それぞれの力を相乗効果で発揮する
日産自動車
デザイン本部プロダクトデザイン部プロダクトチーフデザイナー 大月圭介氏
デザイン本部プロダクトデザイン部 相川正樹氏
デザイン本部プロダクトデザイン部 菊地宏幸氏


デュアリスはデザイン開発においても欧州とのクロスオーバーで進行。イギリスと日本から複数のデザイナーがコンセプトに基づいたスケッチを提出し、検討が重ねられた。最終デザインはイギリスで技術と共に仕上げられ、製造に至るプロセスを経た。
一方、プロモーションは欧州と日本では全く異なり、国内独自のプロジェクトとして広告代理店と共に展開。パワードスーツのデザインには、実際に車を手がけたデザイナーと河森正治氏がディスカッションする機会が設けられたことにより、互いのクリエイティビティは強く刺激し合ったようだ。


大月圭介氏
大月圭介氏

大月圭介氏(以下O)「車のデザインはまず何案もあるデザインからチーフデザイナーがまとめ、上層部へのプレゼンテーションなどの段階を経て、最終案が決定されます。このように企画から形を作り上げるのがデザイナーですが、同時にそれをどう世の中にコミュニケートしていくかというところまでも責任範囲。チーフとしては特に、あらゆるメディア、カタログ等の表現内容をチェックし、狙いがきちんと伝わっているかどうか確認、検証すべき立場でもありますね」

相川正樹氏
相川正樹氏

相川正樹氏(以下A)「僕はエクステリアデザインが、多数の案から最終案のひとつに決定されるまで担当しました。当然そのときにはパワードスーツになるという話はなかったので(笑)、最初は意外でしたね。コンセプトは『アーバンノマド』でしたから。
でもキーワードを直訳すると『都会の遊牧民』、つまり都会の洗練された雰囲気と、遊牧民のちょっと荒々しいたくましい雰囲気。それをクロスオーバーさせたものとパワードスーツというのは、考えようによってはリンクするなと思ったんですよ。エクステリアデザインの観点からは、“面質”や“塊感”を加味してほしいという話をしました」


菊地宏幸氏
菊地宏幸氏

菊地宏幸氏(以下K)「担当デザイナーがプロモーション展開の打ち合わせに呼ばれることはあまりありませんので、今回は『あの河森さんと仕事ができる!』と興奮しました(笑)。日産のデザインスタジオに来て頂いてホワイトボードに描きながら、世界観が違う、とか、見せ方はこうしたい、というブレーンストーミングを行えたことが嬉しかったですね。
僕の担当は車のインテリアですが、河森さんがスケッチを描く場合とは言語や文法が違うんですね。ですから車とパワードスーツがどうリンクするのか、最初はお互い手探り状態。河森さんはアニメ映画を監督されているので映像になるコンテをはっきりもっていらっしゃった。そこに寄せていく仕事でした。僕たちの方ができるだけ近づいていきたかったので、河森さんのアイデアに対して、エッヂの処理を入れてくださいとか、道路を滑走していく姿勢を取らせたほうがイメージが強まりますとか、そういう意見をぶつけ合いました」


CMでの表現ならばCGで解決できるようにも考えられるが、車から変形するパワードスーツのデザイン設計はきわめて現実に近く、プロダクトとして成立する理論に基づいていた。


K「河森さんからの提案は2回いただきました。最初は上半身がコックピットのような形など様々なパターンがありましたが話し合いの後に、手足が伸び、車が身体能力を拡張してくれるというデザインになりました。それこそが車のコンセプトとぴったりですよね。
河森さんのデザインスタイルは合理的、理論的だなと思います。たとえば、この関節はこの軸があるからこう動く、腰の関節は通常の人間とは違うのでこういう方向についている、とか。日々の仕事で常にそういう理論でデザインしていれば当たり前のことなんですが、今回車をモチーフにロボットにするときにものすごくたくさんの要素が盛り込まれていて衝撃でした。


日産デュアリス

どう動くかを説明するときに、車輪の中にモーターが入っていて、操作する部分はこうなる、というようにすべて理論づけられている。現実的にどう変形するか、というのはまた別問題なんですが、考え方は非常に刺激的。デュアリスの特徴のひとつ、ガラストップの非常に大きくルーミーな空間は、頭部のガラスの球体の感じであるとか、その中に胸や手足が入っていてそれが操作しているんだというように、きちんと取り入れてもらいました」

左から大月氏、菊地氏、相川氏

A「最終的に出てきたパワードスーツを見て、良かったと思いましたね。デュアリスは上半身がなめらかで、下半身が4WDをイメージさせるごつい形状を強調するというデザインの点でもクロスオーバーなのですが、なめらかな面質と背中側が黒いところでそれがうまく表現された。
デザインのアイデアは、車だけ見ていても出てくるものではなく、車以外のプロダクトや建築を見たり、自分でスポーツをして違うフィーリングを得たりするのですが、こうして河森さんと会って、パワードスーツのことを考えた時期というのはうまく自分のその後のアウトプットに活かされると思います」


K「僕たちがデザインを突き詰めて完成させたデュアリスと、広告に登場するデュアリスが良い意味で違っていました。特に国内でのターゲット、20〜30歳代の男性にはインパクトが強かったはず。ある程度の大きさのロボットが変形、可動するという親近感のあるアイテムとデュアリスを結び付けてくれたおかげで、車の魅力も倍増したのではないでしょうか」


O「デザイナーとしてブランドの構築に貢献する。あらゆる場で表現するものの全てに関わり、全部を監修した結果、今回のパワードスーツもクオリティの高い表現ができたと思っています。ロボット等を使うと、リアリティやキャラクター性が突出し、車の主張を邪魔してしまうこともありますが、今回は車のデザインの資質とうまく重なりあっていて、感覚的にも伝わる点でインパクトも強く、成功していると考えています」



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「interview 3 / メカニックデザイナー、アニメ監督 河森正治氏」




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