんな木は存在しないけど(笑)、これは表現の振れ幅がそれくらいあっても気にならないという意味です。一方、渡邉が表現を手がけると全部リンゴになる。渡邉は根が表現者で、特有の世界観があるから。

キギだけに、クリエイティブを「木」に例えたイラストで説明
キギだけに、クリエイティブを「木」に例えたイラストで説明

渡邉:自分だけで手がけるとそういう傾向はあるけれど、ミカンやバナナが嫌なわけではないんです。自分の絵で表現すると、どうしてもリンゴになりがちなだけ。もっと時間があれば、それ以外の表現だってやりたいもの。ただ、植原と違うのは、私はどちらかというと表現自体を手がけるほうが好きで、「幹」は任せてもいいという思いがある。

背伸びをしすぎず、現実に向き合うことが大切

渡邉:私には「継続する」という目標もあって、そのためには無理をし過ぎないことも大事。背伸びしてばかりいると辛くなるでしょう? だから、今の自分以上のふりはしない。そのほうが精神的にもいい。以前、植原に「水で満たすべきビーカー(=目先の目標)が小さいから良かったんじゃない?」「少しずつビーカーのサイズを大きくしていっているよね」と言われたことがあるけれど、その通りだと思う。水で一杯になるまでが早いから「自分はこんなはずじゃない」という葛藤をあまり感じず、いつもおだやかな気持ちを保てた。

「無理をしすぎず継続することが目標です」
「無理をしすぎず継続することが目標です」

植原:僕の場合は、常に自分のなかに課題を抱えていて、それを解決し続けたいという欲求がある。それが続く限りはやめられない。とはいえ本格的に悩んだことってほとんどない気がするのですが。そもそも不安って想像から生まれるものですよね。そしてすごく大きな魔物だと錯覚するけれど、本当に立ち向かうべきは現実の問題。迷ったら、とにかく目の前の敵(=仕事、課題)に立ち向かうべき。そうしていれば不安なんて感じなくなる。目の前の敵が、刀を振りかざしてきたら、こっちも無我夢中で切るしかない。切って切って、切って切って、を続けているうちに気がついたら目の前は大将ですよ。自分で想像したものに滅入っているくらいなら、現実に向き合い続けているほうがずっといい。

渡邉:私の場合、悩んだりひらめかないときは、すぐ人に相談するかな。

植原:僕もそうですね。でも悩み込んで人に聞くことすらできない人もいますよね。それは自らを鏡に映すことが怖い状態。そこは臆病にならず、映してしまえばいいと思うんです。自分の足だけで立つべきと強がっていると悩んでしまうけど、利用できるものは上手に利用して、上手に生きていけばいい。困難に直面しても「立ち向かうしかない!」の気持ちを胸に、自分をさらけだして、人に相談しながら解決していけば、悩み込むことなく創り続けられるはずですからね。

ペンタブレット
スタッフ全員が一台ずつペンタブレットを所有し、マウスを使わなくなったという
息の合った様子のふたり
終始にこやかに、息の合った様子のふたり。植原氏がドラフトに入社して以来のつきあいだ

[ KIGI(植原亮輔/渡邉良重)プロフィール ]
株式会社ドラフトに所属していたアートディレクターたちが、各自の活動と並行しながらドラフトとの協業関係を維持していく「ドラフト・クリエイティブ・フランチャイズ・システム」がスタートしたことにより、2012年1月に植原亮輔と渡邉良重のふたりでキギを設立。「THEATRE PRODUCTS」「PASS THE BATON」「SOUP STOCK」「une nana cool」などのグラフィックデザインや広告、ブランディングのほか、D-BROSでの商品開発も継続。http://ki-gi.com/

WACOM初のWEBマガジン「BRUSH-STROKE」創刊

「その先の自分へ。」
まだ見ぬものを求めて旅に出る。始まりに、終わりを夢見る者はいない。目的はたどり着くことか、それとも旅そのものか。
ものづくりを、頂上のない山登りにたとえる人がいる。
濃くなっていく霧の中で、彼の足跡(ストローク)が、ひとつのかたちをつくりだしていく。
だれかの夢に出てきたように、ものづくりを、木の中に潜む仏像を救い出すことにたとえる人もいる。
確信に満ちた手の軌跡(ストローク)が、見事な像をつくりだす。
描き始めたとき、表現者の目には何が見えているのか? 描いているとき、その手は何を描いているのか?
産み出されたものだけが、表現者の闘いを知っている。
ものづくりはひとつの奇跡である。
表現者たちは筆をとる。その軌跡が新たななにかを、そして新たな自分をつくりだす。昨日とは違う自分を、まだ見ぬ自分を、その先の自分を。
Intuos、Cintiqなど、ペンタブレットの分野で表現者たちに併走してきたワコムが、WEBマガジン『BRUSH-STROKE』を刊行する。
様々なクリエイション、そのコアにあるものを描き出すこと。
この『BRUSH-STROKE』は表現者たちの軌跡を追ってみたい。これはその軌跡が奇跡であることの、貴重なドキュメントである。
BRUSH-STROKE webマガジン http://intuos.wacom.jp/brush-stroke/

Intuos

INDEX

独立したからこそできること

VOL.1

独立したからこそできること

人の力を借りれば、悩みはなくなる

VOL.2

人の力を借りれば、悩みはなくなる

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