お米や

古さと新しさを生かしたおにぎり屋さん

デザインコンセプト
担当:スキーマ建築計画

戸越銀座から戸越公園駅に向けて分岐された300メートルほどの小さな商店街がある。かつては小さな個人商店が軒を連ね賑わっていた商店街だが今ではだいぶ衰退し、多くの商店がシャッター化されている。このまま放置すればどんどんそのシャッターは増え、いずれ、商店街は消滅する。その商店街に再び火を灯すべく活動するチームがある。そのチームとは同商店街にすでに自家焙煎コーヒー店であるMR.COFFEEとそこからほど近いカフェPEDERA BRANCAの経営者でもある株式会社OWANである。

そのOWANが2014年に閉店した自宅兼八百屋の八百屋部分を再利用し「お米や」を開店させることになり、店舗デザインを任された。スタイルはお店の奥が自宅となる典型的なタイプで、面積も例に漏れず狭くて5坪ほどしかない。わずか5坪ゆえ、さほど商品を多く置けるわけでもなく売り上げ自体もさほど多くは期待できない。でも、「そこまではいらない。適度でいいので、その代わり人を雇ったりしないで小さく経営したい」という人も必ずいる。そんなニーズに応えるプランを計画した。

その時に切っても切れないのが商店街の商店同士の目線である。その目線があるがゆえに、少しその場を離れてもなんとか近隣が見ていてくれる安心がこの個人商店の生命線を支える。その「少し」が個人で営業するには大事でこの商店はこの商店街によって支えられ、同時にこの商店街をこの商店が支えるという相互の関係をつくりながら、この1店舗のあるべき姿を考えた。

当然デザインとしてはローコストかつシンプルな内装を計画した。また、古い建物で随分とくたびれた建物だが、お店の中だけが生き返るのではなく、建物自体も生き返らせたいと考えた。そのため、柱などの既存部をあらわしにし、さらに研磨を行い、新規に入れたラワンベニヤに造作と色の調子を合わせること、何が古く、何が新しいのかが一見わからない全体的にリフレッシュされた空間が生まれた。1店舗の見えがかりは派手ではないが同商店街に数店舗同様なお店ができることで、他所から来た人に「この街に何かありそう!」という期待感を生み出したいと考えている。

所在地 東京都品川区戸越4-8-6
設計 長坂 常/スキーマ建築計画
担当 會田 倫久
主用途 米屋
施工 todo
面積 16.49m2
構造 木造
竣工 2014年12月
撮影 長谷川 健太