記憶に残る子ども番組であり続けるために
チーフプロデューサー 坂上浩子氏


番組開始から1年後、テレビ番組としては初めて、グッドデザイン大賞を受賞した。子ども番組は長く続くケースが多く、「にほんごであそぼ」にも期待は大きい。


坂上浩子氏
坂上浩子氏
「Gマークについては、NHKのコンクール委員会という部署(海外や国内のフェスティバルやコンクールへの参加を統括している)からの打診でした。以前から『ピタゴラスイッチ』は出品されていましたし、『にほんごであそぼ』もデザイナーの方々が携わっているので注目はされていたと思うんですね。デザインということであれば『にほんごであそぼ』ですが、教育番組として子どもに向けたものとして『ドレミのテレビ』と一緒の参加になったと思います。
受賞の際に講評として言われた、日本のテレビ番組にデザインはなかった、という言葉には耳が痛い思いでしたが、この番組にデザインがあるとすれば、やはり最初から佐藤卓さんに加わっていただいていたことが大きいと思います」


Gマーク受賞後は、寄せられる反応も以前より増した。


「プロの業界の方からの取材は多いですし、かるたなどのように商品として声をかけてくださった方がいるのは、それぞれの分野でプロの方々の仕事としてインパクトがあるからだと思っています。
番組スタートした時点から、番組のブレインとしてモニター調査に協力していただいている幼稚園の先生などから、かるたが欲しいって言われたり、視聴者からも、『ややこしや』の絵本はないんですか? CDは? DVDは? という問い合わせをたくさんいただいたんですよね。
最初に『ややこしや』『じゅげむ』が子どもの間に浸透して、街中で変なことをしている、あれは何だ? と新聞や雑誌が取材してくれるようになった感じです。実際、子どものほうが親よりも先に覚えて、早く言えるようになりますからね。

でも実は、『ややこしや』は最初、クレームの嵐でした。子どもが怖がるって。狂言で使う本物の面をつけますし、黒装束を来ている人たちが気味悪い動きをして、なんといっても萬斎さんの声が恐いって。子ども達は、人間の腹から出る声を、あまり聞く機会がないので、番組がはじまったとたん泣き叫んで逃げてしまいます、と。これは番組が始まってすぐに抗議がきましたね。でも『これは本物の狂言なんですよ、狂言師がやっているんですよ』と説明するとトーンダウンして、『もうしばらくすると慣れると思いますから、2週間してもまだ慣れなかったら電話ください』と返事すると、それ以上の電話はありませんでした。びっくりすると泣き叫ぶのは素直な反応のようです。一方で、楽しいと思った子供もいたり、最初は恐かったけどそのうちおもしろくなってきた子供もいたから、ブームになってきたんだと思うんですね」


番組が始まる際には、10年続けることを宣言。今年の4月で5年目に入った。


「子供時代に見ていた番組の記憶は強くて、大人になってからも覚えているものもありますよね。番組で伝えている日本語が、血となり身となって使えるようになるためには、続いていなくてはならないと思っています。続けることが一番大変なのはわかっていますけれど(笑)。
出演者の方々も、最初にやったものをそのままは続けていけないんですよね。萬斎さんにまた『ややこしや』や『風の又三郎』をやりましょう、と言っても彼の芸も変わっていっているし、我々ディレクターも二番煎じはしたくありませんから、同じことは出来ないんです。視聴者は変わっていっているわけですから構わないんですが、作り手として出来ません。
佐藤卓さんが、クールミントガムのパッケージをリニューアルしたときのことについて、「変えるのってむずかしい」とおっしゃっていました。でも見事に変えられた。昔からデザインされていた鯨の潮吹きを、ペンギンのポーズの違いにこめたり、購入者に、おや? と思わせるような部分を変えながらも、本筋のコンセプトのところは変わっていないということですよね。そういうふうにできれば、20年30年40年と続けられるだろうと思います。日本語自体の題材はたくさんあるし、古典芸能の方も歳を重ねられてまたそれぞれの味を出していただければ嬉しい」


まだ番組で作られていないコーナーのアイデアもたくさんある。


「日本語の分野でいうと、現代詩ですね。谷川俊太郎さんとかまどみちおさんとか、たくさんあるけどまだ扱っていません。それから他にも日本語の分野で一緒にコラボレーションできる方々や、いま日本語でも手がけていない分野を広げていきたいですね。ただ、コンセプトである、日本語の美しさを絵と音を通じて伝え、しかもそれが人間の体や日本の自然を大事にしている、という点は変わらないと思います。
言葉は生きているので、ひとつを正解だって出すのはむずかしいものです。それをどう扱っていくかということろも課題です。

Gマーク受賞のとき、デザイナーで審査員のひとりだった左合ひとみさんが、『今年のGマークは未来の子どもに賭けました』とおっしゃってくださいました。テレビは、日常的に触れるものだということを肝に銘じて、意識していかなくてはならない、そこにデザインの重要性がある、と。デザインがあることで、無意識のうちに子どもの美的感覚が育てられるから大切なんだという意味として、重く受け取りました。
現在も、定期的にブレーンストーミングを開き、放送内容を振り返って検証し、さらにこれからできること、すべきことを持ち寄っています」






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