Mishima House

狭小地に建つ開放的な空間

デザインコンセプト
担当:芦沢啓治・山口千乃/芦沢啓治建築設計事務所

東京の都心にありながら下町風情を残す狭小地において、3人家族のための小さな家である。狭小地といっても、東京の下町のエリアにおいてはごく普通の区画ではあるが、そうしたエリアにおいてプライバシーをとりつつも如何に開放的に住まうかということが一つのテーマであった。

近隣住居からの視線、光の入り方から結論として1階と2階はプライバシーが必要なコンパクト機能を収め、3階と4階に大きなパブリック空間、リビング、キッチンをとることになった。その意味においては、1階と2階は上階のための基壇ではあるが、コンパクト階段とハイサイドライトによって光と風を下階へと送り込んでいる。3階の南側には大きな開口をとり、最低限の防御として4m先にある住居群からのプライバシーを確保するためにルーバーの手すり、曇りガラスを配した。そして夏場の日射遮蔽のために水平ルーバーをつけている。よって視線のコントロールのみならず、柔らかい光が冬は大きく夏はコントロールされてリビングへ注ぎこむように計画している。

予算の中で最大限の空間を獲得するために内部空間は生々しい鉄骨による空間となっているが、細かくディテールをコントロールし、家具や手すり、照明デザインまで、なめらかにつなげている。大きなディテールから、そういった小さなディテールまで全体との調和を考え丁寧にデザインすることを心がけた。結果として空間から荒々しさが消え、不純物のない心地よさや、様々な悪趣味でさえ許容する器を作ることができたのではないかと自負している。

所在地 東京都文京区
設計 芦沢啓治建築設計事務所
設計企画 芦沢啓治/山口千乃
構造設計 ASA 鈴木啓
施工 スリーエフ
撮影 Daici Ano