会期直前、主要メンバーに意気込みを聞く!シチズン時計が田根剛氏と挑む2回目のミラノ

会期直前、主要メンバーに意気込みを聞く!シチズン時計が田根剛氏と挑む2回目のミラノ

2014年のミラノデザインウィークにて「Light is Time」というテーマで、インハウスのデザインチームと建築家・田根剛氏(DGT.)によるインスタレーションを行い、複数のアワードを受賞したシチズン時計。その後、スパイラルの凱旋展では7万人を動員する記録を打ち立て、東京でも大きな話題を呼んだ。その2回目が今年のミラノで実施される。今回のテーマは「time is TIME」。「時間」という目に見えないものを、どのように可視化、体感させてくれるのか期待が高まる。

会期直前の3月末、シチズン時計デザイン部の小松淳氏と岡村直明氏、田根剛氏にお集まりいただいた。また、演出を手掛けるLUFTZUG遠藤豊氏にはミラノの設営現場からネット経由で参加いただきインタビューを行った。

「time is TIME」は時間実験の空間になるという。前回、圧倒的な空間を構成した腕時計の「地板」。今回もそれを使うのだが、その数はおよそ12万個と約1.5倍になる。そして前回の空間は内部と外部という関係だったが、今回は内部空間が二つあり、来場者はそこで全く異なる体験をすることができる。

2014年に絶賛された「LIGHT is TIME」の様子

2014年に絶賛された「LIGHT is TIME」の様子

「一回目にとても良いものを作ることができたと思っています」と田根氏。今回はどのようにして、それを超えていこうというのか。

「前回は宇宙の始まりのような表現でした。今回は時間が持つ未知なる崇高な世界を持ち込みたいと思います。前回が過去だとすると、今回は未来が加わったとも言えるでしょう。内部空間が二つあることで、ある来場者が隣の空間を感じると同時に、来場者自身が空間の構成要素にもなり第三者に鑑賞される、という相互作用が生まれます。そしてそれら内部空間を外から観察することもできます。同じ時間に並行して発生する様々なドラマを一望するような、そんな体験ができると思います。美術館と演劇が一緒になったような感じでしょうか」(田根氏)

「僕たちは舞台をやっているので、ステージと客席の関係、どうやってそれらの一体感を作るか、といったことが考え方の基本にあるのかも知れませんね。今回は制御された音楽環境だけでなく、そこにサウンド・アーティストのevalaさんに入っていただき、音響演出の面でもシステムとオーガニックの二面性を表現します」(遠藤氏)

今回使われる銀色の地板

今回使われる銀色の地板

そうした空間の中で「たとえば、世界の全人口73億人が経験する一秒をすべて重ね合わせてみたらと仮定する”人類時計”、感情の移り変わりを表現する時計といった12の新しい時計を展示します」と岡村氏。前回の展示ではルーペで細密な歯車を鑑賞したことが印象的だったが、今回も見応えがありそうだ。

「スイスの伝統とは異なる個性を持つマニュファクチュールとして、攻めるシチズン、という意気込みでいます。時計ではなくて、時間をここまで深く考えたのは初めてかもしれませんね」と小松氏。時計のデザインについてはベテラン揃いのデザイン部だが、意外にも「時」という概念をデザインしようという取り組みは珍しいのだそうだ。

左から、ミラノの設営会場からネット経由で参加した遠藤氏と岡村氏、小松氏、田根氏

左から、ミラノの設営会場からネット経由で参加した遠藤氏と岡村氏、小松氏、田根氏

前回以上に多層な意味を内包するのであろう今回の展示。ゾーニング、光や音の演出、観察者であり観察もされる対象となる来場者、空間で表現される時間とオブジェで表現される時間。思い出したのは映画「インターステラー」で表現された五次元の世界だ。

「世界が注目するミラノという場で、家具ではないことで注目を得ようとしています。感情や身体性に訴える空間に仕上げたいと考えています。現場入りが今から楽しみです」と田根氏。大いに期待したいところだ。
(山崎泰)