レポート イベント、アートフェス、見本市、新店舗など、編集部目線でレポート
International Furniture Fair Singapore 2015
ASEAN地域最大規模の家具・インテリア製品の国際見本市
2015/04/30
JDN編集部
「ASEAN Funiture Show」、「The Décor Show」、「Hospitality 360°」と同時開催される、ASEAN地域最大規模の家具・インテリア製品の国際見本市「International Furniture Fair Singapore 2015」。39の国と地域から出展者が500近い出展者がシンガポールエキスポに集まった。日本からの出展は、家具というよりはテーブルウェアなどの雑貨が多い印象。JDNで馴染みがあるブランドでは、ブナコ、セラミッックジャパン、鋳心ノ工房、廣田硝子、深山、能作など。今回は、いわゆるブランドの出展者ではなく、この機会にしか見られない展示に焦点を当てて紹介したい。
International Furniture Fair Singapore 2015
会場:シンガポールエキスポ
会期:2015年3月13日~3月16日
■SOCIAL INNOVATION DESIGN from JAPAN (問題解決のためのデザイン)展
「課題先進国」日本から太刀川瑛弼氏(NOSIGNER)を中心に、芦沢啓治氏(石巻工房)、織咲誠氏(or-ita)、長谷川哲士氏(minna)、原田祐馬氏(UMA/design farm)5組が出展。近年、デザインのあり方に変化が生まれつつあることは明白で、ビジュアル表現やモノづくりだけではなく、それらを取り巻く環境やシステムの構築、あるいは行政・医療・福祉などのソーシャルな領域での課題にどう取り組むか「デザイン」の力が問われている。IFFS会場のエントランスにブースを構え、シンガポールでも大きな注目を集めた。
長谷川哲士(minna)/NEWSED
リサイクルではなくアップサイクルを提唱する「NEWSED」。廃材を無理に別のものに置き変えるのではなく、それぞれのストーリー(特徴)を活かしたプロダクトを制作している。例えば、「Re Acryl badge」はショップ什器やアクセサリーなどに使用される、特注の色柄のアクリル板の端材を用いてプロダクトに。特徴のある端材を組み合わせてつくることで1点ものに生まれ変わる。「NEWSED」のディレクションを手がける、minnaの長谷川哲士氏は「最初の接点はアイキャッチでも構わない。購入した後に背景にあるストーリーを知って、大事にしてもらえるようなモノをつくりたい」とコメント。
織咲誠/or-ita
デザインとアートと領域で活躍してきた織咲誠氏による、「self acion」をテーマに掲げたプロジェクト「or-ita(オリタ)」。「or-ita」はダンボールに折り目をつくるためのカッターで、コロコロ転がすだけで簡単に折り曲げることができ、梱包材を適切なサイズに加工したり、作品をつくったりと、単純だけど様々な用途に使うことができる。まだ、クラウドファンディングという言葉が定着していなかった2010年頃から、自身のブログのみで共感出資 (FUN-DO!)を募ったことからスタート。実用的なものから、子どもでも使えるものまで、切れ味の異なる3タイプを用意した。様々な場所でワークショップを行い、教育の場などで少しずつ浸透しはじめている。「どういう展開になるかの予想はつかないが、新しい形での使われ方、撒いた種が芽を出すことを期待している」とのこと。
芹沢啓治/石巻工房
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻の自立復興を促す「地域のものづくりの場」として、2011年に誕生した「石巻工房」。仮設住宅に家具がまったく足りない現状があったが、ただ家具を提供するのではなく、自分たちの手でつくってカスタマイズすることが重要だと考えたそう。デザインの力でDIYの可能性を広げる「DIYメーカー」として、また地元の人々の自立運営する産業としても注目を集めている。現在、海外からデザイナーもスタッフに迎え入れ、幅のあるデザインを展開している。最近ではシンガポールからの発注も増えているそうだ。
太刀川瑛弼(NOSIGNER)
「角材・板材・丸太になるべく手を加えないこと」をレギュレーションにした間伐材ブランド「KINOWA」。例えば、角材を使ったライトは電灯を通せる軸を切るだけというもの。大胆な発想のようにも感じるが2つの意図があるという。林業から間を通さずに流通品をつくれるようにすることと、デザインを限界まで削いでミニマムにすることがエコフレンドリーだからだ。つまり、製品ではなく仕組みをデザインしているといえる。そのほかにも、オープンソースの理念に基づき、一般に流通している製品を用いて構成したオフィス空間「Mozilla Factory Space」の照明なども展示された。空間構成アイデアは「Open Source Furniture」として、すべての図面・制作手順を公開。誰でも安価にオフィスを構築することができる。 なぜ、すべてオープンソースにしたのか訪ねたところ、コンバージョン経路が重要なのではなく、オープンにすることによって新たな関係性が生まれることが狙いだそうだ。
また、SOCIAL INNOVATION DESIGN from JAPANのディレクションを務める、NOSIGNERの太刀川瑛弼氏に同展示について以下のように語ってくれた。「エントランスの目の前の良い場所で展開させてもらえて、IFFS側からの期待値の高さも感じています。今回の出展者の候補はすぐに決まりました。一般的にデザインはかっこよさとか機能性のような話になりがち。いま、デザイナーが目指すべきことは社会とのリレーション(接点)をつくることだと思う。そういった取り組みをしている方たちに協力してもらった。シンガポール政府は人材(タレント)を世界に向けて売っていくことを明確にしている、課題先進国である日本にとっても学ぶべき点は多いし、シンガポールと新しい関係性をつくるのがミッションだと思っています」
■Asian STAR Showcase
次代を担うであろうアジア各国のデザイナーを集めた、このショーケース的なブースの注目度もとても高かった。インドネシア、シンガポール、台湾、マレーシア、香港、韓国、タイ、フィリピン、ベトナムから様々なプロダクトが並んだ。日本からは木村公氏が参加した。
また、「THE SINGAPORE PAVILION」や、シンガポールのデザイナー、プロデューサーのためのプラットホームとして機能している、openstudioによる「NEWFOLK collective」など、現地のデザインのオリジナリティを感じることができた。