表現の芯を射ぬくクリエイターのスタッフィングも、アイデアのひとつ

各クリエイターの方向性は、作品の完成度に大きく影響する。誰をスタッフィングするかはプロジェクトにとって重要なポイントだ。


田中耕一郎氏

「『ユニクロック』は、映像作品であり、音楽作品であり、ウェブサイトであり、ブログパーツであり、それらのエンジンとしてのアプリケーションであり、言い方をかえれば、クリエイターや技術者のコラボレーション作品です。その関係性がうまくリンクしていかないと全体がちぐはぐになってしまう。その秩序を整えるのが僕の役目です。

まず映像のディレクターを児玉裕一さんにお願いすることにしました。たまたま雑誌で見た児玉さんの絵コンテが設計図のようで、身体表現と音楽の関係を表現のテーマにしている方だなと思ったので。
5秒の時計表現と5秒のダンスを交互に繰り返すのは、児玉さんのアイデアです。他にも膨大なアイデアを検討しましたが、5秒ごとのこの表現でなければここまでおもしろくなっていなかったでしょうね」


ランダムに永遠と再生されていくにはある‘分母感’が必要とされ、5秒のシーンは10や20カットでは足りるわけもない。変化しつづける感覚を出すために、限られた予算と時間で、撮れる量だけ撮ることになった。撮影期間は2日間。


「5秒のダンス、5秒の時計というのは表現としてもおもしろいのですが、構造としても新鮮なもの。全画面の映像をずっと再生するのはデータの負荷が高いのですが、実は時計表示をしている間にダンス映像をダウンロードしているんです。そこがこのシステムのブレイクスルー。『ユニクロック』を感覚的に見ると、あっきれいだなって思いますよね?
時計としてのインターフェイスも、秒のリズムの表現になっています。すべての要素が秒を刻んでいることによって全体にも秩序がうまれ、秩序があるからこそ、シンプリシティが生きるんです」


撮影のときにはまだ、音はできていなかった。1曲あたり1分間の3曲がループ再生して永遠に続くというルールが決まり、FPM(ファンタスティック・プラスティック・マシーン)の田中知之氏によって音楽が完成された。


「意味としては時計が一番なんですが、音楽という視点はすごく大事だなと思っていました。実は体験をひとつにしているのは音楽。あの音楽が上がってきたことによって時計の部分も影響を受けています。曲に合わせてダンスしているかのように、ワールドマップ上を回遊しているんです。
ひとつのものを見た時に共通して同じものを感じられる仕組みは音楽によるところが大きいですね」


「ユニクロック」第1弾をリリースして約半月後には「ワールド・ユニクロック」を発表。データの視覚化というウェブが得意とする機能をさらに利用している。


ワールド・ユニクロック
ワールド・ユニクロック

「自分が良いと思ったものは自分ひとりじゃなくて他者も良いと思っていることを実感すると、欲望のレベルは上がるはずです。その第三者的な欲望のありかを視覚化していくことが大事だと思っていたので、『ワールド・ユニクロック』があることによって『ユニクロック』も初めてひと区切りついた気がしています。

ユーザーの興味や疑問を常に引き出して常に新鮮さを残していくためには、変える部分が必要。一方で変えない部分も必要。そうでないとよくあるように、第2弾、3弾と続いていくうちにただ薄まっているだけになってしまいます。
『ユニクロック』で変えていないのは、身体表現と音と時計/時間、そして、ユニクロの服をインターアクトさせることです。
毎回、この枠組みを生かした新たな視点を導入しています。
それから、ユニクロの別のプロジェクトでも、身体表現と時間をインターアクトさせた表現を作っているところです。タイム・イン・モーションというテーマで。身体表現の中には時間が埋まっているんですよね。まだ試行錯誤中ですが…」


季節に合わせた服のコーディネート以上の変化を、次の「ユニクロック」では期待できそうだ。完成まで変わり続けるアイデアの着地点を、楽しみにしたい。



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