1998年1月に雑誌掲載広告としてスタートした「大人たばこ養成講座」。さまざまなシチュエーションを通して、たばこを吸う際の“お作法”をおもしろおかしく紹介したシリーズだ。この広告が生まれ、長期継続してきた背景にはどのようなプロジェクトチームが存在したのか? そして、クリエイターはどんなポジションで力を発揮してきたのか? 当時から現在を振り返りつつ語っていただきながら、それぞれの役割りに迫ってみたい。
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企画立案から実施、継続への道のり

クライアントであるJTが、企画の中心に置いた「大人」というキーワードから、このプロジェクトは始まった。

JT野本啓之氏
JT野本啓之氏

JT野本啓之氏(以下N) 「企画開始は1997年頃でした。世の中でたばこが悪者にされてきたひとつのキーとして考えられたのが、“大人が大人でなくなってきた”ということ。いまの若い世代に、大人ってこういうもんだということをたばこ会社としてきちんと伝えるにはどうしたらいいのか、と漠然とした課題がありました。立ち上げ当初は、いくつかある複合的な施策のひとつとして始まった広告でしたが、順調に継続し、現在まで続いてきました。
反応は最初から概ね好評でした。こんなくだらないことをJTがやっている! という驚きと共に、企業イメージとギャップがありつつも、内容的にはしっかりしていましたから注目度は高かったんだと思います。
その後、ちょうど2年くらい経ったときにリニューアルし、第2期としてクリエイターを刷新することになりました。イラストレーターとコピーライターを変えたのが、2000年の春に打った「結婚式のお作法」からですね」

岡本欣也氏
岡本欣也氏

岡本欣也氏(以下O) 「僕が加わったのは、正確にはリニューアル後3作目からですね」

N 「前任のコピーライターが辞めることになったときに、『この仕事を任せられるのはコイツしかいませんから』と推薦いただいたのが岡本さんだったんです。
イラストレーターの寄藤さんは3人いた候補の中から絵だけを見て選びました。何かおもしろさが突き抜けている感じを採用したいと思っていて、寄藤さんの作品は東京都の犯罪統計のイラスト、学園祭のパンフレットなどを見ましたが、色がものすごくポップで、いい意味で期待を裏切られる強さが印象的だったのを覚えています」

広告宣伝にはつきものである好感度調査や認知度調査でも、圧倒的に高い評価を得るのに時間はかからなかったという。

N 「最初は基本的に雑誌オンリーだったんですが、なんでこんなに? と思うほど認知度が高かったんですよ。若い人から40代50代、たばこ吸う吸わないを問わず男女問わず好感度もいい。これまでのJTにはなかった、若い世代を中心に幅広く支持される施策になったなと実感しています。
大人とはこういうものだ、と大上段から言うことも大切だと思いますが、どちらかというと、JTが語りかけているような感じの広告を目指しました。お役所みたいで堅い会社だと思われていた印象から、こういうこともやるんだね、とソフトな印象をもってもらえるような。
この広告を目にしたことで、こんな風に振舞えるなら、少しは吸ってもいいかという流れが生まれる期待をもてるようになった気がします」

しかしその評価にあぐらをかかず、常に新鮮さと話題性を打ち出してきた。

N 「プレゼントキャンペーンをやってみようかとか、夕刊版をだしたり、JTのイベントがあるときにはそのテーマでお作法を作ってイベント会場でアプローチしてみたり、採用活動の表現に使ったり‥‥‥中身だけじゃなくて、常に違ったアプローチを試みています。
大人たばこは毎年なにか新しいことに注目して、その方向を向いて進んでいきたいよね、とプロジェクトメンバーでも話し合っています。その流れとして、あたらしい雑誌を出してみたりとか、イベントで何かやってみたりとか、なんとなくみんなで考えて、実行している。それが成功してきた秘訣のひとつ、かもしれませんね」

N 「こういったプロジェクトは始まってしまうと1年2年は勢いで進むものですが、ネタが切れるんじゃないか、飽きられるんじゃないか、ということはいつも気になっています。企業の広告施策なので、1年ごとに代理店と話し合いながら計画を立てるんですけれども、そろそろ表現を変える時期なのだろうか、と感じさせられたことはありません。消費者調査など、判断材料の基準があっても、データ上では落ち込んだこともないですし。クリエイターのふたりも今のところ大丈夫ですよね?」

寄藤文平氏 岡本欣也氏
寄藤文平氏 岡本欣也氏

O 「野本さんもそういった検証をていねいにしてくれるし、僕らも考えたりするんだけども、なんとなく直感的に、こういう長年やるタイプの広告っていうのは、そんなに生き急いではいけないというか、作り手が飽きて変えてしまっては、結果的によくないから、『もしかしたら変えたほうがいいのかもしれない』っていうときには変えないほうがいいんですよ。
中身自体のテイストは少しずつ無意識のうちにも変わっていくんだけど、フォーマットとしては変えないほうがいいと僕は思う」

寄藤文平氏(以下Y) 「振り返ってみると結構変わってるんだよね。初期から比べると」

O 「たしかに、リニューアル前の第一期はかなりベーシックというか、ある意味広告的な生真面目さをもっていたけど、そこからちょっと人格を変えようかなと意識したことはありますね。
絵はまた寄藤さんの方向性があると思うけど、ちょっといやらしく、スケベにしたいなと思ったんですよ。エロを入れたい、というのがピンときたんです(笑)。でも突然入れても受け入れてもらえないので、少しずつまぎれこませながら、みんながその気持ちになってくれるように考えながら変えてきたというのは言えますね。



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「interview 2 / アイデアを編集するような役割りの、コピーライター」




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