レポート イベント、アートフェス、見本市、新店舗など、編集部目線でレポート
その土地らしいデザインの魅力を発信する、
「NIPPONの47人 2015 GRAPHIC DESIGN」
日本中の豊かな個性なグラフィックデザインが一堂に
2015/04/22
JDN編集部
ナガオカケンメイ氏とD&DEPARTMENTの取り組みには、いつもはっとさせられる。「旅」「物産」「地域問題」など様々な切り口で、47都道府県の「地元に根ざしたデザイン」を丁寧に紹介してきた意義は大きい。渋谷ヒカリエのd47 MUSEUM、d47 design travel store、d47食堂の3つが有機的に絡みあって、様々な地域の個性や魅力をわかりやすく提示してきたからだ。
現在、d47 MUSEUMで開催されている「NIPPONの47人 2015 GRAPHIC DESIGN」は、2013年春に開催された「NIPPONの47人 2013 CRAFT」に続く第2弾で、これまでの企画展の積み重ねを経て進化させたものといえる。47都道府県からグラフィックデザイナーを選びだし、彼らのデザインしたパッケージ、装丁、DM、パンフレットなどの作品をとおして、その地域の個性や魅力を発信する展覧会だ。d47 MUSEUMのブログにも書かれていたたように、「"デザイン"を正面から考える企画」だと感じる。
地元企業とグラフィックデザイナーが対話を重ねた、その土地や環境でしか生まれ得ないデザインが一堂に会した。こうした”場”があることで、日本中に「その土地らしいデザイン」があるということを実感させてくれる。これまで、どうしても東京あるいは都市圏偏重だった"デザイン"は、むしろこれからそれぞれの土地で重要度が増していくだろう。
こうして改めて会場を俯瞰して見ると、クオリティやアイデアの面で優れているのはもちろんだが、どの地域のデザインからもクライアントとの密接な信頼関係のようなものが感じられる。そしてこれらを集めてきた、D&DEPARTMENTのリサーチ力は感嘆すべきことだ。ナガオカ氏は年間の半分以上は日本各地をまわり“余所者”目線のアプローチで様々なプロジェクトに関わりながら、各地をリサーチしているという。
開催に先がけて行われた懇親会で出展者に話をうかがったところ、それぞれの地域で抱える課題に真正面から取り組んでいる印象を強く受けた。それは、クライアントと共にブランドや商品を育てようとする“気概”ともいって良いかも知れない。デザインの力で問題解決するという意味では、いま地方ではじまりつつあることにヒントが多いように思う。また、出展者が意外に感じていたのは、過去の作品がいくつも選ばれていたことだ。これについては、D&DEPARTMENTが「ロングライフデザイン」を標榜しているため、長く続いているもの、古びない魅力を持つものを紹介したいという意図が生んだ結果といえる。
これまでは、つくり手と受け手を結びつけることには意識的だったというが、今回の懇親会には35の地域から出展者が参加し、つくり手同士の交流が活発に行われていた。このことは、D&DEPARTMENTにもとっても大きな経験となったようだ。目指すゴールに「日本の観光を若返らす」ことを掲げている、ナガオカケンメイ氏とD&DEPARTMENTの企みともいうべき試みと、各県を代表するグラフィクデザイナーの動向にこれからも注目したい。