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伊藤 「こういう味の豆腐を作って、こういうパッケージで、こういう売り方をしたい、と思ったから、今があるようなもんです。自分でやりたくてもできないことをデザイナーが実現してくれる。センスの良いクリエイターをきちっと自分の側につけて、自分のところだけがやっているような、良いものをちゃんと世に出すってことをやりたいがために、これだけの大人数で会社をやっているようなものです。
デザイナーがどうやって経営者を教育するかっていうことを、デザインの勉強の一項目に入れておいたほうが良いと思うんですよ。お金と決定権をもっている人をどれだけ洗脳して自分のデザインにもっていくかっていうことですから、若くして人間性を要求される職業ですね、デザイナーっていうのは。絵も通さなきゃいけないし、導いてやらなきゃいけないから、心理的な技術も要求されますよね」
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機能的なパッケージもあれば、アメリカン・コミックタッチのイラストが入った、話題性の強さが際立っているデザインもある。
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伊藤 「味の開発と同時進行なので、一緒に出来上がっていく場合が多いですが、買ってよ！ 的なメッセージのものもあります。連動していなくてもかまわない。
文字だけだから格好良いなっていうのもありましたし、イラストを入れて受け入れられるマーケットでもありませんでしたから。ましてや英語なんてとんでもない、とかね。味は良いけどパッケージがまずい、と逆に評価を落とされてしまうこともあり得ました。
新商品の『マブ』は、文字だけ。既製品の白いカップに、蓋部分だけ彫りを深くしてもらって“男”と入っています」
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ロッキー 「スーパーの売り場で、勝手に試作を並べて写真を撮ってみたんです。そしたら白だけっていうのが意外に目立つことがわかりまして。全体が白くて何か忘れてるくらいのほうが、イメージに合う感じだったんです。
実際には豆腐って白くなくて、ちょっと大豆の色が残った感じなんですよね。その中にあると同じ白でも非常に映えるんですよ」
伊藤 「今は作っていないんですが、底が球体になっている豆腐があって、売り場で並べられない、重ねられない、転がるっていうんで、しょうがないから、ウレタンを丸めてワッカにした座布団をはかせて納品したこともありました。最後には容器の底を切りましたけど……。
でも最近は、そういう苦情もほとんどありませんね」
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新しい商品にむけて、まだ見ぬ若いデザイナーの才能にも期待している。
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伊藤 「まだ世に出てない原石みたいなヤツと仕事ができれば良いな、って思いますよ。直接俺みたいな人間と話すとケンカになりそうなヤツ。でも、ロッキーが間に入ってやっていってくれれば良い（笑）。
絵や作風より、企画なんです。今あるこのマーケットの中に、こういうものをぶち込んだら面白いんじゃないかっていうような、言葉遊びの中での発想なんですよね。技術的にうまくて良い味があって、というよりは、言葉だけとか形だけでどれだけガツンとくるかっていう部分も大事。そこにアイデアをもっている人がいれば良いなあと思っています。今の男前豆腐店にはないものを自分が入ったらできる、という気概のある人がほしいな、とは思いますね」
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現在、男前豆腐店としての直営店は、郊外型SC（ショッピングセンター）の元祖であり、高感度な顧客層とテナント群を誇る二子玉川高島屋のみ。スーパーマーケットで勝負している豆腐にとって、全く異質な世界で売ることに意外性があり、刺激的だったのだという。高級な場所と男前豆腐店とのギャップが、演出のひとつだ。
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伊藤 「二子玉川高島屋は、ちょうど“ジョニー”を作っているときに、雑誌『Hanako』で特集をやっていたのを見たんです。僕は当時千葉寄りに住んでいましたから、そっちまで行かないんですよ。で、ちょっと見に行ってみたらとんでもなくセレブな世界が展開されているのにびっくりしまして。こんな街に豆腐店出したら面白いだろうなって思ったんですよね。望んでもなかなか出店できる場所じゃないですから、担当者も魔が差したのかもしれないですよね（笑）。最初、2週間だけ催時で販売してみたところ、売り上げが半端でなく良かったんで、正式に出店できることになったんです。
現在は、店頭には男前豆腐店の商品しかないってことと、むやみに入れる（笑）ってことを徹底してます。行けば全種類があるよという品揃えにはなっています」
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