2003年4月からNHK教育テレビで放送が開始された「にほんごであそぼ」は、日本語の豊かな表現に親しみながら感性を育むための、就学前の子どもたちとその親をターゲットとした10分間の番組。古典芸能や近代詩を中心としたプログラムが、教育番組への固定概念を覆す斬新なアイデアとビジュアルで演出され、クリエイティブ業界でも話題となった。2004年には「ドレミノテレビ」とともにテレビ番組としては初めて、Gマーク大賞を受賞。現在も内容を少しずつ変えながら継続中だ。
既存の枠にとらわれない発想の原点や制作背景にあるものは何か?
プロデューサー、クリエイター、出演者、それぞれの視点から語っていただくことでその一端をひも解いてみたい。
ご意見、ご感想も絶賛募集中です。



「言葉力のある日本語」を伝えていく
チーフプロデューサー 坂上浩子氏


子ども達のためにテレビができることは何か。
継続的に行っていたリサーチから、「にほんごであそぼ」の企画は生まれた。


坂上浩子氏
坂上浩子氏

「幼稚園の先生など、子どもを対象にしている職業の方や文化芸術分野の方などにヒアリングしていました。その頃、文科省の諮問機関が『幼児の頃から育てた方が良い感性として、“言語能力”と“数学的センス”と“国際感覚”、この3つがある』と発表しました。
実は当時、言語感覚を養う子ども向け番組はなかったんですよね。ちょうど、佐藤卓さんにも参加していただいたブレーンストーミングで、なんとなく言葉の番組をやりたい、という話は出たりしたんですが、まだ具体的にはなっていませんでした。
同じ頃、2001年の冬に齋藤孝さんの『声に出して読みたい日本語』が出版されたんですね。言葉にはこんなに素晴らしい世界があったのに、今まで忘れていたんじゃないか? と気付かされまして…。こんなに美しい、連綿と受け継がれてきた日本語を今の子どもたちに伝えるならば、どういう言葉がふさわしく、どうやって伝えたら良いのかというところに焦点を当て、齋藤孝さんに、『一緒に番組を作りましょう』とお願いしました」


が、幼児に向けた良い言葉の体系がすでに存在していた訳ではない。ゼロから構築していかなければならなかった。


「無手勝流ですけれども、『言葉力のある日本語』と名付けているのが、たとえば『枕草子』の言葉や中原中也の近代詩。普通の言葉としてあまり使わなくなったり、思い起こさなくなってしまったけれども、良い日本語、力のある日本語です。文化や芸術を高めるだけじゃなく、コミュニケーションのひとつ、口伝のように伝わっていて魅力がある。これからも受け継いでいきたい日本語です。
古今東西から集めてきた、遊び言葉や名文名句などをまな板の上に乗せましょう、と。齋藤さんとはそのように方向性を決めたのですが、そこからが本格的な問題の始まりでした(笑)。

生まれる前から胎内で日本語を聞いている子どもがほとんどですから、目新しいテーマではありません。どうやったら『素敵だ』『格好いい』『おもしろい』と思われ、さらにその先の『言ってみたい』『書いてみたい』、と子どもの心にひっかかり、身になっていくか、という作り方を探るのに、準備期間として2003年の放送開始までに1年間かけたんです。
2002年の春くらいから齋藤さんと話し合いをはじめたときに、佐藤卓さんとは何かの番組を一緒に作ってみたいとは考えていました。時代の流れの中で人にインパクトを与えたり、はっとさせたりするデザインで商品のもつメッセージを伝えていた、これまでの佐藤さんの仕事に注目していましたので、番組にもそうした佐藤さんのデザインエキス、センスや匂いみたいなものを入れて、できれば一緒に作り上げていただきたかったんです」



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「interview 2 / 感覚的に気持ち良いかどうか、という点に気を配ります」




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