デザインの

ライゾマティクス・齋藤精一 「アートにしかできないこと、そして2020年に向けて」
テーマ

「アートプロジェクト」

  • ライゾマティクス 代表取締役社/齋藤精一

新しい潮流を起しているプロジェクトから、「問題解決方法のヒント」や「社会との新しい関係づくり」を探る、「デザインの波」。 記念すべき第1回目のゲストはライゾマティクス代表取締役社長であり、2015年の六本木アートナイトからメディアアートディレクターに就任した齋藤精一氏。

構成/文:齋藤あきこ、撮影:後藤武浩

東京・恵比寿を拠点に活動する「ライゾマティクス」は、インタラクティブな広告プロジェクトや先鋭的なメディアアート作品で注目されるクリエイター集団。コマーシャルとアートを両立する稀有な存在だ。代表取締役社長の齋藤精一氏は、デザインやアートの力を使い、「六本木アートナイト」や「MEDIA AMBITION TOKYO」などのアートプロジェクトを推進役として知られる存在。市民が参加できる場所と仕組みを創りあげる手腕には学ぶところが多い。オリンピックイヤーの2020年に向けて彼の挑戦を聞いた。

アートにしかできないこと、そして2020年に向けて

アートが集まる場所を作ると、人が多角形に関わることができます。絵を描くのが好きな人、絵を見るのが好きな人、踊りを見るのが好きな人、音楽が好きな人。それぞれを多角的に包括して、参加させるモチベーションを作ることができる。アートを通して、観る人も参加する人も楽しい、全員がハッピーな状況を作れることが出来る。また、アートが集まる場には「インキュベーション」の役割もあります。作品をつくる人と、それにお金を出す人が集まって繋がっていく大事な交流の場所になります。

例えばお祭りだと、商店街のスナックの人が、店の外でフランクフルトを焼いて売ったりしていますよね。それが表現で起きてもいい。みんなが関わる事が出来る方法で、楽しくなればいいなとすごく思います。その関わり方はそれぞれで、話すのが得意な人もいるでしょうし、料理作るのが得意な人は料理をつくってもいい。そうやってお祭りでの関わり方を見つけると、街ぐるみのイベントにも参加しやすくなる。

だから、アートが、2020年の東京にとって、何かの入り口になるのは絶対間違いないと思います。そのためには、5年前の今から準備を始めないと、もう間に合わないんじゃないでしょうか。

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僕はオリンピックに関わりたいと思うし、東京がどうなっていくのか、オリンピックの先にも興味があります。2020年には、デジタルのレイヤーでイベントがまず起こっていて、ワンレイヤー下の実際の現実空間ではまた違うイベントが起きている、というような、デジタルの世界と物理的な都市環境や空間が共存する都市になっていると思います。その時に、建築出身でデジタルをやっている僕のスキルを使ってみたい。

ただ、日本の「安全安心」はコンピタンス(能力)でありブランドでもあるんですが、それを追求していくと、余剰の良さ=アートみたいな、明確な機能を持っていないものがどんどん無くなっていく。そうなると、街がつまらなくなりますよね。例えばいま、街や生きている人間を見るよりも、スマホを見る方が楽しくなっていませんか?現実の世界が、スマホの中の世界に負けているんですよ。要は自分の見たいもの、やりたいもの、興味関心によって、行く場所を変えてもらうっていうプラットフォームが出来たということだと思いますが。2020年までには、その物理的な都市環境とバーチャルな環境のバランスが取れているでしょう。オリンピックに対して、いろいろな参加の仕方ができるようになっていると思います。そこから、本来の日本人があるべき姿、もしくはいちばん得意なコミュニケーションの姿が見えるのではないでしょうか。

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