インタビュー 編集部が注目するデザイナー・クリエイターのアイデアと実践に迫る

エイトブランディングデザイン西澤明洋氏インタビュー「デザイナーの成長、成功とは?」

エイトブランディングデザイン西澤明洋氏インタビュー「デザイナーの成長、成功とは?」

ブランディングデザイナーとしてどのようにキャリアを形成してきたか

2015/04/15

JDN編集部

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プレミアムクラフトビール「COEDO」、キリンビバレッジ「生茶」、山形の老舗じゅうたんメーカー「山形緞通」、iFデザインアワードでゴールドを受賞した「アーツ前橋」などのブランディングで知られるエイトブランディングデザイン代表の西澤明洋氏。学生時代は建築を専攻しながらも、デザインマネジメントを研究。一方では、「登竜門」を参考にデザインコンペに応募することでプロダクトやグラフィックの実績を作ってきたという。そのユニークなキャリアの積み上げ方、デザインについての思想や仕事に向かう姿勢について聞いた。

スタートは建築

エイトブランディングデザインは、ブランディングのみを専門にしているデザイン会社です。ブランディングという言葉は普及していますが、広告制作会社やデザイン会社が広告やデザインをメインにしながら、ブランディングも手がけていることが多いかもしれません。でも僕らは、ブランディングのみを追求しています。

つまり、一つの企業に入り込んでいって一緒にブランド開発していくようなスタンスです。僕らなりの新しいやり方を啓蒙していきたいですし、実際に、いま世の中に受け入れられつつあります。

エイトブランディングデザイン西澤明洋氏
エイトブランディングデザイン西澤明洋氏

実は僕のキャリアは、建築からスタートしました。京都工芸繊維大学で建築を専攻していたんです。その在学中に偶然、デザイン経営工学科が新設されました。デザインマネジメントを体系的に研究する学科が作られたのは、実は僕の母校が初めてだったんです。僕自身、デザインマネジメントはおもしろそうだと感じ始めていたタイミングだったので、大学院時代はその研究にどっぷり浸かる日々になりました。論文を書いたり、実際にデザインマネジメントしたり、デザイン活動もする、というような。

インハウスデザイナーを目指した理由

建築からスタートしたキャリアでしたので、在学中の作品はほぼ全部、建築。でも就職活動では建築業界ではなく、デザインマネジメントができる企業を探しました。とはいえ、当時からデザインマネジメントに特化した会社も、機能として取り入れている企業も少ない時代でした。

僕はデザインマネジメントの中でもブランディングを専門に研究していました。実社会でブランディングに携われるところとなると、たとえば経営コンサルタント会社になるのかもしれません。だけど、コンサルティングではデザインしないのでちょっと違います。

プレミアムクラフトビール「COEDO」、キリンビバレッジ「生茶」などが整然と並ぶ
プレミアムクラフトビール「COEDO」、キリンビバレッジ「生茶」などが整然と並ぶ

それなら一度、デザインマネジメントを経営の中に取り入れている企業で、インハウスデザイナーとして経験を積むのが良いのではないか、と考えた訳です。それならメーカーだ、と。

ちょうど就職氷河期の底にあたる世代でしたが、縁あって東芝に入社できました。2年間勤め、仕事は充実していましたが、ブランディングはさせてもらえない。当たり前ですよね。インハウスデザイナーがブランディングに関わる立場になれるのは、最低でも10年、あるいは20年くらいの経験がなければその役職に就けません。それなら自分で始めてみよう、と独立したのが2004年です。

独立後は仲間たちとデザイン会社を2年間くらい一緒にやっていました。その後、やっぱりブランディングだけに特化したいと考えて、ひとりでエイトブランディングデザインを立ち上げました。

3つの領域を渡り歩く

僕のスキルは、建築、プロダクト、グラフィック。この3つの領域を渡り歩いているんですけれども、結果的にとても良い効果につながってきたと思います。

エイトブランディングデザイン西澤明洋氏 (2)

ブランディングでは、グラフィックデザインの領域が多いのですが、そうはいってもグラフィックのスキルだけだと足りません。お客様のブランドを作り上げていこうとするとき、ロゴやコミュニケーションツールだけでなく、店舗を構えることになったり、商品を開発することになったりするケースが非常に多いです。僕にとって、建築やプロダクトのスキルはいま、めちゃくちゃ役に立っています。もちろん外部のプロダクトデザイナーや建築家と協業する場合もあれば、僕らだけで完結してやることもあります。

いまのデザイン業界というのは、やっぱり、パソコンとインターネットの登場で大きく変わったと思います。日本のデザイン業界は、縦割りで深掘りされていた時代が長くありましたよね。僕らの世代からがちょうど、学生時代にパソコンを使うことが普通になりはじめた頃。

それまでは、建築だったらドラフターに向かってロットリングで図面をひいて、青焼き出力していたのが、一気にCADに変わりました。グラフィックデザインも、スケッチから始まって手描きのデッサンを積み重ねて表現してきたものが、PhotoshopとIllustratorの登場によって手法そのものが新しくなりました。

だけども、デザインの根本的な考え方をしっかり持っている人間だったら、ツールをうまく使いこなすことでデザインのジャンルを渡り歩くことができると、僕は思っています。

ブランディングデザインとは、そうやってジャンルを統合して作り上げるものだと考えてきました。