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■ モノづくりの舞台裏
2003年9月、阿部さんと出会い1年が経過していた。その間、活動につていの情報を数多く提供して頂いた。そして、メゾン&オブジェの会期中、阿部さんはあえて見本市会場にブースを設けず、パリ市内のFR66で個展を開き、新作を発表した。バイヤーの評価を仰ぐ以前に、最終的にこのデザインを届けるべき人々の実直な評価を仰ぎたい、という目的であった。FR66は、パリにおけるBLOCK(阿部さんがデザインしたモデュラーソファー)の独占販売権を所有しており、阿部さんのZIGZAGやCOOLという名のクッション、照明GENESIも販売しているショップである。この時期、阿部さんは、多数のプロジェクトを手掛けながら、展示会準備のため、ミラノ−パリ間を往復していた。デザイナーとして、自分の手で創出した製品を責任持って育て、世に送り出して行くために、面倒なステップも一つずつ紡いでいく姿勢には幾度も感心した。
Interview :
FR66 ショップオーナー
Corinne et Maryline BRUSTOLIN(ブルストラン)姉妹
FR66は、ポンピドーセンター至近に位置した絶好のロケーションを誇る、家具エディターであり、家具の販売と同時に内装材の展示販売、施工会社の紹介までもすることから、新しい市場を展開している。
今回は、広報を担当されるMaryline(マリリン)さんにインタビューした。
筆者 : Masayo AVEとの出会いはいつですか? どんな印象を持たれましたか?
マリリン : 2000年のサンテティエンヌ・ビエンナーレです。FR66のショップをオープンするための準備でリサーチをしていた時期でした。Masayoが展示していたBLOCKという画期的な黒いモデュラーソファーに一目惚れし、絶対にショップの商品にしようと決めましたが、本人に出会うのはそれから後のことです。
筆者 : FR66は、パリにおけるBLOCKの独占販売権の契約を結ばれていますが、どのような点が商品の魅力だと思われますか?
マリリン : BLOCKには工業デザインのプロセスから、商品化、機能、消費者がいかに所有するかという一貫した流れが聡明に表現されています。FR66は、建築エレメントとしての家具を扱うショップですので、欠かせない商品です。
筆者 : 造形が持つデザインの美は、売り上げの数字と関連すると思いますが、BLOCKを販売されてからの消費者(特にフランス人)の反応はいかがですか?
マリリン : BLOCKは、我々が取り扱っている商品の中でも、来店した方々が必ず興味を持つ1点です。私たちがそうであったように、彼女の名前を知らない人々にも、触りたい、座ってみたいと訴えるものがあります。それが、即、その場で売り上げに比例、反映するわけではありませんが、そのような商品、時間が経っても古くならない商品を1つでも持てることは、店として非常に大きな強みになることです。BLOCKは、高度なテクノロジーをあらゆる側面から駆使しておりますが、エリート的な感覚を持ち合わせないので、日常生活の主となる家具です。
筆者 : 9月のメゾン&オブジェの会期中、FR66で開催されたMasayo AVEの展示会は好評でしたが、どのような反響がありましたか? 近い将来、Masayo AVEとプロジェクト展開をされるご予定はありますか? もしくは、どのような商品を展開されていきたいですか?
マリリン : Masayoの展示会は以前から企画しようと思っていました。9月のメゾン&オブジェの会期中、1週間と短期間ではありましたが、その際に発表したブックエンド機能を持ち合わせた照明器具White Nightは、ショーウィンドーに会期後も展示したこともあり、好評でした。COLORATURAも、人目を惹きますし、Masayoの商品はどれも明白なコミュニケーション能力を備えています。誰にでも理解されるエヴィデンス(証拠)があるのです。
我々は、独占販売という概念、もしくはそのような商品展開にこだわりません。小企業であることから止むを得ない場合もありますが、今後は、もっと自由な経営を考えています。
Masayoと更なるプロジェクトの話は考えています。
筆者 : 一言でMasayo AVEを表現する言葉は?
マリリン : 言葉以上のコミュニケーション能力があることです。
※2003年11月、FR66のショップにてにてインタビュー
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【 12 】 2003年9月、FR66で開催されたMasayo Ave の個展。会場風景
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中央の黒い直方体がBLOCK
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光っているのが照明器具White Night
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