明るい未来を予感させる力を、言葉に託す
講談師 神田山陽氏


出演者のひとり、神田山陽氏は伝統芸能としての講談という手法を現代風にアレンジし、日本語の奥深さを伝えるキャラクターを演じている。自らの言葉として語ることができるよう、テーマの提案段階から制作に加わるという。


神田山陽氏
神田山陽氏
「出演依頼をいただいたときには、伝統芸能の型のある話芸を、ということでした。言葉数が多く、立て板に水のように日本語を話す、独特の心地良いリズムがあるということで選んでいただいたようです。
ただ、実際ふたをあけてみると、堅苦しい講談というのをよっぽど解釈していかないと伝わらないことが分かりました。その中から生まれてきた、やわらかいキャラクターだと思うんですよ。
もともと講談というのは力強いもの、演説調のものですし、どちらかというと怒りをパワーにして物語をつくるようなところが本分なんですが、番組では与えられたテーマの言葉にどう愛情をのっけていくか、というのが参加させてもらって一番楽しいところですね。
この言葉はどういうテーマに沿って扱いたいか、毎回提案させてもらっています。たとえば春先だったら、『友だちできるかな』という不安な気持ちをどう表現するか、というところ。まずテーマありき、です。言葉が先に決まっていてもあてはまる良いテーマが見つからないときにはその言葉はやめましょう、ということもあります。
古来の言葉を使って子どもたちとやりとりをする形は変わっていますけれども、講談というものの芯はブレてないと思っています。衣装でいうと、体に机がくっついているというのは異形かもしれませんが、全く違うことをやっている気持ちではないですね」


衣装の強い印象が加わり、番組が始まってすぐに、親しみやすいキャラクターとなった。内容だけでなく、ちょっとしたビジュアルのリクエストも出す。


「ひびのこづえさんによる衣装は、嬉しいですね。講談では机を使いますんで、ひびのさんの手にかかるとこういう風になるのか、かわいらしいな! と。張扇(はりおおぎ)は、食事の時間だと子どもがお箸でテーブルを叩くから困る、と言われたこともありますね。あの叩くやつは何売り場に行ったら買えますか? って聞かれたことも。あれは最初、長い棒にフェルトを巻き付けたものだったんですがそれだとさみしいので何かつけて、って頼んだのは僕なんです。遠くから見るとトイレを洗うブラシのようなものになりました(笑)。誰も何も言わないからそのまま使ってます。ひびのさんとの仕事はこれが初めてですが、メガネももっと丸いのに変えてほしい、とか、もっとこうしたい、ということは言っています」


番組を見た子どもが、講談に興味をもつようになったという、嬉しい影響もある。


「お年寄りだけのものと思われがちだった講談を、なんとか同世代に聴いてもらいたいと思っていたんですがその世代を飛び越えて(笑)、子どもたちが。テレビと違うことやってるなと思いながら見てるとは思います。
僕も子どもの頃は気付いていなかったことですが、地元に旅芝居の一座なんかが来て町の人が見に行くっていうと、大人たちが笑っている中で一緒に過ごす時間っていうのは、子どもにとって豊かなものだと思うんですよ。分からなくっても、テレビじゃなくて生のものを見ている訳です。ズームや編集で演出されたものじゃなくて、自分で考えながら見るものの空間にいることが有意義なことなんじゃないかなと思っています」



つぎのページへ

「interview 4 / これから先に必ず良いことがある」




デザイン関連求人情報あります  エイクエント

デザイナーの皆様のご連絡をお待ちしています。


Copyright (c) 2007 Japan Design Net All rights reserved.
クリエイティブのタテ軸ヨコ軸 produced by AQUENT