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12カ月のパリ
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 12カ月のパリ
 


第6回
DESIGN ALGERIEN
(アルジェリア デザイン展)

 update 2003.03.12
レポート : 浦田 薫 / アート&デザインジャーナリスト 



Samir Hamiane
(サミール・ハマイン) 作
クスクス用食器


khaled Sadi
(カレド・サディ) 作
レース模様を陶器にあつらえたテーブルセット


“Lebnine”
mohammed Fayçal Guenni
(モハメッド・ファイシャル・ゲニ) 作
コンテンポラリーなテーブルセット


容器の中にスパイスを入れた様子 © Kaoru URATA


“d'une rive à l'autre”
Abdelaziz Bacha作
(アブデラジズ・バシャ) 作
入れ子式機能のテーブルセット


展示風景 © Kaoru URATA


Amel Cherif
(アメル・シェリフ) 作
コンソール



2003年は、フランスにおけるアルジェリア年である。

フランスとアルジェリアの関係は、近年でも移民問題など多くの政治・社会的な課題が残されている。3月上旬には、アルジェリア独立後、初の仏大統領の公式訪問もあり、国交を深める大事な一歩として両国から厚く見守られている。新聞紙面でも多くのレポートが掲載されている。その情報によれば、首都アルジェには貧富の差が実存するものの、一時期に比べ、治安もよくなり、道行く人々の表情も明るくなっているそうである。サイバーカフェやクラブなどの娯楽施設が増えていることもその証であろう。

VIA(フランス家具振興協会)で、2003年1月9日〜2月23日まで開催されたアルジェリア デザイン展は、新しいジェネレーションのパワーを披露した。
28名のデザイナーのうち半数が女性であることも明記しておきたい。
アルジェリア人デザイナーを何名知っているだろう。さすがに、思いあたらず調べてみた。
1980年に、パリ国際家具見本市で銀賞を受賞したAbdelkadar Abdi(アブデルカダール アブディ)を先駆者に、Cherif(シャリフ)、Yamo(ヤモ)、そして若干30歳でパリ国際家具見本市近代家具部門のグランプリを受賞したChafik(シャフィック)が活躍中である。
その後のプロとしての歩みは様々であるが、シャフィックは早々にフランスに渡り、仏コスメティック会社セフォラのアートディレクターに就任した。ビジュアルイメージに斬新的な改革をおこしたのもこの方である。シェリフは、ボクサーからデザイナーに転身した異例のキャリアを築く。80年代にデザインした商品が注目を浴びてからは、別の角度から知識を広げるために、アルヴァー・アアルトの建築を研究したのである。さすが、スポーツ選手のパンチと機敏な判断力が表れているようだ。又、ヤモは、90年代に都市に関するデザインプロジェクトを多数手掛け、ポンピドゥーセンターにおける展示会、大阪市の公共広場のプロジェクト“照明と彫刻”にも参加した。現在ではチュニスに在住する。一例だけで要約はできないが、彼らの歩みをみていると自国に囚われない自由さと柔軟な姿勢が感じられる。

VIA周辺は、昔の鉄道高架下を再開発しているので、改装された空間を所有する多くの職人のアトリエがある。ガラス扉を入ると、タフタ素材の淡いグレーのベールで仕切られた空間が現れる。コショウの赤い実や香料を敷き詰めた高台の上に展示されている椅子や、ローテーブルにエキゾチスムを添える。

女性陣デザイナーが多かったせいもあるのだろう。アルジェリアを代表する料理クスクスやタジン用の食器デザインが目立つ。不思議なもので、器は料理が盛られて完成するものである。だから、待機状態のように置かれた陶器や土器には、装飾的な効果が施されているのだろう。モハメッド・ファイシャル・ゲニの作品を見て思う。サミール・ハマイン、カレド・サディの作品にも共通していえることだが、入れ子式を機能と融合させている。待機状態の時には、トーテムのようにオブジェとして。食器として利用する時にはトーテムが解体されて機能的な用途を持つ。アルジェリアには今日でも、家内工業の小さな工場が存在し、特に陶磁器においては、伝統的な技術が健在である。

生まれ育った環境を根こそぎすることは不可能に近い。だから、知らず知らずのうちに、敢えて意識をしなくても、結果としての造形に環境に影響を受けた要素が表現されてくるのだろう。しかし、本展覧会の主旨はあくまでもコンテンポラリーな側面を見せる意図であるので、こうしたコメントは主催者には好まれないかもしれない。
仏新聞の紙面でも取り上げられた本展覧会である。スークの延長線上でもある民族芸術作品が展示されるのではなかろうかという警戒心も一面にはあったが、空間演出と監修を務めたアブデルカダール アブディの強い意志が伝わり、新しいアルジェリア デザインのジェネレーションを全面的に見せることに成功したといえよう。
MIDAもミントティーをのせる金盆のプロポーションが変わり、ローテーブルに変身。 その片方では、アクリル素材を重ね合せたコンソールには、押し花を挟み込んだモチーフなどの伝統的なコンセプトを新素材にあてはめている。同じ素材で、ローテーブルも展示されていた。表のつるつるとした感触に素材感を出すために、裏面にプリーツ地を真似ている。素材を布か紙のように捉えたコンセプトが面白い。

1月のサロン・ド・ムーブルでもアルジェリア美術大学の生徒作品を紹介していたが、まだ、未知の可能性を秘めたデザイン界の新鋭たちの誕生も興味深い。実際に、デザイン課が大学の課目に考慮されたのも80年代と極めて歴史の浅いアルジェリアである。デザイン界へのニューカマーとして、賑やかな活躍を期待する。そして、デザインが、国の復興や近代化につながる原動力として回転していく日もそう遠くはないだろう。


今回は、2月26日からポンピドゥーセンターで開催されているSTARCK展を紹介しようと思っていたが、メディアも一斉にSTARCKに集中している中、本レポートでは逆に会期が2月末で終了したアルジェリア デザイン展をあえて取り上げた。
来月には、ご期待に応えられるよう、STARCKの世界をお届けしたいと思う。


※明記されていない画像は、VIA提供による





“Mida”
Feriel Guasmi
(フェリエル・ガスミ) 作
ローテーブル


Abd el Drias
(アブドゥ・エル・ドリアス) 作
ローテーブル


“Fat 2”
Fatima Krim
(ファティマ・クリム) 作
スタッキング スツール


“Le regard”
家族の写真で仕切る屏風


“ma p'tite dame”
Souad Delmi Bouras
(スアドゥ・デルミ・ブラス) 作
コート掛け


Chafika Al-Oubhia
(シャフィカ・アル・ウビア) 作
籐の照明器具


Hamid Rouache
(ハミドゥ・ルアシュ) 作
籐のラウンジチェア




Djinane Benlabed
(ジナンヌ・ベンラベドゥ) 作
エスニックチェアは、楽器にも似ている

“made in japan”
Imaad Rahmouni
(イマード・ラムニ) 作
何を根拠に日本製と呼ぶのか?

VIA展示会場 © Kaoru URATA

アルジェリア美術大学
1月のサロン・ド・ムーブル アルジェリア美術大学ブース風景 © Kaoru URATA



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