私たちの暮らしを支える“土木”にスポットをあてる「土木展」。縁の下の力持ちを知る展覧会

私たちの暮らしを支える“土木”にスポットをあてる「土木展」。縁の下の力持ちを知る展覧会

“土木”と聞いて、思い浮かべるものは何ですか?

多くの方が、人里離れた山や川につくられた橋やダム、トンネルを思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、道路や鉄道の交通網、携帯電話やインターネットなどの通信技術、上下水道など、私たちの身近なところでも土木技術は活用されています。

六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「土木展」は、そんな私たちの暮らしを支える縁の下の力持ち、“見えない土木”を少し身近なものとして感じるきっかけとなる展覧会です。

01

展覧会会場写真(Photo:木奥恵三)

展覧会ディレクターをつとめたのは、全国の駅舎や橋梁の設計、景観やまちづくりなどのデザインを手がける西村浩さん。展覧会チームは、土木のエキスパートやデザイナー、アーティストで構成され、土木を楽しくビジュアライズ化することで、私たちにわかりやすく伝えてくれます。

展覧会ディレクターの西村浩さん

展覧会ディレクターの西村浩さん

DSC02215

展覧会グラフィックは、柿木原政広さんが担当。踏切などにもよく使われている黄色と黒を使い、思わず人が注視してしまうようなものを目指したそう

本展は、ただ「鑑賞する」というよりは、参加して楽しめるようなものが多かったことが印象的でした。以下、土木展への魅力をより感じてもらえるような、興味を惹かれた作品を紹介します。

「渋谷駅解体」田中智之

渋谷駅解体(田中智之):建築家の田中智之さんが手がけた鳥瞰図は、渋谷・新宿・東京の3駅の構造を描いたもの。1日に数百万人をさばく各駅が、どういうメカニズムでできているかを見ることができます

05

土木オーケストラ(ドローイングアンドマニュアル):日本の高度経済成長期を支えた土木の工事現場の記録映像と、現代の渋谷再開発の現場音をコラージュしたものを合わせた映像作品。ちなみに音楽はボレロ風(Photo:木奥恵三)

DSC02133

ダイダラの砂箱(桐山孝司、桒原寿行):砂に等高線の映像を投影しており、砂を深く掘ったりすると水が貯まる様子を体験できます。自分がまるで“ダイダラボッチ”になったような気分になれる作品

土木を愛する

以下の2作品は、「土木を愛する」というテーマのもと、雑誌や漫画、食などあらゆる角度から土木を愛で、もっと土木を楽しむヒントが詰まったセクションです。

DSC02169

現場で働く人たち(株式会社 感電社+菊池茂夫):土木建築系総合カルチャーマガジン 『BLUE’S MAGAZINE』を発行する感電社。その中から選りすぐった“現場”を肌で感じられるような写真を展示。撮影は、ライブ写真家の菊池茂夫さん

DSC02181

ダムとカレーと私(出演:宮島咲/映像:ドローイングアンドマニュアル/制作協力:柿木原政広):「ライス=ダム」「カレールー=貯水」に見立てて作ったカレーライスの食品サンプルをバリエーション豊かに展示。さまざまなタイプのダムがカレーライスに見立てられており、写真のものは「みなかみダムカレー重力式」

土木の行為

以下の2作品は、土木に結び付く行為をテーマに、参加作家がさまざまな形で表現したもの。来場者は作品を通して土木の行為を体感できます。

つむ/ライト・アーチ・ボリューム(403architecture [dajiba]、Photo:木奥恵三):空気で膨らませたビニールのピースを積み上げることで、橋をつくる体験型の作品

つむ/ライト・アーチ・ボリューム(403architecture [dajiba]):空気で膨らませたビニールのピースを積み上げることで、橋をつくる体験型の作品

10

ためる(ヤックル株式会社、Photo:木奥恵三):水が流れているところに立ち止まると、自分がダムとなり、水をせきとめる様子を体感できる作品

ほかにも、1Fのショップでは、いかにも「土木展」にふさわしいグッズがたくさん並んでいます。

DSC02204

カラフルなヘルメットや道路標識ステッカー、テトラポットのぬいぐるみなど、土木ファンにはたまらない(?)グッズたち

DSC02208

展覧会オリジナルグッズは、クリアファイルやタオル、ステッカーやTシャツなど

展覧会ディレクターの西村さんは、「この土木展が、みなさん自身と土木という存在の距離を縮め、改めて“自分ごと”として見つめ直すきっかけとなることを期待しています」と、話しました。いままで意識して触れることがなかった「土木」ですが、作品に直接触れることで自分たちの世界と密接な存在であることを自覚できます。作品は体験できるものも多いので、この夏、家族や友達とわいわい観に行ってはいかがでしょうか?

■土木展
会場:21_21 DESIGN SIGHT
会期:2016年6月24日(金)~9月25日(日)
時間:10:00~19:00(入場は18:30まで)
http://www.2121designsight.jp/