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12カ月のパリ
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第4回
METRO PARISIEN 2003
(2003年パリのメトロ)

 update 2003.01.15
レポート : 浦田 薫 / アート&デザインジャーナリスト 



BONNE ANNEE!
明けましておめでとうございます。
2003年も開幕し、早々に忙しい日々に追われている方も多いことであろう。
パリも、1月中旬より国際家具見本市、メゾン&オブジェ、パリコレ。。。とイベントが集中するシーズンである。
今年もミクロとマクロの世界を巡りながら、パリ情報をお届けする予定なので、どうか皆様も万全の健康のもとお付き合い頂けたら幸いである。


METRO PARISIEN 2003 (2003年パリのメトロ)

毎日、約1千万人の乗客が利用するといわれているパリのメトロは、市民の足である。年々、社会の動向に合わせた改善を試みているが、毎日の生活では、急激な変化は目に見えないことも多い。高齢者や体の不自由な人々のために、エレベーターの設置を2008年までに徹底することを宣言しているが、2003年に普及される設備をピックアップして紹介する。


RATPが提供する24塔の情報ターミナル

2002年、パリ市内の主要駅(メトロ及び郊外線)に、情報ターミナルが設置された。
20年以上前から、都市改善のために、RATP(パリ市交通公団)とJC−DECAUX(デコー社 公共掲示板及び屋外設置物のリーダー企業)はあらゆる試行を続け、共同開発をしてきており、バスの停留所にオンタイムで、次のバスが来るまでの待ち時間を知らせる装置や、電子ニュースボードなどが例として挙げられる。
2002年末までに設置された情報ターミナルの場所は、地下 RER-A 線 CHATELET-LES-HALLES シャトレ・レ・アール (3)、RER-B 線 DENFERT ROCHEREAU ダンフェール・ロッシュロー (3)、PORT-ROYAL ポール・ロワイヤル (4)、LUXEMBOURG ルクサンブール (3)、MAISON DE LA RADIO メゾン・ド・ラディオ (1)。
地上は郊外ばかりであるが、RUEIL-MALMAISON ルエル・マルメゾン、 SAINT-DENIS サン・ドニ、 ISSY-LES-MOULINEAUX イシー・レ・ムリノ、 COURBEVOIE クルブボワ、の各箇所にあるので、ぜひ次回のパリ滞在の折には活用して頂きたい。
注:( )内は設置数を表す

情報ターミナルの新しいサービスは、「何処で情報を入手できるの?」「どうやって行くの?」「いつ営業しているの?」 という市民の素朴な質問にその場で答えることが第一の目的であり、以下の内容がサービスの大枠である。

1) 私の街、地域;インターネットへのアクセス、情報ターミナルの設置場所の紹介
2) 私の交通、生活;交通情報
3) 私の市民としての役割;役所関係情報
4) 私のインターネット;WEBへの10分間無料アクセス。LA POSTE(=郵便局)の協賛により、メールアドレスの取得が可能であり、メッセージの送受信ができる。

又、サービスの3大改革として以下の内容を挙げている。

1) NAVIGO のカード所持者に情報提供
2) メトロマップや終着地点までの乗り継ぎ案内 更に、情報を印刷できる
3) 役所サービスへの案内をヴァーチャル受付方式で提供

使用している様子は、やはり主要駅が最も盛んである。例えば、LES HALLES は、乗り換え通路が交差する地下広場にあるので、特に土曜日の午後は、列を成して順番を待っているほどである。当然、メール利用者が多いので、時間もかかる。他のダンフェール・ロッシュロー、ポール・ロワイヤル、ルクサンブールもRER B 線の至近距離にあるので、そちらの利用を勧める。しかし、一度改札口を出てからの利用となるので、注意したい。


ポールロワイヤルの駅に設置された様子

実際に、筆者もポール・ロワイヤルで操作を実験してみた。A4縦サイズ程の画面で、操作矢印と決定タッチなので簡単である。メールアドレスを取得するには、名前、連絡先とパスワードを入力するだけである。メールの送受信の他にあらゆる情報もメールボックスに送信してくれるので、他のアクセスポイントからでもチェックできるという優れた機能がある。当然、上記のアクセスポイントに行かないとお話しにならないので、携帯電話を持つほうが断然に便利であるが、公共施設における無料アクセス機能としてはやはり意味があるだろう。補足として、アルファベットのみでしかテキストが作成できないので、日本語の方はローマ字にてご記入を!




