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第16回
Masayo Ave in France ── 後編
 update 2003.12.17

レポート : 浦田 薫 / アート&デザインジャーナリスト 




2週に渡る阿部雅世さんのレポート、前編では、フランスでの現代庭園プロジェクトや、阿部さんの工業デザイナーとしての才能にヨーロッパでいち早く着眼した、ハンス・マイヤー・アイヒェン氏(AUTHENTICS)へのインタビューを紹介した。後編では、フランス・サンテティエンヌ市で開催したデザインワークショップをきっかけに、近年、阿部さん自身のデザインの一環として力を入れているワークショップ活動について、また、そこからの更なる飛躍をいかにプロジェクトと関連づけているのか、阿部さんのプロジェクトにフランスで関わった人々へのインタビューを通して、その活動の真髄に迫ってみる。

■ ワークショップから誕生したデザイン
2001年秋、阿部さんは、サンテティエンヌ美術大学において、同校が開催する国際デザインビエンナーレの一環として催された3週間のワークショップに、客員教授として招聘された。

女性デザイナー、ましてや日本人という立場で、客員教授として招聘されるのは初めてのことである。その前年(2000年)のビエンナーレにおいては、阿部さんは数多くの参加者の一人に過ぎず、フランスにおけるデザイナーとしての一般的な知名度は無に等しい状況であった。しかし、その際に阿部さんが出展したものを運営委員会が見て、女性か、日本人か、ということを知る以前に、白羽の矢をたてて抜擢した、という異例の経緯であったことに触れておきたい。これが、阿部さんがデザイナーとして、濃厚にフランスと関わるはじめての機会であったという。

現役デザイナーが自由課題を与えるという、ワークショップの機会を得た阿部さんは、「私が現役のデザイナーとして教育の現場でできる最大のことは、技術的な指導ではなく、自分の経験と現代のデザインの問題点をさらけだし、自分自身のデザインプロセスの始めから終わりまでを、ライブで実際にやって見せること」と捉えた。ワークショップを、若い世代をしなやかに関わらせる「実験的なデザインを実践する機会」として位置づける。参加者が自分のすべてをうちこめる場所。異文化、異世代との出会い、相互理解の機会、教わる場所ではなく学ぶ場所にすることが一番の目的であったというワークショップに、一番わくわくして参加したのは、阿部さん自身であった。

阿部さんのワークショップのテーマは、「sound of materials」=素材の心。素材の声を感覚で聴くことから始め、新しい価値を目で発見し、手で形とテクスチャーを練り上げ、機能と効率を頭で調整し、完成したプロダクトを人に伝える発表展示まで。一連のデザインプロセスを、学生の潜在能力を引き出しながら、一つのシンフォニーとして時間内に仕上げるという大きな挑戦は、ワークショップという枠組みを超えた一つの大きなデザインプロジェクトとして、阿部さんはとらえている。このサンテティエンヌのワークショップに続いて、本年はラ・サピエンツア国立ローマ大学でも同じテーマでワークショップを行った。2004年は、南仏ヴァロリス市のセラミック美術館からも、同じテーマでのデザインワークショップを要請されている。若い才能を巻き込んでの臨場感あふれるオリジナルなデザイン活動は、阿部さんのライフワークへとなりつつある。






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【 1 】 Masayo Ave workshop
Sound of Materials, Roma 2003
La Sapienza University in Rome, Italy
22-26 Sep.2003

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【 2 】

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【 3 】

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【 4 】

ラ・サピエンツァ ワークショップ参加者:
Barbara Contini, Carola Arrivas Bajardi, Claudia Sebastiani, Daniele Malantrucco, Francesca Patrizi, Francesco Faccini, Marco Maietta, Marco Marangone, Maria Vincenza Grarini, Peppe D’Ambrogio, Raoul Bretzel,Susanna Succhiarelli, Valentina Pratesi.



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