熱意と人柄を信頼して認めた特例
墨田区文化振興課北斎館建設準備担当 和田幸恵氏 web_墨田区/『北斎かわらばん』


葛飾北斎の作品をコラージュしたい、という高橋正実氏の依頼を受けた墨田区文化振興課。北斎館建設準備を担当している和田幸恵氏がその窓口となった。


和田幸恵氏
和田幸恵氏

「正実さんに初めてお会いしたのは平成18年の11月。それまで面識はなく、正実さんがデザイナーとして独立する際、産業振興政策の一貫として新規事業の手伝いをした関係で繋がりのあった産業経済課から紹介を受けました。まず壮大な計画だったのではたして協力できるのだろうか、というのが正直な感想でした。

北斎館のプロジェクトは墨田区が主体ですが、ソフト面については墨田区の外郭団体である墨田区文化振興財団と協力して進めている状況ですので、そちらと相談しなければなりませんでした。実際に作品を直接お貸しするわけにはいきませんし、ポジフィルムの管理は墨田区から文化振興財団に任せていることもあり、私だけの判断で貸し出しを許可するわけにもいきません。そこで当時の学芸員に相談したところ、やはりコラージュに最初は難色を示すようなところはありました。専門家にしてみれば、北斎の作品を切り刻んでしまうわけですからね。でも、墨田区に非常に協力してくれている高橋さんですし、設置する場所が成田空港という、公共性の高いところでもあり北斎館のPRに繋がっていくならば可能性はゼロではないかな、というふうに話がまとまっていきました」


ちょうど平成18年3月に新タワー「東京スカイツリー」が墨田区の押上・業平橋地区に建設されることが決定したのを契機に、区として国際観光都市を目指すこととなり、再度北斎館のプロジェクトが動き出したタイミングも効を奏した。


葛飾北斎のコラージュ

「文化振興財団事務所で、高橋さんの熱い語り口でこういう重要性のあるプロジェクトなんだと説明していただきました。こちらからの要望は、ポジは貸し出すけれども、赤い富士山を青く変えてしまわない程度のことは守っていただけますよね、という点でした。その後、別の学芸員の方には『これは勇気ある判断をしましたね』と言われましたが(笑)。
高橋さんとお話をしていて、この方ならお貸ししても大丈夫かなと思ったのは、ご自身が北斎のことをすごく大切に思ってくださっている気持ちが伝わってきたからでしょうね。コラージュをなさったとしても、私たちが絶対に許可できないと言わざるを得ない状況にはならないんじゃないかなと、気持ちの部分で信頼できる人柄でした」


貸し出したポジの枚数は110点。写真の商業利用はまだ解禁しておらず、学術研究の場合にのみ協力していたが、幅広く商業的な利用を検討している中で舞い込んできたプロジェクトだった。


和田幸恵氏

「国内には北斎をメインに扱う美術館が既に2館あります。小布施の北斎館と、現在の北斎研究ではトップにいらっしゃる永田生慈先生が故郷の島根県津和野町に設立した葛飾北斎美術館。墨田区の北斎館は3番目になるので、いかにして多くの方々にその存在を知っていただくかが課題です。「ナリタ北斎プラザ」は、墨田区と北斎とのつながりを世界にPRするための大きな助けになってくれると期待しています。今回のコラージュは特例で、二度はないことなので、いったいどんなものができあがるんだという不安はありました。が、高橋さんの配慮で、制作の過程で可能な範囲の情報提供をしてくださっていましたので、状況を把握できていた安心感はありました。あとは高橋さんのパワーに圧倒されたということに尽きると思っています」

北斎館はまもなく建築設計者を決定し、平成22年に着工。開館は平成24年を予定している。



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