グラフィックの力を増幅させる、技術力の結集
日光プロセス 営業部次長 向井啓二氏 http://www.nikko-pro.com
YMG1 代表取締役 山家一繁氏 http://www.yamaga-net.co.jp


日光プロセス 営業部次長 向井啓二氏
葛飾北斎の作品から高橋正実氏が選びだした、日本人の生活風景や江戸時代の風景をコラージュとして完成させるためには、精巧な製版技術が必要。その大役を担ったのが、墨田区菊川にある日光プロセスだ。




「高橋さんとは10年以上前からお付き合いがあり、今回も直接お電話で相談を受けました。大掛かりで時間もかかったプロジェクトでした。 お預かりしたポジはまず、高橋さんからのイメージカンプをもとに、作業用に軽いアタリ用データを用意、その後レイアウトが決定してから高解像度データをスキャニングしていきました。仕上がりが大きなパネルですから、いかにも合成した雰囲気が残らないように、また、作品によって年代が異なることもあって、色味の違いの調整などに気をくばりました。平均して1枚のパネルに5〜6作品から合成するので、色は平均値をみながら決定しています」

最終的な出力は大型のインクジェットで行うことになったが、実は当初予定していた制作会社では経験が足りず、なかなか試作が進まなかったというハプニングも。出力イメージがつかめず、最後まで色調の再現性が課題となった。


「高橋さんからは、伝統はふまえても彩度はピリッとしたインパクトを残してほしいという要望がありました。最初の試し刷りでは多少濁りが気になりましたが、彩度を上げて調整し、背景のグラデーションもうまくいったんじゃないでしょうか。華やかな場所ですので、全体が沈んだ印象にならないように仕上げました。 どこが簡単でどこが難しい、ということではなく、場所の印象と作品としての完成度に注力した結果だと思っています」


YMG1 代表取締役 山家一繁氏
墨田区両国で25年以上前からマーキングフィルム制作をはじめ、屋外用の大型看板や都バスのラッピング広告を手がけているYMG1。成田空港という特殊な場所に設置する北斎のパネルも、これまでに培った技術が底力となった。




「我々の仕事は、納期から制作スケジュールを算出して進めるものですが、このプロジェクトはかなりギリギリになってからのお話でしたので、出力や施工だけでなく工程管理から弊社も加わり、ご提案していきました。今回のような価値あるプロジェクトにおいて、経験のない事例を完成させるためには、豊富な実績をふまえたサポートが成功への必須条件だと考えています。
特にこの業界では、どれだけ修羅場を経験しているか、ということが強さであり、企業価値に直結します。もちろん、それまでに成田空港での仕事の経験があったこともポイントでしたね」


2007年12月初旬の納期まで約2週間しかなかった。しかも、当初に予定していた施工会社では対応できないことがわかり、墨田区役所を通じて紹介されたのがYMG1だった。


「繊細な色調をどう再現するか、我々と製版会社、そして高橋正実さんとの共通認識をもつことで、完成までいっきに進めました。解決すべき点は、たとえばバスのラッピング広告の場合と基本的には変わりません。見栄えや経年変化を考慮し、屋内でも10年は退色しない方法で出力しています。
今回は高橋さんのデザインをはじめ、各分野の手仕事がすばらしく良いものでした。
大きな壁面を占める制作物は、空間の中でのバランスが難しいのですが、時間が少ない中、グラフィックを前面に押し出してこんなことがしたい、という強い気持ちがあったからできたと思っています。そういった希望を実現するのが我々の仕事です」


葛飾北斎のコラージュも、そして金魚が描かれた巨大壁画も、漆塗りや金銀箔を手で貼り込む職人技をはじめ多々の技術が結集した作品だといえるだろう。成田国際空港にあるこの空間が人々にどのような印象を与えるか。もし未見ならばぜひ現地で、直に体感してほしい。



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