Ginza Maison Hermès - タイムラプス

タイムラプス

ファスト化する商品経済に抗うように、アルド・バッカーはオブジェにじっくりと向きあい、時間をかけて作品をつくります。水差し、ボウル、スプーン、スツール、ベンチ、テーブルなどが、温室のようなスタジオでゆっくりと成長していくのです。時には優秀な技術者や職人たちが世話をします。作者の手を離れてからも事情は変わりません。作品の魅力を十分に堪能するためには、観賞者は時間をかけて集中してオブジェに向きあわなくてはなりません。そうでなくては、目に見える美しさ以上のものを感じとることはできないでしょう。バッカーのオブジェは、時間の経過や環境の変化をしなやかに受けとめます。さまざまな意味を折り込んだ作品は、時間とともに成熟し、あらゆる状況をのりこえていきます。

アルド・バッカーがもっとも関心をよせるのは、オブジェと時間との関係です。エルメスから「オブジェに宿るもの」というテーマでウィンドウディスプレイの制作依頼をしたとき、彼は長年リサーチを続けている「時間」というテーマを思い浮かべました。それをもとにバッカーのスタジオが発展させた答えは、影によって時間を表現することでした。影は、ディスプレイに情緒を加え、動きと連続性をもたらします。

入口の正面右側の大きなウィンドウには、秋冬プレタポルテを着たマネキンがのどかな田園風景の中にいます。壁には、木組みの小屋を思わせる大きな影がさしています。その影は、バッカーの代表作となった木製スツール『スウィング』の足元から伸びていますが、このスツールもまた試作に試作を重ね、時間をかけて完成した作品なのです。

正面左側のウィンドウには謎めいた雰囲気がただよい、壁にはやはりバッカーの作品であるブロンズ製の『トーヌス』が影をなげかけています。右側の田園風景のウィンドウには明るい陽差しがあふれ、床に鶴の影が落ちていましたが、反対側では暗くなった夕空を背景に、一羽の鶴が優雅に羽ばたく姿が描かれています。バッカーにとって、鶴は東洋文化を象徴しています。そしてどちらのウィンドウにも、美しい光沢を帯びたイチョウの葉が散らばっています。

アーティスト アルド・バッカー
展示期間 2017年7月27日~9月26日