ターミナル操作トップ画面 METEO を押すと今日の天気も表示してくれる


La Poste.net が協賛するメールサービス 新規にアドレスを取得をする方は、空白に必要事項を記入


ターミナルのデザインは、比較的スマート


必死にメールテキストを作成する利用者 画面が大きいので横からつい見えてしまう!?




NAVIGO(ナヴィゴ)カード





クレジットカードサイズの NAVIGO カード
NAVIGO と NAVIGO IMAGINE"R" イマジン“エール”があり、前者は一般対象者で、後者は26歳以下の学生を対象とする。
日本人の読者には、JR東日本で販売している“Suica”といえば理解して頂けるだろうか。
パリのメトロの改札も、従来は一枚の切符を機械に投入してから、手動でバーを押して入場するシステムである。しかし、2001年10月に、当初、実験的に導入した電子カードの普及は、今後のメトロ利用者を教育しなおすといわれている。
カードを改札機械上部の紫色面に近づけるだけで“ピロリン!”という音を発し改札できるシステムである。特に女性の場合、バッグの中からわざわざ財布一式やパスケースなどを取り出す必要もなく、手がふさがっている状態でも、カードが読み込まれればよいので、大変に便利である。乗客の利便性はもとより、RATP としても、“タダ乗り”を防ぐ対策として最も効果的、と前向きである。
2003年からは、CARTE ORANGE (パリ市内乗降自由の1カ月定期)を NAVIGO カードに切り替えていく方針である。CARTE ORANGE は毎月窓口で購入するシステムであるので、特に月末と月はじめは混み合い、通学・通勤者はうっかり遅刻をしてしまう恐れがあるが、NAVIGO は、所定の駅窓口で即発行してくれる方法と、申込書を記入して郵便ポストに投函するだけでカードを自宅まで郵送してくれる2通りがある。口座から毎月自動引落し、もしくは一括払いのどちらかを選ぶことができる。当然、一括払いの場合は、数パーセントの還元システムも適応される。
さすがの得策であるが、RATP の現金回収策も中々考え抜かれている。長期バカンスにさしかかる場合には、利用期間を延長、区間の変更、途中解約も無料にて対応する。
「うっかり、紛失した場合にも、再発行を即致します!」と唱うのだが、パンフレットの末尾には、新規入会者は 7.60ユーロが必要であると小さく書いてある。そして、なぜか NAVIGO IMAGINE"R" は、契約内容が一部異なるためか、7.70ユーロと料金が統一されていないのも不思議である。電子カード会社の手数料なのだろうか。久し振りに、丁寧に読んだせいもあり、妙なことに疑問を持ってしまった。
耳寄りの情報としては、IMAGINE"R" イマジン“エール”利用者(26歳以下)には、MK2 グループの映画館で上映される映画が、通常 8.50ユーロのところ、月曜日から木曜日は 5ユーロ、金曜日から日曜日は 6.50ユーロと割引対象にもなる。今後も、企業の介入が見込まれ、サービス内容も充実することは間違いないであろう。

注)1ユーロ=122円相当 2002.12現在



2003年もご多幸ありますように。
パリに限らず、便利になる世の中には、改善される反面、考えさせられる要素が含まれている。例えば電子チップは、我々の生活のありとあらゆるモノに組み込まれており、この目に見えないミクロの世界が、生活を支えている。しかし、その一部が狂うことにより、生活リズムに混乱を招くことも考えられる。あまり、新年早々消極的な考えをおこしたくはないが、利便性にだけ身を委ねていると危機に対して鈍感になっていくのは確かである。



NAVIGOカード他の料金一覧表


折りたたむと封筒になり投函できるじゃばら式の申込書


IMAGINE"R" セット RATPの窓口で尋ねると、封筒にセットされた申込書を入手できる


改札機械 紫色の渦上部分がカードを読み込む 将来的には、クレジットカードとしての機能も果たす予定
デザインは、RATP 内部 agences Plan creatif と Paris Venise Designのコラボレーション


注)改札機械 以外 写真 : 浦田 薫


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